白薔薇と混血の白騎士

がらご

プロローグ

0

白薔薇を殺した。


美しい白髪の髪を乱し、床で苦しそうに悶える彼女を見て、思わずほくそ笑んだ。この現実が、やっと訪れた。


——手が震える。

手に持っていた注射器を床に落とし、震えを抑えるように自分の体を抱きしめた。


ああ、やっと——やっとこの世から消えてくれる。


ずっと嫌いだった。疎ましかった。完璧な美貌も、花が咲いたような笑顔も、すべて憎かった。


思わず笑みが溢れた。こんなに愉快な気持ちになるなら、もっと早くやっておけばよかった。


「……苦しい?」


近づき、絹のような白髪を掴んだ。死の前に、美しい顔が恐怖に歪む瞬間を見たい。助けを懇願しても、嘲笑って答えないつもりだった。


なのに——。


白薔薇の鈴のように凛とした笑い声が、部屋中に響き渡った。


先ほどまでの呼吸音は、鼓膜を震わせるだけの恐怖に変わった。


なんで?


理解が追いつかない。


なんでお前が——その澄んだ青い瞳で、こちらを嘲笑っているんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る