第4話 自称賢者、冒険者登録をする

「お、おはようございますなのです。」


「失礼するよ。」


「あ、アリスさん!それと昨日の人ですね!」


 奴はいない様だ。俺達は早速受付さんの所へ移動する。他の冒険者は昨日と同じ、楽しそうに過ごしているみたいだ。


「アリスさん、今日も依頼を見に来たんですか?それなら良い物がありますよ!」


「あの!今日は違う用事で来たのです!」


「あれ?そうなんですか?」


「用事があるのは俺なんだ。ちょっといいか?」


 俺が軽く手を挙げると、受付さんの視線がこちらに向く。早速話してみよう。


「冒険者について知りたいんだ。昨日アリスに聞いたら興味が湧いたから、どんな物なのかって思って。」


「もしかして、冒険者志望ですか!それならすぐにご案内します!」


 すると受付さんは奥に入ってボードを持ってきた。ここにスラスラと図を書き込んでいく。成る程、分かりやすい!






「まず!冒険者は皆様から依頼されるお仕事を達成して報酬を貰う仕事です!内容は様々!お使いから魔物の討伐、暗殺まで、何でも揃っています。」


「色々あるんだな。」


「その依頼には難易度があります。これは冒険者のランクと連動してまして……えっと、A、B、C、D、Eの五つのランクです。Aに近いほど難しく、お礼も期待できますよ!」


「実入りの良いのはAランクか。」


「あ!初めはEからですよ!依頼達成の実績を考慮して昇格していく感じです。基本はこれ位ですね。」


「……面白いな。実力次第でドンドン上に行けると言う訳だ!」


「自分に合っているかのお試しもできますよ?良ければやってみますか?」


「ぜひ頼む!」


「はい!では少しお待ちください!」














 受付さんドタバタと動き出したな。後ろの出口から外に出て、パタンパタンと音がした後、俺達の居る方へやって来た。


「ええと、まずは名前の記入をお願いします!」


「分かった。」


 俺は書類を受け取り、ペンで名前を書く。

 それを受付さんは確認し、続いて水晶玉を取り出した。


「セージさん、でよろしいですね?それでは次は、これに手を触れてみてください!」


「触るだけでいいのか?」


「はい。」


 置かれた水晶玉に手を触れると金色に輝き、すぐに元に戻った。これで何が分かるんだ?


「おや?不思議そうな顔をしてますね。これは簡易的な健康診断です。セージさんの身体を計測したんですよ。」


「身体を?」


「はい。ある程度の能力も分かる優れものです!えっと、病気などは特に無さそうですね。次はこちらをお願いします!」


「この水晶玉は何を調べるんだ?」


「こちらは魔力の量です。この二つが必要な情報になります。」


 そして置かれる水晶玉。さっきとは違って真っ黒だ。


「ではどうぞ!」


「ああ。」


 手を置いてみると、また金色に輝き出した。ま、眩しい。


 ピシッ。


「何か言ったか?」


「いえ、何も言ってませんよ?それにしても随分長く光りますね。」


 ピシッ。


「今ヒビが入らなかったか?」


「えっ?まさか……って本当です!今すぐ手を離してください!」


「あ、ああ!」


 パリン。


「「あっ。」」


 俺が手を離すと同時に、水晶玉は粉々に砕けてしまった。……ただ触っただけだぞ!?


「すまない!こ、この水晶玉って値段どれくらいだ!?」


「あ、これは簡単に手に入るので大丈夫ですよ!これで情報は集まりましたね。冒険者証の準備をするのでちょっと待ってて下さいねー!」


 受付さんは奥に入って行く。横を見るとアリスが驚きの表情でこちらを見つめていた。



「水晶玉割っちゃったのです。」


「すまん。」


「で、でも皆が触れた時には一度も割れてなかったのです!ひょっとしたら凄い事かもしれないです!」


「ま、まあ期待して待つとするか。」














「お待たせしましたー!」


 来た!俺の結果はどうなった?


「ありがとう、それで、俺の結果は?」


「はい、発表します!」


 受付さんは小さい板を机にポンと置き、こっちをじっと見た。


「……何か付いてるか?」


「いえ。セージさんは魔法職に向いてますね。」


「そうだろうな。魔法はよく使う。」


「具体的には……身体能力はE、最低レベルです。パワーや丈夫さ、スピード、全部平均以下でした。」


「そ、そうだろうな……俺は運動が苦手でね。」


 苦笑いしか出ない。実際魔力で無理やり強化してる感じだからな。



「ですが!魔力に関しては文句無しのAランクです!最初からこのランクなんて、現役の魔法使いにも中々いませんよ!どうやって鍛えたんですか!?」


「まあ色々やってるからな。中身は内緒で頼むよ。」


「という訳で、お勧めは魔法使いです!攻撃魔法、回復、補助、どこへ行っても通用しますよ!」


「待った。自分で選べるのか?」


「はい!自分で名乗る事がルールです。結果を参考に自分で選んでください。自己責任になりますが、手柄や名声も自分の物ですよ!」


 自己責任……確かに。動くのが苦手なのに戦士では、依頼が来た時大変だ。まあ、こちらにとってはありがたい。俺の選ぶ物は……







「これで頼む。」


「はい!それではセージさんは賢者で登録しますね!…………賢者?魔法使いではないのですね。」


「ああ。」


「それではこれで作成します。もうちょっとお待ちくださいー!」


 板を持ってまた奥へ。往復大変そうだな。









「た、大変お待たせじました……こ、こちらが冒険者証になりまず……。」


「あ、ありがとう。」


 俺は冒険者証を見る。銅色に輝く、俺の冒険者証!


「アリス、これで俺も冒険者だ!」


「おめでとうなのです!」


「で、ではあちらが依頼の掲示板でず……お試しは簡単な物からやってくださいね……。」


「ああ!ありがとう受付さん!」


「先輩の私と一緒に選ぶのです!」




 ……師匠、俺は冒険者になったよ。腕を磨いて、師匠の様な賢者になってみせるからな。


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