路上占い、あれこれ90【占い師はアトピーと】

崔 梨遙(再)

これでいいのか? 1499文字です。

 僕が夜のミナミで路上占いをやっていた頃の話。



 夜、電話が鳴った。


『はい』

『晴美です』

『うん、どうしたん?』

『崔さん、彼女と別れたんですよね?』

『うん、なんで知ってるの?』

『川上さんから聞きました』

『ふーん、それで?』

『崔さん、彼女がいなければ私と付き合ってくれるって言ってましたよね?』

『うん、言った』

『じゃあ、私と付き合ってくれますか?』

『僕はええけど、晴美ちゃんは僕でええの? 晴美ちゃん、23歳やろ? 僕、30代の半ばやで』

『崔さん、大人っぽくていいと思います』

『背も高くないし、男前でもないけど、ええの?』

『はい、私と付き合ってください』

『うん、ええよ』

『いつ会えますか?』

『土曜日は? 一緒にランチしてからどこかに行こうか?』

『はい、時間と場所は?』

『13時に○○駅の〇〇ビルの前』

『わかりました』


『この店、どうやった?』

『素敵です。本格的なフレンチの店、初めてです』

『料理、美味しいやろ?』

『はい、嬉しいです』

『今までの男とは、どんな店に?』

『ファミレスが多かったですね』

『そうなんや』

『この後、どこに行くんですか?』

『ごめん、今回は考えてないねん。カラオケとか、映画かな?』

『崔さん、遠回りはやめましょう』

『え?』

『ホテルに行きましょう』

『うん、ええけど』


『どうでした?』

『うん? 良かったで』

『私のアトピーの体を見て、また抱こうと思いますか?』

『うん、またデートして、またHしたらええねん』

『・・・みんな、1回で逃げましたよ』

『他の男の子とは知らん』

『崔さんは、どうして私と付き合うことにしたんですか?』

『断る理由が無いやんか、晴美ちゃんが良い子なのは知ってるし』

『外見は?』

『アトピーが治ったら、美人やと思うで』

『・・・・・・』


『プルルルル・・・はい』

『崔さん、英梨香です』

『うん、何?』

『崔さん、デートしてくださいよ』

『ああ、アカンねん。僕、今、彼女がいるから』

『彼女がいても、デートくらいいいじゃないですか』

『アカンよ、彼女がいる時は浮気しないって決めてるから』

『どうしてもダメですか』

『ダメ、ごめんね』

『わかりました』


『崔さん』

『何? 晴美ちゃん』

『崔さんと付き合い始めて3ヶ月が過ぎました』

『ああ、そやなぁ』

『崔さん、別れましょう』

『なんで?』

『これ以上、崔さんを束縛できません』

『どういうこと?』

『私、北海道の姉のところに行くことになりました』

『そうなん?』

『はい、母からもすすめられて』

『ほんで?』

『別れます』

『そうなん?』

『英梨香ちゃんから誘われたでしょう?』

『うん、なんで知ってるの?』

『実は、私が英梨香ちゃんに崔さんを誘惑するように頼んだんです』

『え? どういうこと?』

『崔さんに浮気されないか? 確認したくて』

『ほんで? 断ったで』

『はい、崔さんが真面目に私と付き合ってくれているのがわかりました』

『ほんで?』

『私、どの男性も1回Hしたら私をヤリ捨てにするから、諦めかけていたんです。私、自信を無くしていたんです』

『うん、ほんで?』

『こんな私でも、真面目に付き合ってくれる男性がいることを確認できました。私、すごく自信がつきました。もう諦めません』

『え? ほんで?』

『崔さん、ありがとうございました。私は崔さんから自信をもらいました』

『・・・・・・』



『晴美ちゃん、北海道かぁ・・・プルルルルル・・・はい、崔です』

『英梨香です』

『うん、なんなん?』

『晴美と別れたんですよね?』

『うん、勝手に自己完結して去ってしまった』

『崔さんが浮気しない人だということがわかりました』

『それで?』

『崔さん、私と付き合ってください』



『・・・・・・』


 英梨香が彼氏に浮気されて別れたことを僕は知っていた。




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路上占い、あれこれ90【占い師はアトピーと】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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