第32話 迎え酒

「……すまない。姉さんがいないときに話しておきたくて……どうせおまえは礼拝に出ないだろうと思い……」

「本当に大丈夫だって! こっちが申し訳なくなるからやめよ!」


 チェレーゼが淹れてくれたお茶をピグトニャにも用意し、椅子に座る。


「おまえ、これ飲んだか?」

「そういえば、バタバタしててまだ飲んでないや」

「……そうか。飲んでみろ」


 そりゃ飲むけど、と、不思議に思いながら一口啜る。瞬間、吹き出しそうになったのをギリギリで耐えた。しじみ汁とめちゃくちゃ濃い緑茶と砂糖を混ぜたような味がする! すべての味がある。ドリンクバー全部混ぜより味がある。なんだこれ。


「このお茶、二日酔いに効くってやつだろ……久々に飲むけど、変な味だよな」

「変な味どころじゃない、唯一無二の味、褒めてない方向で」

「言えてる。でも最低でも一杯は飲んだ方がいい」

「そんなに効くの……?」

「効く。正直、これがあってラッキーだ」


 そこまで言うなら……と、覚悟を決めて口をつける。液状の不味いサプリメントを続けられなかったときのことを思い出す。今ならあれだって続けられる気がする。

 必死に飲みきると、途端に消化管が熱くなり、ふわふわと気分が楽になってきた。確かに頭痛は誤魔化されている……が、なんだかまずい気がしてきた。


「これ迎え酒じゃない!?」

「酒じゃない。色んな薬効を組み合わせて、即効で気を楽にしつつ、その間に身体を回復させる作用を持つ茶というか薬というか……らしい。こういう錬金術は姉さんの趣味のひとつなんだ」

「地球だと違法な予感がする……」


 良いサプリメント、というのもあながち嘘ではないのかもしれない。錬金術でそんなものが作れるのか。というかこの星には錬金術もあるのか。ピグトニャも慣れたように、とはいえ僅かに顔を歪めながら飲みきった。眉間に寄っていたシワが緩和されている。さっきまで相当つらかったのだろう。


「はぁ……助かった。それで、本題だが……」


 ピグトニャはポータルからタブレットを取り出す。ポータルというのは、物理キーボードをしまっている袋……私が四次元ポケットと呼んだものの正式名称、というか、よりニュアンスが近い言葉らしい。


「おまえ、自分が俺たちに見積もり依頼したの、覚えてるか?」

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