第6話 隠された称号とチート級装備枠

 勝利の余韻の中、システムウィンドウが開く。クリア報酬のアイテムが並ぶ中、見慣れないメッセージが表示される。


[称号盾の先駆者 Lv1を獲得しました!]


「え、称号?」

 全員のウィンドウに同じメッセージが表示されている。


[《盾の先駆者 Lv1》

 効果:HP+100、防御力+100(固定値)

 条件:盾スキルのみを使用してクリア]


「「「おぉぉぉ!」」」

 地味だが破格の性能だった。このゲームではステータスポイントは貴重だし、初期レベル帯ではHP100はかなりのアドバンテージになる。それが全員に付与されるのだ。

「これヤバくない?固定値アップってことは、レベル低いうちはめっちゃ強いやつじゃん!」

 アリスが興奮気味に言う。

「やったぁ!レベルアップ以外で防御力上がったの初めてかも!」

 フィリアも嬉しそうだ。

「しかも、これだけじゃないみたいよ」

 メイが冷静に、別のメッセージウィンドウを指し示す。


[エクストラ称号盾の探求者Ex Lv1を獲得しました!]


[《盾の探求者Ex Lv1》

 効果:装備できる盾+1

 条件:防御力10以下の盾を装備し、盾スキルのみを使用してノーダメージでクリア]


 今度こそ、四人は声を失った。そして数秒後、リビングルームにいた時と同じ、悪だくみをしたような笑顔が浮かんだ。

「装備できる盾……プラスいち?」

 ルーナが呟く。

「えーっと……つまり、今装備してる小盾ともう一枚、盾を装備できるってこと?」

 アリスが確認する。

「……みたいね。盾スロットが増えているわ」

 装備ウィンドウを開いたメイが静かに答える。

「ヤバい!これ、超ヤバくない!?」

 ルーナが叫ぶ。

「盾を二枚……?つまり、物理的な両手盾ってこと?」

 アリスの目がメガネの奥でギラリと光る。

「私たちセカンダリージョブに全員シールダーを選んだのに、ウィザードもプリーストもウォリアーもモンクも、メイン武器の装備制限で盾が持てなかった……」

「でも、この称号があれば、メイン武器を装備したまま、増えた盾スロットに盾を装備できるってこと!?」

 フィリアが興奮で早口になる。

(これは……ゲームバランス崩壊級のチート称号かも)

 メイの心の声はかつてないほど冷静に、そして確信に満ちていた。

「この称号、秘密にしよう!」

 ルーナの提案に全員が頷く。

「他のタンク系称号も集めれば全員硬いパーティーの完成じゃん!」

「いーねー!じゃあ、次のダンジョン行っちゃう?」

 ワイワイと盛り上がる四人。

 こうして《クローバー》はセカンダリージョブの実装という波に乗り、通常ではあり得ない「全員が超硬い」パーティーへと変貌を遂げ始めた。この世界に新たな「壁」が爆誕した瞬間だった。

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