第四章 GVG予選

第11話 「全員盾」パーティー

 GVG予選当日。《アストラル・シティ》の中心部にある巨大なコロシアムは、朝早くから数え切れないほどのプレイヤーでごった返していた。参加登録を済ませたギルドメンバーたちが、それぞれ思い思いの装備に身を包み、闘志をむき出しにしている。

「うっわー!人多すぎ!」

 アリスが目を丸くする。普段の広場の賑わいとは比べ物にならない熱気だ。

「みんな気合入ってるね!あれが大手ギルド《蒼天の剣》のリーダーかな?超強そう!」

 ルーナが指さす先には、進化ジョブである《ガーディアン》のプレートアーマーに身を包んだ、いかにも強そうな男が立っている。

(みんな王道の進化ジョブを選んでる。私たちみたいな複合ジョブはほとんどいないんだろうな)

 メイはクールに分析する。そしてアイテムボックスから小盾を取り出し、右手の甲に装着する。ルーナも、フィリアも、アリスも、それぞれのメイン武器と共に小盾を装備する。

「……ん?」

「あれ、見てみろよ」

 途端、周囲のプレイヤーたちの視線が《クローバー》の四人に集まる。ざわめきが起こる。

「おいおい、あのウィザードとプリースト、盾持ってないか?」

「ウォリアーも斧と盾の両方装備してるぞ!どうなってんだ?」

「え、モンクまで盾装備してるんだけど!あれ、同時装備不可なはずじゃ……バグか!?」

《クローバー》の面々は周囲の視線を浴びながらもワイワイと楽しげだ。

「見て見て!みんなこっち見てるー!」

 アリスが嬉しそうに手を振る。

「私たち、やっぱ異質なんだね!」ルーナが笑う。

「注目の的ですね……!」

 フィリアは少し恥ずかしそうだが嬉しそうだ。

(よしよし、狙い通り。この異質さが後の展開で効いてくる)

 メイは内心ほくそ笑む。セカンダリージョブは公開されているが、称号による装備枠増加は知られていない。ルール違反ではないがシステムをハックしたようなこのスタイルは、他のギルドにとって未知数だ。

「予選のルールが発表されたみたい」

 メイが冷静にビジョンを指し示す。


[予選課題:モンスターの群れからNPCを護衛し、ゴールへ導け]


「護衛クエストか!私たち向きじゃない?」

 ルーナが叫ぶ。

「確かに!みんな防御スキルあるし、メイちゃんの回避も活かせる!」

 アリスも賛成する。

「私たちだけの『全員盾』戦法がどこまで通用するか……楽しみになってきたわね」

 メイの言葉に三人は大きく頷く。

「「「おー!」」」

 他のガチ勢たちが闘志を燃やすクローバーの四人は、まるでピクニック気分で予選エリアへと向かっていった。

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