大正異能譚ー花は遅れて咲くー

藤宮美鈴

プロローグ

 ――――花は、いつ咲くのだろう。



 生まれた時から、

 私は「花が咲かない娘」だった。



 母は私を産んですぐに息を引き取り、

 父はその死を、まるで私のせいだと言わんばかりに視線を逸らした。



 継母は笑っていたけれど

 その目の奥はいつも氷のようで

 異母妹の華澄は、私の影を踏んで

「花のない姉なんて、つまらないわね」と囁いた。


 花守家では、花弁が灯らない娘は

 存在を認めてもらえない。



 だから、私は人形のように静かに、息を潜めて生きてきた。

 それでも、ふとした瞬間

 胸の奥でかすかな光が揺れることがある。


 ――――まるで、誰かが私を呼んでいるように。


 あれが、花の声だったと気づくのはもう少し先の話だ。


 そしてその光が誰かの命を救い

 誰かの心を狂わせ

 この世界すら揺るがす力だと知るのは――

 運命が動き出す、すぐ後の話だ。

 

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