青い楽園の守護者達
サメサメ伯爵
第1話 カンパニュラ隊
4つの世界がつながって1000年の時がながれた。「4人のベルバーグ博士事件」以来、4つの世界は最低限の交流を行い、干渉を避けて世界は続いていた。しかし500年前、4つの世界から同時に神の存在を証明する「神器」が発見され、それに伴い超常現象、奇跡を起こす人間が発生した。4大神話、ギリシャ神話、北欧神話、エジプト神話、インド神話が存在したという証明、しかし神の存在は逆に特定の神の存在そのものの否定に等しく、大戦争が起きた。
様々なカルトの乱立、宗教テロの勃発、進化論の否定、あらゆる動乱は500年という人類が社会を維持不可能直前の状態になるまで続いた。
「雪」が降るその時まで。
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太陽が落ち、汚染された雲と夜空の隙間から満月の光辛うじて見える深夜。一人の男がスラスターと強化外装とゴーグルを身に着け、雲の中に包まれ空に浮かぶゴツゴツとした巨大な球体の「空中庭園」の周りを飛行していた。手にはマシンガン、外装の周囲には予備の弾薬と小型のミサイルを装備している。
占拠したはいいが国連側は何も返答に答えやしないか…
男は周囲を索敵しながら思案していた。空気汚染は遥か上空では軽微であったがそれでも雲には有害物質が含まれており、中にはレーダーに不具合を生じさせる程の濃密さだった。
チッ...使えんなこれでは
飛行を停止し、「空中庭園」の作業用足場の上に立ち、内部の本体と連絡を試みた。
「汚染雲群が濃くて索敵は不可能だ、対応を求む」
無線からはザザーという雑音だけが帰ってきて彼は肩をすくめた。この雲が過ぎ去るまで少し休もう、そう彼は思い外の流れていく雲を眺めていた。突然レーダーに反応が発生した。不具合だと思いつつ提示された雲と雲の隙間を凝らしてみると、何かの影が一瞬通り過ぎた。
なんだ?
そう思い彼はゴーグルのレンズをズームさせその周辺を凝視した。影は「空中庭園」にとりつき、ぴたりと止まった。それはよく見ると人影であった。
彼と同じような強化外装、、背中から翼のように稼働する二つのスラスター、そしてペストマスクのような仮面をかぶったそれを彼は知っていた。
国連の特務隊...!来やがったか...
彼は物陰に息をひそめながら索敵を再開した。いまだに雲は晴れなかったが、もう一人、誰かが近づいてきているのはすぐに分かった。
くそっ...気づかれたか...?
もしかしたら自分に気づいたのではなく出入口に向かっているのかもしれない、もしくは仲間と合流しようとしているのかもしれない、もしくはそいつも雲のせいで回りがわからないのかもしれない。けれど彼は命のやり取りに慣れていないただの人間であった。
「はあっ...はあっ...」
近づいてくる、その恐怖に耐えきれず彼は飛び出した。
「ああああああ!!!!!」
マシンガンを乱射しながらそいつに突撃すると、特務隊の隊員は突然の襲撃に狼狽え、とっさに防御をするために両手を前にかざした。二人の距離が0になり、男は隊員を思い切り殴り飛ばし、ミサイルを撃ち込んだ。強化外装で強化されたパンチは隊員をはるか遠くに飛ばした
ドオン
と大きな音があたりに響いたき、男はそのまま「空中庭園」の周りを飛び急いで出入口に向かった。隊員はそのまま地面に落下していったが次の瞬間別の隊員が彼を抱え瞬時に離れていった。そしてまた別の2人の隊員の影が男を高速で追跡した。
「聞こえるか!!本部!!国連の特務警察隊が来やがった!!部隊の特定は未だ不可能だ!!応答しろ!!」
叫び終わるやいなや甲高い銃声とともに一筋の光が男の片腕を貫いた。
「ごおあっ!!!?」
後ろを振り返るとスラスターを全開に吹かした二人組が高速で迫ってきていた。片手には四角いレールガンを持っていた。
2発の光弾が背中のスラスターを打ち抜いたとき、男は姿勢を崩した。上下の感覚が狂いや見込みにスラスターを吹かすと「空中庭園」の壁に激突し、壁にめり込んだ。外装が曲がり、身動きが取れず二人の隊員は壁にめり込んだ彼に向かいレールガンを突き付けた。
彼は終わりだと悟り、小型のミサイルの起爆スイッチを押した。
「我々は神の御子!!ゼウスの子孫なり!!わが魂は不浄なる大地を...!」
言い終わる前に新たな影が高速で空中から猛禽類のように飛び込み、めり込んだ男をつかみそのまま地面に向けてぶん投げた。
…こ、こいつは...
死の間際、世界がゆっくり見える中で男が最後に見たのは、地面をたたき割るガベルの紋章
「カンパニュラ...隊」
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