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私は校庭の中庭にいた。辺りは学園祭の真っ最中の様で、多くの学生や先生達が学術発表を行っている。
そこで私はある画面上の数式と対峙していた。描かれていたのは二桁の筆算だった。何故か下一桁に『F』の文字。みぎに視線を走らせると、数式の一桁目の数字、つまりFに当たる部分が激しく変更され、高速で別の数字に変更されている。
――この二桁のかけ算は必ず□□になる。そして其れは風船が密着する事と関係している。
高校時代の恩師がただ晴れやかな笑顔で解説をしてくれる。これを獲得するのに、手間が掛かったのだと。大変だったのだと。そうしてその勢いのまま、私の目を見てこう言った。
――論理的な貴方なら、この解説を読み解く事が出来ますよ。
そうして箱に下に風船がへばりついた発明具を晒していた。
何が何だか分からない。けれども、その時の私は何か分かった気がして、長い長い論理展開を行っていた。
――このFに□□を代入しても、値は変わらない。そして酸素が消えているから、風船がみっちゃんしにかかる!!
其れを聞いたこの数式の主催者はただ興奮した様に深く頷いた。そうなのだと。貴方は理解してくれると思っていた。と。
其れから場面が代わり、中学時代のクラスメイトが現れた。彼は恩師の実験、基、証明を一瞥した後、さも軽蔑したような視線で馬鹿にする。
――こんもんがなんの役に立つんだ。
――僕がやっている研究の方が意味がある。なんせ社会に貢献したんだぞ。
流されるのはただ『褒めて欲しい』という圧をひしひしの感じる様な、自慢話の数々である。其れを私は『へー』や『スゴイネー』など適当な相槌をうち、流していた。
あぁ、そういや私の周りの人間もそういう男性が多い。『認めて欲しくて周りを消費する』愚かな生き物達。
そうして心底冷めきった気持ちのまま瞼が持ち上がった。私の寝返りで瑠衣も起きた様で、さも面倒臭そうなかおで此方を睨む。
「ちっ……私も大して変わらねぇじゃねぇか」
「寝起きで機嫌が悪ぃのは、俺も同じだ。お前も我が身を振り返れ。そして詫びろ。お前の爆音寝言で起こされた」
そう言われ、頬を抓られたのは言うまでもない。
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