第34話 人魔戦線1

「それで、どうなったんだ!? 実際に魔王軍の本隊は帰って来て、日本を攻めたのか!?」

 俺は叫んだ。続きが気になって、我慢できなかったのだった。


 ロフウの強化魔法や最新鋭の武器のおかげである意味最強レベルになったと言ってもいい二体が、最強の魔族に勝ったのかどうか――。


「……習志野駐屯地ニ、ボクハ行カナカッタ。行キタカッタノダガ、ロフウニモ御岳ニモ止メラレテナ。結局ロフウトナッチニツイテイッタノハ、護雷神ト護雷狼ヲ伴ッタ御岳ダケダッタ……。ダカラ、ココカラ話ス内容ハ、護雷神ノカメラヤ自衛隊ノカメラ映像ヲ衛星通信経由デ見タモノニナル」


 コンピューターの黒井は、機械的な音声で淡々と言うと、言葉を続けた。

「ダガ、魔族ノ本隊ガ日本ニ攻メテ来タノカ、トイウ質問ハ愚問ダナ。攻メテ来タカラ、今コノ世界ハコノヨウナ有様ナノダゾ……」


 俺はコンピューターの黒井の言葉に唾を飲んだ。

「マア、イイ。ココカラガ核心ダ……覚悟ハイイナ?」

「ああ、頼む」

「ロフウ達ガ、習志野ニ出発シテ二週間後。魔族ハ攻メテキタ。但シ、侵攻シタノハ、富士ダッタンダ……」


「どういうことだ?」

「富士ニハ陸上自衛隊ノ演習場ガアル。ソコニ、突然巨大ナ翼ヲ持ッタ龍……、ドラゴンガ幾匹モ飛来シタノダヨ……」


      *


「くそ。何なんだ。そもそも、富士は聖なる気が満ちていて、魔族が寄ってこないってことじゃ無かったのか!?」

「魔族たちは何らかの対策を施しているらしい。そして、それをするくらいにここは彼らも大好きな魔素が濃いのだそうだ。ここを占領したいのかもしれない」


「そうか……。だが、あいつらめ。ここに、戦力が集まるのを待っているように見えるぞ」

「確かに不気味だが、命令があるまでは待て。いずれにしても、その二体の力は存分に発揮してもらうよ」

 御岳が自衛隊の誰かと話をしている内容が流れる。 


 ボクは一階食堂に設置されたPCモニターの前に座り、護雷神のカメラとマイク、そして自衛隊のカメラから送られる情報を唾を飲んで見守っていた。

 後ろには、航空力学専門の藤田教授、農学博士の荒川教授、AI化専門の島本教授の他、ここで暮らしている一般人のほとんどが戦況を見守った。


 モニターには、悠々と富士の空を飛ぶ多くのドラゴンが映っている。

 赤黒い鱗を持つフレイム・ドラゴンの群れだ。

 自衛隊も、日本各地から戦力が集まってきており、生き残っていた戦車や戦闘ヘリ、高機動ロケット砲までもが集結している。まさに総力戦という感じだった。


 すると、突然モニターから御岳と自衛官の切迫感のあるやり取りが突然流れた。

「おい! 奴ら動いていないか……」

「監視カメラ映像を切り替えろっ!!」

「おい。何をしてるっ!!」


「何だ? 何がどうなった……?」

 ボクがカメラの映像に見入っていると、

「命令が来た。ドラゴンを撃つ。まずは米軍横須賀基地の生き残りが持って来た高機動ミサイル。ハイマースで始めるそうだ。その後は戦車や榴弾砲をはじめとした全火力を動員する」

 と、御岳の横にいる自衛隊関係者の声が聞こえてきた。


 間を置くこと無く、ミサイルがドラゴンへ飛んでいくのが見えた。

 激しいオレンジ色の光と黒い煙を上げて、ミサイルがドラゴンへ着弾する。


 ズガーーンッ!! という、ミサイルの炸裂する音の余韻が残る中、

「イエエーーーイッ、ヤアーーーッッ!!」

 米軍基地の生き残りの歓声が、携帯通信機越しに響き渡った。


「グルルゥゥオオォォ……」

 ドラゴンは、地の底から響くような苦しげな声を漏らした。

 着弾した部分の赤黒い鱗が剥がれ落ち、丸く凹む。

 ドラゴンは一瞬地面に落ちそうになったが、すれすれで持ち直した。


 そのタイミングだった。

 前へ出てきた戦車の何十発もの主砲弾が飛んだ。


 ダガッ、ダガッ、ダガッ、ダガンッ――!!

 耳をつんざくような主砲弾の着弾音が響くたび、衝撃で画面が揺れ、ドラゴンは身体を折り曲げ苦しんだ。

 おそらく、ロフウの強化魔法済みの弾頭なのだ。


「凄いな。これはさすがに効いただろう」

 御岳の声が聞こえたその時――。

 ドラゴンの口が大きく開き、火炎の塊が飛び出た。火炎は、戦車や他の武装群を直撃した。


 一瞬、ドラゴンと自衛隊の前に透明だが虹色に煌めく壁が現れた。

 あらかじめロフウの施していた魔法防御だ。

 直撃したかのように見えたドラゴンの火炎は全て弾かれていた。


 同時に、戦車の主砲、榴弾砲や機関砲が一斉に火を噴いた。

 けたたましい爆発音とともに、全ての砲弾がドラゴンを直撃し、無数の赤黒い鱗が日光を反射し煌めきながら剥がれ落ちる。 

 そして、ついに全てのドラゴンは地面へと落ちていったのだった。

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