第30話 旅の話3
「しかし、凄いな。ロフウさんのおかげで日本人は絶滅せずに済んでいる感じだな」
「そう言ってもらえるとうれしいよ。頑張った甲斐があるってもんだ」
御岳の言葉に、ロフウは首をすくめながら笑った。
「その、さっきも少し話に出たが、途中で魔族や魔物とも戦うことはけっこうあったのか?」
「ああ。かなり戦ったよ。希にだが、強い魔物と出会うこともあって、私だけでは危ないときもあった」
「どうしたんだ?」
「うん。習志野駐屯地を出る際に
「これなんだけど……」
ナッチが持っていたザックから頭の出ていた小銃を取り出して皆に見せた。
弾丸の入ったマガジンが差し込まれ、ピストルグリップと肩に当てるストックがついた軍隊用のアサルトライフルだ。本体から銃身の先まで、ロフウによる強化呪文が書き込まれている。
「じゃあ、ナッチも一緒に戦ったんだな?」
「ああ。戦ったなんてもんじゃ無い。頼もしかったよ」
ロフウがそう言うと、ナッチは照れくさそうに頷いた。
「それで、その後、私とナッチは、香川から岡山へ瀬戸大橋を渡ったんだ。中国地方もかなり厳しい状況だったが、それでも生き残りの人々を探しながら移動した」
「ひょっとして、
御岳が言った。
「よく分かったな」
ロフウは驚いたのだろう。目を見開いて御岳を見た。
「出雲は日本神話由来の土地だから、防御魔法を張るのに適した場所があるんじゃ無いかと思ったんだ。それに、確か自衛隊の駐屯地もあったはずだ」
「ああ。その通りだ。出雲駐屯地は生き残っているとの情報があってね、行ってみると、細々とだが部隊が残っていた。そして御岳の言うとおり、魔法防御に適した場所だったよ。ここも他の駐屯地と同様に、魔法防御を施し、武器の強化を図った。その後は関門橋を渡り、九州へと行ったんだ」
「そうか……」
御岳は腕を組んで唸った。
「あれだな。橋やトンネルのような大きなインフラは残っているんだな?」
ボクが訊くと、
「そうだな。魔族の気がいつ変わるかは分からないが、利用価値を認めているんだと思うよ」
と、ロフウは答えた。
「そうか……」
ボクは頷きながら、ふとテーブルに出された食べ物を見つめるナッチに気がついた。キャベツとトマトのサラダとトウモロコシのスープに目が釘付けになっている。
「あ。話に夢中になってしまっていたな」
ボクがナッチを見ていることにロフウも気づいて頭を掻いた。
「お腹が空いてるよな。じゃあ、遠慮無く食べて。話の続きはそれからだ」
ボクがそう言うと、二人は手を合わせ、
「いただきます!」
と、声を揃えて言った。
「おおっ。こいつは美味いな!」
「本当ですね、先生。何と言うか、味が濃いというか、凝縮されている感じがします」
ロフウとナッチは、サラダとスープを食べて、感嘆の声を上げ笑顔になった。
「そうだろう。荒川先生の指導で作った野菜だからな」
ボクが胸を張ると、
「でも、種も苗も無かっただろうに……」
ロフウが言った。
「まあね。だが、瓦礫の中の残飯や出ている芽を見つけたりして、何とかね。先生がいなかったら難しかったと思うけどね」
ボクがそう言うと、横で荒川教授が照れくさそうな、うれしそうなそんな表情になった。
「そうか。それにしても苦労したはず……。貴重なものだというのは分かるよ。本当にありがとう」
ロフウはそう言って頭を下げ、残りの食べ物を一気に食べた。
ナッチもがっつくようにサラダとスープを食べ尽くした。
そして、二人はご馳走さまをして、にっこりと笑ったのだった。
「では、続きを説明するとしよう」
「ああ。頼む」
ボクがロフウに頭を下げていると、
「あっと。その前に質問があるんだ。今までの説明で航空自衛隊基地や海上自衛隊についての説明がほとんど無かったが、やはりそっちは優先して叩かれたってことなのか?」
と、御岳がまた割り込んだ。
ボクは少し睨んだが、確かにそれはそれで気になる。なので、黙ってロフウの言葉を待った。
「――ああ。駐屯地の人たちによるとそういうことのようだ。航空戦力は彼らにとっても脅威だろうからね。優先して叩かれたんだ。ただし、海上自衛隊の船や潜水艦の幾つかは無事で、そこに残る航空戦力はかろうじて生きているらしい。だが、燃料の問題があって、じり貧だと言っていたよ。補給のできる港や基地は、魔族が既に押さえているのだそうだ」
「そんなことだとは思ったが、やはりそうなのか」
御岳は大きなため息をついた。
「では、続きだ。我々は関門海峡を渡り、まずは福岡の北九州に行った。ここも他の土地と同じように魔族に蹂躙され、大変な有様だったよ。そして大分の方へ回り、宮崎へと降りていった。
途中、何人かの生き残りを助けたが、本当に僅かしかいなくてね。この時は、魔族にも何度も襲われたが何とか凌いだ。大分にもたくさんの自衛隊基地があったらしいが、残存兵力も集まり湯布院駐屯地だけがかろうじて生き残っていた。我々はそこに魔法防御を施し、生き残っていた人たちも避難させた。そして、宮崎の方へ降りたのだが、ここにもナッチの魔法探査で面白い土地があることが分かっていた」
「高千穂か……」
ボクが呟くと、
「ああ。そうだ」
と、ロフウは頷き、説明を続けた。
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