第8話

 翌日、ナベは普段の顔色に戻り、元気そうだった。教室で担任のナムルが心配していたよ、と声をかけていた。ナムルはナベと同じように痩せているから、同士として心配だったのかもしれない。ナムルは痩せているからモヤシ、それに加えて、髪と顔が脂ぎっているからモヤシを和えてナムルというあだ名になった。

 それでもオレはまだナベのことが不安だった。それを本人に伝えると、どう証明すればいい? と訊いてきた。オレは数学のワークを渡して、これを解いてみろ、普段のお前ならすぐに解き終わるはずだ。ナベはワークをちらりと眺めて、オレの肩を軽く叩いた。

「お前がやらんかい」

 その瞬間、いつものナベが戻ってきたと確信した。そんなことを言いながらも、数日かけてナベはワークを手伝ってくれた。隣にナベがいると不思議と集中できて、数十ページもあっという間だった。オレは晴れて自由の身になった。だが、提出を延ばしすぎたせいで、解くべき範囲が授業で習っていない単元まで達していた。ナベは塾で先取りしていたために気づかず、オレはアホだから気づけず、結果的にオレとしてはありえない正答率を出してしまった。数学教師はなんでこんなに解けるんだ、と訊いてきたが、オレは頑張って調べました、とごまかした。定期試験が来れば、真実は誰の目にも明らかになるだろう。

 放課後、オレたちは部室倉庫でナベに学校構造と現状の課題を整理して伝えた。

「よくまとまっていて、わかりやすかった。オレよりもうまいな」

 ナベに褒められ、オレたちは悪い気はしなかった。

「では、ここからまた話し合いを再開しよう」

 ナベには及ばなくても、今度はオレたちも積極的に意見を出すと決めていた。

「そういえばさ、そもそも学校にどうやって侵入するの? 警備って破れるかな?」キョーイチが口にした。

 またひとつ課題が増えた。やるべきことは、無数にあった。

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