束縛系彼女に捧げた三年が終わったので今度こそ本気で青春します!!!
ちーずとーすと
エピローグ
俺の三年間の"恋"は終わりを迎えた。
長い人生のたった三年。それでもこの三年の価値はこの先どんなに足掻いて、踠いても取り返す事ができない。そんな大事な三年だった。
それなのに終わってみればまるで真夏の打ち上げ花火のように、天を翔ける流星のように、口に含んだ綿菓子のようにあっさりと一瞬で消えて、無くなって、そして終わりを迎えた。
『あのさ、ずっと思ってたんだけど。別れたいんだよね。もう、別れよう。』
最後に交わした言葉。電話の向こう側で彼女はそう言った。
それまで騒がしかった電話の向こうのその先、男女で楽しそうに会話する声や電話をしている彼女に語りかける男の声。
その全てが一瞬で聞こえなくなった。真っ白な空間に1人立ちすくんでいるような感覚に陥り、俺は一言も発することができずそのまま通話を切った。
これまでの三年間、俺が守り抜いてきたものは何だったのか。楽しい思い出や喧嘩をした思い出、傷つき慰め合ったあの日々の全てがまるでウソだったかのように音を立てて崩れていった。
束縛の激しい彼女のために俺は自分の持っているものを全て捧げた。
友人と遊ぶ時間を削り、“彼氏としての義務”とやらに縛られて、連絡の頻度や帰り道の制限も受け入れた。
それで彼女の笑顔を守ることができるのなら悔いはないと信じていた。
なのにその裏では自分の知らないところで男たちに愛想を振りまき、自分の前では一度も見せなかった楽しげな笑顔を向けていたらしい。
「は?」
怒りなのか、悔しさなのか、あるいは喪失とは別のもっと冷たい感情なのか。胸の奥で何かが焼け焦げるように痛む。
“もう少しで自分から終わらせるつもりだった”
その一歩手前で振られた事実が、心の中でガラスが割れるようにバキバキと音を立てる。
感傷に浸るように窓を開けると春の夜気が頬に触れた。そしてその涼しさにあてられてふと気づく。
この三年間、自分は狭い箱の中に閉じ込められていた。知らぬ間に蓋をされ、外の光が見えなくなっていたんだ。
友達との関係も青春という言葉もすべて投げ捨ててしまった。彼女の笑顔を守るために、彼女が望んだ“完璧な彼氏像”に縛られて。
でも今、その蓋が今やっと外れた。胸の奥に残る焦燥感は多分憎しみではない。この三年間の停滞を一気に取り返したいという衝動だ。
高校からはもうこの狭い箱に縛られなくてもいい。もう本当の自分を押し殺さないでいい。
誰よりも騒がしく、誰とでも笑い合って、仲間とバカみたいなことを全力でしよう。
そんな“青春野郎の性分”をずっと抑えていたんだから。
「……ここからだろ。俺の青春は」
ぽつりと呟いた声が春の優しい風に乗ってどこか遠くへ消えていく。
理不尽な終わりのあとに訪れたのはやっと手にした“自由”だった。
俺の高校生活はまだ始まっていない。失った中学三年分の青春、絶対に元を取ってやる。なんならおつりが返ってくるくらい完璧に、正直に生きよう。
俺の中ではすでに新しい季節が始まりつつあった。
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