第5章 記録に残らなかった日常たち

◆ ばあちゃんの味覚革命

——ごつ盛りに手を伸ばす90歳。


買い物の帰り道、悠斗がふいに笑って言った。


「ばぁちゃんさ、最近カップ焼きそば買うんだよ。

この前なんて “ごつ盛り” に手伸ばしかけたから止めたんだ。

90近くでごつ盛りいくって、どんなチャレンジャーだよ。」


あまりのインパクトに、私は思わず吹き出した。


「たぶんね、ばぁちゃん今までカップ麺ってほとんど食べてこなかったんだよ。

で、最近ふと食べてみたら…

“おいしい!”って目覚めちゃったんじゃない? 手軽だしね。」


すると悠斗が、ぽそっと。


「……味覚、リノベーションしたのかぁ。」


あまりに語感が良すぎて、車の中でしばらく笑いが止まらなかった。




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