第31話 旅の話4
「高千穂は、剣山や高野山のように、魔素が集まりやすい場所だった。聖なる気とでも言うべき魔素だ。日本発祥の神話が残っている土地で、特に、
「確かに、そんな伝説が残っているな」
ボクは微笑むロフウに頷いた。
「周りに森が多かったので、魔法防御の森を展開し、サディクくん考案の結界石を要所に置いたんだが、ここは鉄壁の守りになったと思う。元々魔族が少ないことに気がついた人々が多く逃げ込んでいたのだが、神話由来の土地というのもあってか、魔法の素質のある人たちも多くいた。ここでも、魔法の基礎を教え込んでまた移動した」
「九州では他にもそんな地域はあったのかい?」
ボクが訊くと、
「私たちが行った限りでは無かったよ。だが、おそらくピンポイントでは他にもあったのではないかな。八十八箇所のお寺のようにね。だが、既にかなりの人々が殺され、魔族の棲む場所だらけだったんだ。我々も見つからないように移動するのが精一杯で、全ての場所を行ってみるということはできなかったんだ」
と、ロフウは言ってため息をついた。
「そうか……。じゃあ九州はこれでおしまいかい?」
「いや。最初に行くべきだったなと後で思ったのだが、福岡の飯塚駐屯地に行ったよ。最初に北九州から東回りで進んだため、結果的に最後になってしまったんだが、ここは九州最大の陸上自衛隊基地らしいね」
「そこの機能は生き残っていたんだな?」
御岳が訊いた。
「ああ。何とかね。大分の駐屯地を除く九州中の部隊の生き残りがここに集まって、襲い来る魔族と戦っていたよ。ここも他の駐屯地と同様に、武器の強化を施し、魔法防御の結界を作ったんだ。そして、魔法の素質のある者たちも探したのだが、ほとんどいなくてね。だが、代わりと言っては何だが、面白い出会いがあった」
「何だ? 弟子はもういないんだろ?」
「ああ。そうじゃない。護雷神と護雷狼の武器になるものを開発していたという男に出会ったのさ」
「マジかっ!?」
ロフウの言葉を聞いて、御岳が叫んだ。
「護雷神と護雷狼は確かに武器をつける予定で、こちらから仕様も指定済みだったんだ。実験が進んでいけば、それも試す予定だった。だけど、それももう無理だと諦めていたんだが……、武器そのものももらえたのか?」
「ああ。その方からメッセージ付きで預かってきたよ。『これを使って魔王ゼオンと極炎のバハルを倒しててくれ』とのことだった。後で付けてみよう」
「そうか……楽しみだな」
御岳は笑って頷いた。
「本当は沖縄にも行きたかったんだが、残念ながら手段が無くてね。福岡からまた来た道を遡りながら帰ってきたんだ。途中、来たときに魔法防御を施した基地や土地を訪ね、魔法使いの素質のある者たちをまた鍛えたりしながらね。
そして、最初に寄れなかった富士山にも行った。ここは凄い魔素の量で、聖なる気に包まれ、魔族は近寄れない場所になっていた。麓には人間の暮らす集落が幾つもできていたので、ここも魔法防御による結界を張ってきた。そして一ヶ月ほどここでは過ごした」
「――ロフウさんには感謝しても仕切れないな。だが、一つ疑問だが、ゼオンやバハルは、その後基地を襲ったりはしていないのか? いくら魔法防御を施してもあれは規格外のような気がするのだ。実際に北海道の東千歳駐屯地はあいつらに蹂躙されたんだよな」
ボクは訊ねた。
「ああ。その通りだ。彼らは今は日本にはいない。おそらく世界中を蹂躙して回っているのだと思う。だが、それも想像でしか無いからな。それで、私は世界の様子を知るために、富士山で手に入れた
「なるほど。それもあって一ヶ月富士山の麓の集落で過ごしたんだな」
「ああ。そういうことだ」
「で、何か分かったのか?」
「ああ。いくつか返信があった。具体的にはアメリカとヨーロッパ、そして、中国とアフリカだな。詳しいことは分からないが、私と同じように魔法防御を施したり、武器の強化を図ったりしているとのことだったな。だが、どこも戦況は厳しいようだ。アメリカでは魔族たちを殺すために、一つの基地を犠牲にして核ミサイルを撃ち込んだらしい。確かに、そこに集まった魔族は死んだのだが、果たしてそれが正解だったのか……」
ロフウは首を振って言った。
「そうか。本当にそうだな」
ボクはため息をついた。
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