妹と婚約者に家を追い出されたので辺境で【賢者の石】を錬成します。ついでに復讐もするかもしれませんが

砂礫零

第1話

 私が階段から突き落とされたのは 【賢者の石】 のレシピをついに完成させた直後のことだった。完成はしたものの問題点は残っており、どうしようかと頭を悩ませながら部屋から出たところだったのだ。

 背中を押す手のかたち。踏みとどまろうとしてバランスを崩す、私の身体。手だけではなくブレスレットの硬い感触があったことで、犯人は異母妹いもうとのエメラインと確定した。大きな真珠と小粒のダイヤを交互に繋げたブレスレットは私の母の形見だったが、エメラインに奪われて以来、いつも彼女の手首にある…… 犯行時にも外さないなんて。バカな子。

 とっさに頭部をかばって身体を丸め、私は我が伯爵家のエントランス・ホールへと転げていった。

 身体じゅうが痛い ―― 骨を折ったのかしら。幸い、意識はハッキリしているけれど。


「ああ! おねえさま! 大変!」


 異母妹いもうとが私の腕をつかむ。痛い。

 私の口からうめき声が漏れた。

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