第14話 いざ遺跡へ4
「な、何と……。ここのロックは、私か主にしか開けられないはず……」
ガーくんが驚愕の表情で呟く。
「登録された手のひらの静脈スキャンで開くこのロックが、ボクの手のひらで開いた……、ということは、どういう状況が推測される?」
黒井がガーくんの頭を撫でながら訊いた。
(つまり、あなたは私の主……ってこと……なのか。しかし、主はもう既に……!? これはどういうことなのだ!?)
ガーくんの驚愕した声が、脳内に響き渡った。
「どういうことです? 私には今の会話の内容の全ては理解できませんが、要は黒井さんの手のひらでは開くはずの無い仕掛けが開いたと言うことなんでしょ? さっきのやり取りと関係があるんですか?」
蒼真が俺に向かって訊ねる。その表情は戸惑い以外のものではない。
「まあ、すぐに分かるさ。俺もなぜ、こうなっているのかまでは分かっていない。お前も一緒だろ。黒井……」
俺は蒼真の肩を叩きながら、黒井を見た。
「ああ。確かなのは、ここがボクや
黒井はそう言うと、ギイッと、音を立ててドアを手前に開いた。そして、
「さて」と呟きながら中へ入っていく。
「ふう。で、中には何があるか、だな」
俺は紫織と蒼真の背中を押した。後ろには調査団の面々と護雷狼が続いた。
中には普通の
新型の小型衝突型加速器だ。あの地震があった際に実験中だったこれが暴走し、俺たちはパラレルワールドに飛ばされたのだ。
俺はふと、ガラスに様々な色の光が煌めくように反射していることに気がついた。ガラスと反対の壁一面にそれはあった。
「これは何だ……? こんなのは知らないぞ」
俺が呟くいた途端、壁一面を埋め尽くす、極彩色の光の粒が縦横に点滅した。
「久シイナ……」と、それがしゃべった。機械的な音声。だが、どこか聞き覚えのある口調だ。
「自律型のAIなのか?」
「ソウトモ言エルシ、人間ダトモ言エル存在。ソレガ、ボクダ」
壁を埋め尽くす光の粒。それら一つ一つは、小さなLED電球のようにも思えるが様々な色が発光しており、話す度に蠢くように点滅を繰り返した。おそらくこれそのものが高性能なコンピューターで、自律型AIらしきものは、これにインストールされているのだろう。
俺たちがコンピューターに圧倒される中、
「では、単刀直入に訊こう。君はボクなのか?」と、黒井が訊ねた。
すると、
「サスガハ、ボクダ。話ガ早イナ……」と、それは黒井の疑問を肯定した。
「ということは、この世界は何だ? ずっとパラレル・ワールドの一つだと思っていたが、ここは実は未来の日本なのだろ? だが、なぜ黒井が二人同時に存在するんだ?」
俺は我慢できずに言葉を挟んだ。
「フフフ。相変ワラズ、セッカチナ男ダナ……。ソンナンダカラ女ニモテナインダゾ」
「うるせえ。余計なお世話だ!」
「お前なあ。一々、入ってきてまぜくるな! 本当、コンピューターのボクの言うとおりじゃないかっ!」
黒井は俺の頭をスパンとはたきながら叫んだ。
「マア、ボクヨ、ソウ言ウナ。
「そうか……。それならいいが」
黒井が渋々と頷く。
やはり、このコンピューターの黒井は俺のことを知っている。そして、それだけじゃない。護雷狼のことも知っているんだ――。
俺がそう考えていると、
「
と、コンピューターの黒井は、光の電球の粒を極彩色に点滅させながら言った。
「い、いや。子どもじゃ無いんだからちゃんと訊くぞ」
俺が頭をかきながら言うと、
「ソウカ。デハ、始メルトシヨウ。一体、何ガ起コッテ、コノ世界ガコウナッタノカ。ソシテ、君ラハナゼコノ世界ニ来タノカ」
その言葉に、俺は……、いや、俺たちは一斉に姿勢を正すと、唾を飲んだ。
「ソノ日ハ、西暦2045年9月5日。日本デノ時間ハ20時24分。突然同時多発的ニ、世界中ノアラユル場所デ、最大震度8強ノ地震ガ発生シタ。普通ナラ、世界中デ同時ニ地震ガ起コルコトナド、アルハズガナイ。ダガ、ソノ普通デハナイコトガ、ソノ日ニ限ッテ起コッタ……」
極彩色の光の電球を瞬かせながら語られるその言葉に、俺は戦慄した。
「その日のその時間には、ボクたちの世界でも地震が起こった……。そして、衝突型加速器が暴走し、ボクたちはこちらの世界に転移したんだ……」
黒井が茫然と呟くのが、聞こえてきた。
俺は黒井と同じく、茫然とその言葉を聞いた。
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