第17話 決着

「ぐっ……!カルメリア、何とか時間を稼げ!」

《バラスト》のリーダーが消滅する寸前に叫んだ指示が虚しく響く。もう一人のパラディンも消え去り、残るはカルメリアと呼ばれた中衛のガーディアンと後衛のハイプリーストのみ。圧倒的な戦力差はもはや覆せない。

(後ろの憂いはなくなったわね。フィリア、ハイプリーストを抑えて)

「は、はいっ!」

 フィリアがハイプリーストに駆け寄り、小盾を構えて睨みをきかせる。プリースト同士、攻撃手段はほとんどないため、これは実質的なタイマン封じだ。

(残るはガーディアン。彼女も盾持ち。真正面から殴り合っても面白くないわね)

 メイはクールに笑みを浮かべる。

「調子にのるなよ! うちの盾は簡単に抜かせない!《バラスト》の名にかけて!」

 カルメリアがメイと対峙しながら叫ぶ。中堅ギルドの一員としての威厳を見せようとしている。

 彼女はそう言うと、巨大な盾を突き出してスキルを発動した。

「『ハード・コート』!」

 盾の耐久値を大幅上昇させるスキルだ。さらに続けてスキルを使用する。

「『シールドバッシュ』!」

 敵を数秒スタンさせる、強力な妨害スキルだ。

 だがメイは落ち着いていた。彼女もまた、セカンダリージョブはシールダー。

 メイは自身の「盾ナックル」でガーディアンの盾攻撃を真正面から受け止める。ガキィン!と激しい金属音が響き渡る。

「なっ!?受け止めた!?」

 カルメリアは驚愕する。盾で防御すればスタンはしない。メイはそれを理解していたのだ。

「悪いけど、こっちにも盾があるのよ」

 メイはクールに言い放つ。

(このゲームの装備には耐久値の概念があるんだから活用しないとね)

「ルーナ、盾破壊を狙うわ!合わせて!『アーマーブレイク』!」

 メイが叫ぶ。


[アーマーブレイク!]


 メイが「盾ナックル」の盾縁をガーディアンの巨大な盾に思い切り叩き込む。

 ガキィン!と激しい金属音。ガーディアンの盾の耐久値バーがゴリゴリと削られていく。

「なっ!?うちの盾の耐久値が……!」

「次は私のターン!」

 今度はルーナが愛用の「シールドアックス」の斧部分で盾を追撃する。モンクスキルではないが、ウォリアーの単純な物理攻撃力でも盾の耐久値を削っていく。

 ガキィン!パリン!

 二人の集中攻撃によりガーディアンの重厚な盾に大きなヒビが入り、ついに砕け散った。盾を失ったカルメリアは腰を抜かしたようにその場にへたり込む。

「あぁ、盾がぁぁぁ!」

「勝負あったね!」

 アリスが楽しそうに笑う。

 残ったのは盾を失ったガーディアンとフィリアに睨まれているだけのハイプリースト。勝機は完全に《クローバー》にあった。

「くそっ……!降参だ!」

 カルメリアが苦渋の選択をする。


[ギルド《バラスト》が降伏しました]

[勝者、《クローバー》!]


 システムメッセージと共に、フィールドに《クローバー》の勝利が宣言される。静まり返っていたコロシアムが割れんばかりの大歓声に包まれる。無名ギルドによる王道パーティー相手の圧倒的な制圧劇。観衆は熱狂していた。

「おいおいマジかよ! セカンダリー盾、つえぇ!」

「あの連携、プロのガチ勢レベルだろ!」

「くそっ、俺、進化ジョブ選んだの早まったか?」

「あのモンク、クールすぎだろ! ファンになったわ!」

 興奮した観衆の声が飛び交う中、アリス、ルーナ、フィリアの三人がメイのもとに駆け寄ってくる。フィリアは少し泣きそうだ。アリスとルーナはハイタッチを繰り返す。

(ふふ、私たちだけの戦法……予想以上に強かったわね)

 メイのクールな表情にも、満足げな笑みが浮かんでいた。この勝利はセカンダリージョブ実装後の世界に《クローバー》という異質な存在を強く印象づけるものとなった。

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2025年12月9日 18:11
2025年12月10日 18:11
2025年12月11日 18:11

セカンダリージョブはシールドで! 友野紅子 @tomonokouko

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