第2話 第5隊長 ジャスティリロ

彼女は遠くに光る爆発を見届けた後踵を返して「空中庭園」に向かった。風になびく長い派手なピンクの髪は誰が見ても一目で彼女だとわかるだろう。


「ECMはまだ作動中...ガベル隊はこのまま予定通りに正面から庭園に侵入、ブレイズ、水晶はどれくらい成長した?」

「基礎部分を残して中心から半径10Mほどです」

「そう、じゃあプラネット隊も予定通り天井からブレイズが作った水晶の落とし穴から侵入を...」

「第5隊長に報告、イプシロン6が負傷しました」

「8と9、は6を連れて撤退して。」


彼女は「空中庭園」の正面に立った。その両側には17人のレールガンを構えた隊員が照準を合わせている。


「ハッキングによる開閉は不可能、物理的に破壊する、ブレイズ!準備は?」

「いつでも大丈夫です」


彼女は拳を握りしめた。そして背中の彼女のシールドがついたブースターの出力を上げた。


「時刻合わせ、3…2…1…0!!!!」


彼女は超高速で突撃し、扉を殴り壊した。


バゴォン!!!!

ガシャァン!!


二つの異なる音が同時に「空中庭園」にこだました。


──────────────────────────────


「空中庭園」の内部は文字通り庭園である。人工的に再現された青空の下には川と湖の周りには数々の植物が植えられ、森や小さな平原が再現され、そして多くの場所には野菜や果物が育てられている。中央にはすべてを管理する指令塔があり、職員の多くはそこで生活し、管理している。


しかし、今やその内部は悲惨なものだった。管理していた職員は殺され、辺りには血が散乱し、育ち切っていない食物を食べながら辺りを徘徊するテロリスト達は庭園を地獄に作り替えた。2、30人ほどいる彼らは皆バラバラに行動していた。生き残った職員は縛られ、恐怖で震えあがっていた。何人かは怪我をして血が止まっておらず、すぐにでも治療が必要な状況だった。


「通信はまだ治らないのか?」

「みたいだ、すぐ外のやつにまで届かないとなると誰か外に一度出たほうがいい」

「この汚染の中か?…はあ...マイトロジーは?」

「後で戻るって言って飛んでってそれきりだ」

「…なあ、これからどうするんだ?こいつを落とすにしてもシステムにいまだにアクセスするのにてこずってるようじゃ間に合わないんじゃ...」

「そのために人質を最低限取っているんだろう...殺しすぎたのはまちがい...」



バゴォン!!!!

ガシャァン!!



「なん」

「なにがおき」



言い終わる直前に2本の剣が彼らを両断した。


国連警察特務機動隊カンパニュラ隊第5部隊隊長ジャスティリロ


彼女の武器は2つのブースターとレーザー砲がついた巨大な盾、そしてそれを鞘にした2本の剣。彼女は圧倒的なスピードでテロリストを切り刻んでいった。その場にいた十数人が一瞬で刻まれ、残った数人は茫然とした。血まみれになった彼女は一瞬死体を見た後、無表情で残りのテロリストに顔を向けた。


「ひっひぃぃ!!!、動くんじゃねぇ!!」


テロリストの一人が叫んだ。そいつはそばにいた職員の頭に銃を向け汚く叫んだ。


「す、少しでもうごいたらこ、こいつの命はねえぞ!!」

「…3秒以内に武器を置け、裁判は受けさせる」

「きこえねえのか?!」


彼女の気迫に完全に折れた何人かは武器を捨ててその場にしゃがみこんだ。


「!て、てめえら...!ぶっ殺してや」


言い終わる直前に彼の頭は吹き飛んだ。空中に待機していた彼女の部下は冷静にレールガンをリロードした。


辺りに敵対勢力はもういなかった。彼女は部下たちに職員たちの治療と医療隊の要請を命じ、ブレイズのもとへ向かった。


「ブレイズくんはどうしてるかな?」


──────────────────────────────


「…破壊して!」


10人の隊員が空中で円の陣形を組み、同時に天井を狙撃した。均等に破壊された水晶化した天井は巨大な破片となって落下し、彼らはそれを盾にするように突入した。


施設の外を警備していた二人のテロリストはすぐさま空中に向かって発砲したが、ブレイズが操る水晶に弾丸があたり、そしてその弾丸はすぐさま水晶となった。ブレイズは水晶を蹴って速攻で地面に降り立ち目の前の二人をつかんだ。


「なっ...魔法だと...」

「カンパニュラ隊の魔法使いは1と4だけでは...」


バキバキバキという音とともに二人は水晶と化した。ブレイズは次に建物に触れた。建物はあっというまに水晶に代わっていき、庭園の中央には水晶の巨大と化した。彼はそのまま施設の壁を壊して内部に足を踏み入れた。


あらゆるものがその形を保ったまま水晶と化していた。血だまり、死体、生きている人間、壊れた壁に飲みかけのカップ...

彼はおびえた形の人間を見つけると、手をかざした。水晶は一瞬で生きた人間に戻り、混乱する職員を彼はなだめた。


「僕はカンパニュラ隊第6部隊隊長、ブレイズ。安心して、もう大丈夫だよ」


その声で彼はようやく落ち着き、膝から崩れ落ちた。ブレイズは部下に人の形をしたものはすべて集めるように命じた。


──────────────────────────────


暫くして、4体の職員の水晶と8体のテロリストの水晶が運ばれた。ブレイズは職員の水晶を元に戻した。そして次に集められたテロリストたちの水晶を首から上だけ解除した。


「…?!な、おい、どうなってるんだ?!」

「だ、だれか!!おい...」

「う、うご、うごかな...」

「…君たちはまだ五体満足で生きているよ」


彼は水晶と化したライフルを手に取って彼らの前に見せた。


「これから君たちの魔法を解除するけど少しでも暴れたら」


ライフルを真っ二つにへし折り、そして魔法を解除した。断面からパーツがボロボロと崩れ落ち、彼らは恐怖した。


「…だから、やめてね?」





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