第16話 予測不能の連携
[試合開始!]
システムの声が響き渡ると同時に、フィールドに緊張が走る。
相手ギルド《バラスト》のハイプリーストが即座に杖を掲げた。
「『光の加護』!」
神々しい光が《バラスト》のメンバー全員を包み込み、彼らの防御力が上昇する。同時に二人のパラディンとガーディアンが自身の強化スキルを発動させる。
「『アイアンウォール』!」
「「『セイクリッド・グロース』!」」
王道の隙のない先制バフ。ガーディアンの体がさらに硬質化し、パラディン二人の全ステータスが上昇していく。
(王道ね。でもその動き、全部読めてるわ)
メイはクールに分析する。相手の動きはシステム的に最適化された定石通り。だが《クローバー》の戦い方はそんな定石の遥か斜め上を行く。
「行くよ、ルーナ!」
「おっしゃあ!」
相手がバフスキルを使い終えるより前、メイとルーナはモンクとウォリアーの機動力を活かして突撃する。
「強化なしで突っ込んでくるだと、なめるなよ!」
《バラスト》のパラディンたちは突撃してきた二人を、少しでも前で迎撃しようと走り出す。
前衛同士の距離が詰まったところで二人のパラディンのうちの一人がメイとルーナめがけてスキルを発動する。
「『クレッセント・スラッシュ』!」
三日月型の光の斬撃が二人に飛んでくる。
(遅いわ!)
メイはジャンプして、まるでアクロバットのように光の斬撃を回避する。一方ルーナは愛用の「シールドアックス」の盾部分で攻撃を防ぎつつ思い切り地面に叩きつけた。
「『粉砕の剛断』!」
ルーナが叫ぶとウォリアーの範囲攻撃スキルが発動する。
[粉砕の剛断!]
衝撃波と共にルーナを中心とした地面がバキバキとひび割れ、足場が不安定になる。王道の強化バフで固めた《バラスト》の前衛二人のパラディンはバランスを崩してよろめく。
「なっ!?足場が……!」
「メイちゃん、今よ!」
「ナイスよ、ルーナ」
ルーナの声にメイは駆け出す。モンクの圧倒的な機動力でよろめく二人のパラディンの間をすり抜けていく。彼女のターゲットは中衛のガーディアン、そしてその後ろのハイプリーストだ。
「逃がすか!」
二人のパラディンのうちの一人が、メイの動きに気づき追いかけようとする。
(予想通り、挟み撃ちは避ける!)
「アリス!」
メイの短い指示が飛ぶ。
「任せて!『グラビティ・マイアー』!」
アリスが杖を振るうと、前衛パラディン二人の足元に重力のぬかるみが発生する。強力な重力が二人を地面に縫い付け、動きを完全に封じる。
「ぐっ!体が動かない!」
「これは範囲魔法じゃない!拘束スキル!?」
(バフで固めた防御力も動けなければただのサンドバッグよ)
「そこだあああ!まとめて食らえ!」
ルーナが叫びながら、吸い込まれている二人めがけて「シールドアックス」を振り下ろす。
「『破壊の剛断』!」
「させるか!『アクセルガード』」
ルーナの動きに《バラスト》のガーディアンが反応し味方をかばうシールダースキルを発動した。
(それも読めてるわ)
「インターセプト!」
読んでいたメイはすかさず、敵の攻撃を引きつけるシールダースキルを発動、ガーディアンの『アクセルガード』はパラディンたちに到達する途中、メイのところで中断してしまった。
「くそ、間に合わない!」
ガーディアンが叫んだ次の瞬間、ルーナの、大地を揺らすほどの回転を伴ったウォリアー範囲攻撃スキル『破壊の剛断』が炸裂する。
[会心の一撃!]
王道のパラディンといえど、その防御力を凌駕するルーナの超火力攻撃が背後から直撃してはひとたまりもない。二人のHPバーは一気にゼロになり、光の粒子となって消滅した。
「な、なんて火力だ!?」
「一瞬で前衛が二人も!?」
フィールドは驚愕に包まれる。セオリーを無視した《クローバー》の連携が、王道のパーティーを圧倒していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます