第44話 かみかぜ出撃!

特調チームと合流してから舞鶴基地に行くという大泉さんと別れ、オレとハナちゃんとちくは一足先に京都に戻った。


そして約束の2月14日。

オレたちは再び、天の原から大空洞に向かった。


地底湖にはすでに「かみかぜ」が停泊しており、驚いたことに、地底湖のある大空洞ではWiFiが使用可能になっていた。


びっくりしていたら、

「日々進歩してるんだよ」

と若井さんが笑っていた。


全員がブリッジに揃ったところで、大泉さんから今回の作戦が説明された。

「まず、今回の我々の出撃の目的をみんなと共有しておきたい」

「出撃・・・」

思わずオレが呟く。


「ん?」

と言って振り向く若井さんに、

「あ、すいません。大泉さんや中野艦長は、これまで出航とか潜航って言ってた気がしたので、出撃と聞いてちょっとびっくりしました」

と言うと、


「うん。私も今回は意識して出撃と言った。東亜共和国は既に24機の高性能爆薬を積んだ小型水中ドローンを日本中の地下水脈に侵入させた。それが爆発する前に、周級2番艦の生体センサーを無害化する。そのために、今回はこちらから積極的に仕掛ける、そのための出撃だ」

と大泉さんが力強く説明してくれた。


「まず、水中ドローンの最終目的地だが、未だわかっていない。劉公使のパソコンから転送されてきたデータは今でも特調チームが解析中だ。データはUSBが挿さっている限りその中身を送り続けるので、気付かれるまで、あるいはUSBが抜かれるまでが勝負だ」


「三角錐への攻撃は何としても避けなくてはならないので、ボルデメでもビューティペアが監視を続けている」


特調のホワイトハッカーとおぼしき人が手を挙げて、

「もし水中ドローンの起爆が時限式でなく、生体センサーからの指令のみであるなら、ジャミングで爆破指令を受信させないって手もありますが」

と言った。


「それも考えました。ただ、それだと生体センサーに使われている猫への影響を排除できない可能性がある」

と大泉さんが答えると、ちくが、それは困るとでも言うように、ふぅっと唸る。


大泉さんが戦術卓の上のちくを見て、

「仮に防げたとしても、ちくわちゃんは、それだけじゃ満足できないようだ。プロジェクト・コンヤイで使用されている3匹の猫を救出したいらしい」


「え! どうやって!」

「いくら何でもそれは・・・」

「生体センサー、ってか猫は艦首のソナー室にいるんですよね? ってことは救出するには周級に入らなくちゃなりませんよ」

「海底に隠れてる敵潜への進入はさすがに無理では」

乗組員から次々に意見が出る。


「なら浮上させればいいのでは?」

中野艦長が静かに言う。


「またスクリュー狙うってか?」

ちくを見ながら若井さんが言う。


「でも、前回は浸水したから浮上してきましたけど、スクリューを破壊しただけでは、動けなくはなるけど浮上してこない可能性もあるのでは? 原潜だし」

プレーンズマンの藤本さんだ。

確かに浮上してこなかったら、潜入のしようもない。


その時、ブリッジのスピーカーにかけるの声が響く。

「「かみかぜ」、ボルデメかけるです。イロハより入電、周級2番艦検知! 攻撃システムリンク開始します」

「ボルデメ、艦長中野だ。リンク開始を許可する」


「浮上はしてくるよ」

大泉さんが自陣ありげに微笑みながら言う。

「いや、させてやる! 我々は、周級2番艦の制圧、プロジェクト・コンヤイの救出、そして東亜共和国大使館が暗躍した証拠のリーク、この3つを同時に行う。名付けて「キャリコ作戦」だ」


〇如意ヶ岳直下の大空洞

劉公使のパソコンから転送されてくるデータを解析している特調のメンバー。


「いいか、最優先は水中ドローンの現在地を割り出すことだ! どこかに24機の発信周波数の情報もあるはずだ!」


「了解です。しかし、出てくる出てくる・・・。東亜本国と水中ドローン攻撃計画のやり取りのメールやら極秘扱いの公電、シルア連邦の原潜の情報とかまでありますよ!」

「何でシルアの情報まで?」

「まぁ、同盟結んでるっていっても、信じてない証拠だろ。いざっていうときにはその情報を流して他の国に乗り換えるとかな」


その時メンバーの一人が興奮したように立ちあがる!

「あった! ありましたよ、主任、これです! 24機の周波数情報と最終到達地点の座標、見つけました!」

「よし、でかした! 間違いないか?」

「ちょっと待ってくださいね。このデータ、地図情報と重ねてみます」


見つけた情報を地図情報に入力する特調のメンバー。

大空洞の中にカタカタカタと響くキーボードの音。

「これで・・・24機分、入力完了」

そういってリターンキーを押す。覗き込む周りのメンバーたち。

日本地図の上を点滅しながら24個の黄色い点が移動を始める!


「ビンゴ!」

ガッツポーズの隊員。


「この赤い点が最終到達地点、つまり爆破地点かと思われます!」

「よし、そのデータ、すぐにボルデメに送れ! 周波数さえわかればこっちのもんだ。追跡はボルデメに任せる。オレたちは引き続き、全世界に向けてリークするデータの収集だ! 大使館も東亜本国も丸裸にするぞ!

「おっしゃあ!」

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