復讐
蓮音
第1話 前触れ
我が
俺は幼少の頃から祖父にそう教わってきた。祖父はとても優しく、そして強い人だった。その言葉を胸に、私はこれまでどんな苦境に立たされようとも努力を惜しまず、次期岩祭家の当主としての自覚を保ち続けてきた。中学校を卒業する頃には弟もでき、そこに兄としての自覚も加わった。親からとやかく言われたからとか、世間体を気にしていたからとかそんなものではなく、岩祭家を守りたい、萩島の地を守りたいという純粋な気持ちの表れだった。弟の誕生で我が家には新たな活気が生まれ、笑顔の絶えない日々が続いた。これからもこんな平和な日常がずっと続くものだと信じていた。そんな岩祭家に、暗雲が影を落とし始めていることに俺は気づく余地もなかった。
〇
一か月前、祖父の
享年76歳。心疾患による突然死だった。葬儀はその後、すぐに執り行われた。祖母や母は今朝とはまた違った意味で慌てていた。俺には弟の面倒を見るくらいしかしてやれることが無くて、こんな時に子供はつくづく無力だなと悔しかったのを憶えている。
葬儀には多くの人間が参列したが、豪家とは言え、バブル時代の崩壊も相まって残された財産は限りあるものだったので、資産争いなんてものは起こりようもなかった。問題は飯倉神社の後継者だ。通常であれば、長男である父が神主を引き継ぐ手はずになっていたのだが、祖父の遺言に父・
そんな叔父が、祖母によって
父は地元の商工会や知り合いの弁護士、中には代議士にまで話を持ち掛けて、入念に準備をしていた。最悪の場合、裁判を起こす気だったのだと思う。父の鬼気迫る顔に俺はそらおそろしいものを感じた。その矢先、事件は起きた。
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