口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-
@tunobue_george
序章:始まりは禍と共に
第1話 友達100人できるかな
教室はどこの学校も同じように見えるが、比べてみると案外違いがわかるものだ。天井は前の教室より少し低く感じるし、床はちょっと古い気がする。なにより椅子に座る人が違う。
みんな俺を見てる。頬杖を立てて見てる男子も、隣の友達とコソコソと話す女子も、全員の視線が俺に注がれている。怖い、心細い、それでも喋らなければこの時間は終わらない。息を吸い込んで少ししかない勇気を振り絞り、こう叫んだのだ。
「み、皆さん...!俺と友達になってください!」
ただ、友達になろう と
◇◇
午前8時ごろ、多くの学生がまだ眠たい体を動かしながら学校へとやってくる。やれ今日の1時間目が数学だの今日提出の課題をやったかだのやいのやいのと言いながら校門へと皆足を運んでいるのだが、おそらくこの中で俺、
「おぃーっす!扇おはようさーん!」
「おわっ!あぁ…おはよ」
後ろから不意に肩を組まれながら朝の挨拶を交わす。毎度のごとく後ろから奇襲をかけてくる挨拶にはまだ慣れないなぁ...
朝っぱらからテンション高めなクラスメイトの挨拶を皮切りに他の知り合いとの挨拶が連鎖していく。おんなじクラスの男子5名、同じく女子3名、隣のクラスの奴3名、教師4名、生徒会の先輩2名、あぁまたおんなじのクラスの男子だな。プラス2名。これが教室につくまでに挨拶した数。
……多い!!非常に多いのである!!!
なんというか俺は知り合いや友達がやけに多い。確かにそれなりに愛想は良くふるまっているつもりだし委員会なんかにも関わった事はあるから顔は広いかもしれないのだが、それにしても多い。と言っても皆は迷惑を掛けようと関わってきている訳でもなければ、何かやましい理由があって俺に近づいている訳ではない。それに友人がいないということの辛さを俺は過去に知っている。皆の方から囲んでくれるなら受け入れる以外あり得ないというものだ。
「なぁ今日化学宿題あるっけ?」
「昨日アサちゃん有るって言ってた」
「ねぇ琴ノ葉君昨日のドッキリの奴みた?」
「あー見たよ。あの廊下で押しつぶされた奴面白かった」
「おい今週のジャンプなんだけどさ…」
「俺紙派だからまだ見てない!」
廊下で先ほどの有様だと教室は御覧の通り大混雑だ。さっき挨拶した数人を含めたクラスメイトが俺の机の周りに集まり会話をしている。しかもグループそれぞれ違う話をしてるのに俺を会話に入れてくるから気分はまるで聖徳太子だ。この状況で矢継ぎ早に会話を成立させている俺を誰か褒めてほしいものなのだが…そうこうしているとグループの一つから少し興味のある話題が聞こえてきた。
「なぁ今日転校生来るの知ってる?」
「え、マジ?初耳なんだけど」
「あぁだから机増えてたのね~」
転校生…2学期の中途半端な時期なのに転校とは珍しい。2年の2学期はつるむメンツが男女ともに固まりだしていてそこに新しく入るのは少し難しい。何かのっぴきならない事情があったのか?別に排他的なクラスメイトではないし、むしろ気の良い奴らばかりなので大丈夫だとは思うがいかんせん時期が時期だ。ただでさえ学校自体が変わって勝手も変わるのに友人関係にまで気を回すのはなかなかに大変だろう。
そこで教室のドアがガラガラっと開き担任のアサちゃん先生が入ってきた。
「あーい席着け~今日は朝からいろいろあるからな~はよ席着け~」
話が先生とチャイムに中断されて学生たちは解散、聞き分けよく各々の席に着席していく。皆が席に着いたところでアサちゃん先生が咳払いをして話し始める。
「えー席増えてるから気づいてるやつもおるかもしれんけど今日転校生が来ます。いきなりで決まった転校で本人も大変だろうから皆仲良くしてやってな?ほいじゃあ入ってきて~」
改めて転校生の予告がされざわつく教室。しかしその騒めきは教室前方のドアが開かれる共に一気に静まり返る。皆の目線が入ってくる転校生の姿に一斉に注がれる。その目線は初対面の相手を見定めるものから段々と見惚れるような、目が離せないような、そんなものへと変わっていった。自信に満ちたような迷いのない歩き姿に整った顔立ち、背中で揺れる美しい黒髪。恐らく教室皆の第一印象が『めっちゃ綺麗』で揃っただろう。
「どうも初めまして。
これでめちゃめちゃはっちゃけた性格だったら笑えたが、見た目通りの品行方正さの漂う挨拶に俺らは拍手で返さざるを得なかった。これは転校生とか関係無く高嶺の花的な感じで近寄りがたいタイプなんじゃないのかな…?
「早速色々学校の案内頼みたいんだが…まぁクラス委員だし琴ノ葉頼むわぁ~」
「え?こういうの普通同性に頼むものでは!?」
「しゃーないだろもう一人の委員の
肝心な時に休むもう一人の
「…よろしくお願いしますね。琴ノ葉さん?」
「あぁうん、よろしく。」
挨拶をしてくれた桜木さんの視線から何かいつもの視線とは違う妙な感覚を感じたが、特に追及することもできなかった。なにせ朝のホームルームの後すぐに
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