第30話 美少女VS美少女 1
「…………」
「…………」
いや、二人とも黙ったままなのはしょうがないとしても、睨むでもないのにバチバチ火花散らすの止めようよ。
止めようよって言うかそれどうやっているの?
ただ直立しているのに威圧感あるし、なのに"美少女"は一切崩れないの凄すぎるんだけど。
なんかもう寧ろ普通に二人って仲良さそうじゃない?
――――ギロリ。
――――キッ。
はい、ごめんなさい。
心の中をあっさり読まれ、厳しい視線を浴びる僕である。
今日は、またも屋上。
なんかもう困ったら全部この場所で良いと思う。
4月も終わり、5月。
GW後半戦が始まる直前のこの日。
僕は志原田さんからご褒美を貰うために、糸美川さんを伴って、この場所でこうして対面しているわけだ。
とはいえ、まぁ。
僕と糸美川さん、僕と志原田さんなら円滑にコミュニケーションを取ることが出来たとしても、志原田さんは糸美川さんに敵愾心を持っているし、糸美川さんはそういった志原田さんに取り合うつもりがないわけで。
こうやって集まったは良いものの、出会うなり二人は何とも言えない空気感で対峙しているわけだ。
僕は、思わずその雰囲気に吞まれてしまったのだけれど……イカンイカン。
そもそも今日は、この二人がどうするのかではなく、まずは僕が目標を達成したこと報告する日なんだから。
「志原田さん、今日は来てくれてありがとう」
「……約束だしね、君との。それで、やり遂げたってコト?」
「勿論、クラスメイトに受け入れられることに、成功いたしました」
「そ」
僕が見事に誤解を解き、クラスメイトと打ち解けたことを報告すると、そっけない返事だけれど、志原田さんの表情は少し和らいだ。
「ま、ワタシに宣言した次の日からの君を見ていたから、成功するんだろうとは思っていたけどね。早くない?」
「運もあるね、クラスのムードメーカ-の子が、橋渡ししてくれたし」
クスっと笑いながら問いかける志原田さんに、僕は、玉枝さんの姿を思い浮かべながら答える。
まずは挨拶から始めようとしていた僕に、すぐに応えてくれたのが玉枝さんだった。
彼女がすぐに打ち解けてくれたおかげで、別に変な奴ではなさそうだと思ってもらえたと思う。
それはそれとして彼女はこちらとの距離が近い、呼び捨てだし。
あれ、絶対勘違いさせる系女子だよ、危険すぎる。
そういうのを心配してか宇城さんみたいな保護者系クラスメイトもいて、おかげで僕の評価はまぁまぁだ。
クラスメイトの男子も特に問題ない。
というかうちのクラス、糸美川さんにも変に距離を取ったり、逆に妙な馴れ馴れしさみたいなのもない。
ちょっとスマートすぎてズルいと思う。
一部笹木さんのようなクラスメイトもいるにはいる。
とはいえ大きな問題は起きていないので、十分クラスに溶け込めたと言えるだろう。
「というわけで、湊想太郎。無事目標を達成しました」
「おめでと」
僕が拳を突き出せば、約束を交わしてくれた日と同様に、志原田さんは笑顔で拳を合わせてくれた。
「それで~。糸美川さんはそんな湊くんにおんぶにだっこなワケ?」
けれど、僕へと向けるものから一転して、彼女は無表情へと切り替えると、糸美川さんへと敵意を飛ばす。
その言葉に、糸美川さんの前髪が一瞬だけ揺れた。
「どういう意味でしょう、志原田さん?」
「え?そのまんまの意味。友達が困ってるのに、悪く思われることを避けたんでしょ?」
「それは……」
志原田さんの指摘に、糸美川さんは言葉を返すことを言い淀んだ。
糸美川さんは、僕の事を見捨てたりしなかった。
少し、目指すべき"美少女"の理想を間違えていただけだ。
間違いは誰にでもある、それでも、すぐさま動けなかったことを恥じて、答えられないでいる。
「ストップ、志原田さん」
だからこそ、僕が代わりに応えるのだ。
「糸美川さんはね、きちんと友達を、僕を選んでくれたよ。誰にでも良い顔をしたわけじゃない」
「もう、糸美川さんばっかり庇うの、ずるだ」
「志原田さんのことだって、庇うし、誤解があるなら、解くよ。だからこそ、聞かせてくれるかな、君が目指したいもの」
志原田さんが、糸美川さんに対してどう思っているのか、何となく予想はついているけれど。
決めつけ厳禁、それは僕が一番避けたいものだから。
そうして、僕が彼女へとお願いしたご褒美を求めれば、志原田さんは諦めたかのようにため息をついた。
なんか、やっぱり僕、志原田さんにため息ばかりつかせている気がする。
「しょうがないなぁ。それじゃ教えてあげるよ」
そして、目の前の"美少女"は高らかに宣言する。
「ワタシは、ワタシらしくしていたい。ワタシとして振舞いたい。我儘だとしても、ワタシを貫きたい。それがワタシの目標だよ」
そこで、言葉を切って、再度糸美川さんへ、挑発するように向き直る。
「だから、取り繕うアナタの事がきらい」
隠すことなく、志原田さんは言い切った。
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