第5話
サキュバスかぁ。ほんとにいるんかよ……言われてみればそう見えなくもないが……
“サキュバスの詳細はこちらへ♡”と誘導されたリンクを踏めば、そこには本当かどうか分からないサキュバスの情報が並ぶ。
イメージと似ていて、どうやらサキュバスは人間の体内に巡る生気や魔素を吸い取り、それを栄養にして生きるらしい。
やっぱり悪魔には魔力ってやつがあるのか。
食事は人間から摂取できるそれらだけなようで、不足すると下腹部にある紋章──淫紋が強く光りだす。
さっき見たやつだな。
光が濃ければ濃いほど飢餓状態にあって……うわっ、ほとんどMAX値じゃん。このまま放置すれば、魔力が底をつきて最悪死んでしまうらしい。
マジか、どうすればいいんだ。
読み進めていけばいくほど、使えそうなサキュバスの情報が得られる。本当だとは限らないけど、なんの情報もない今、これを頼りにするしかない。
触れるだけでも少しは生気を摂取できるのか……あぁ、だから寝る前。こいつは、俺の生気を求めていたのか。
「ミカ。ミカ。起きられるか」
声をかければ唸り、長い睫毛を震わせる。
「飯やるから」
やっぱり空腹なんだろう。飯というワードに反応したのか、意識もあやふやそうに体を起こす。
死なれちゃ流石にまずいからな。悪魔の埋葬の仕方とか分からねぇし。
白く小さな手を取って、画像のように手を合わせて指を絡めてみた。
変わらず冷たい手。これで治ればいいんだが……なにも変わる様子はない。
ほんとうにこれだけでいいのか?もっと何かを念じたり、それこそ魔法を唱えたり。
繋げた左手はそのままに右手でスマホを操作して、それらしい解決策を探す。
そうしていると。
「……少し温かくなったか?」
俺の体温が移っただけかもしれないが、冷たかった手がじんわり温かくなっている気がした。
よく見ると心なしか、その呼吸も落ち着いている気がする。
これは……
服をめくってみれば、さっきよりも僅かに、淫紋が薄くなっていた。
本当にこれだけでいいのか……
生気。それは取られすぎると人間は死ぬらしいが、触れ合う程度なら影響はないらしい。
これがこいつの飯だったのか。
悪魔は魔力を蓄え体を動かす。その素になるのが、人間に巡る魔素や生気。
なるほどなぁ。ファンタジーなこともあるもんだ。
「元気になったか?」
「ん……もっと」
「こうしたらもっと良くなるかな」
スマホを置いて右手も絡ませる。
俺の胸に預けた悪魔は生きるのにだいぶ必死なようで、スーハーと俺の生気を吸い取っているらしかった。
仕方ねぇ。満足するまで今日は一晩、このままでいさせてやるか。
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