綺麗な光景をあなたと

 閉店時間となり、全ての客を見送った後、あざらしは食器を洗い、白熊がテーブルを拭いたり床を掃いたりしている。


 今日もたくさんの人が訪れた。


 海沿いにある『おにぎりの白熊堂』は、おにぎりと読書を楽しめる店であり、あざらしの提案で交流ノートを置いている。閉店作業が終わった後、白熊と二人でそのノートを見るのがあざらしの楽しみであった。

 洗う皿も残り少なく、後は拭いて棚に仕舞うだけ。もう少しだ、と無意識に鼻唄を歌っていると「あざらし君」と白熊に呼ばれる。


「どうしました?」

「いいもの見せてあげる、おいで」


 洗い場から外へと連れ出される。いつもなら夜の海がそこにあるだけだが、今夜は一味違うらしい。


「……雪、ですね」

「今年度初じゃない?」


 音もなく降り注ぐ無数の雪が、夜の海へと消えていく。──ふいに、冷えきったあざらしの指に温もりが宿った。


「後であったかいほうじ茶飲もうね」


 温もりに指を絡めながら、あざらしは頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る