チートはございませんが…

文ノ遊ト

帰り道

 学校が終わり、

 ただ帰宅のためにあるいていた。


 「はぁ〜」


 何があったわけでもないがため息が出る。

 たぶん、何もないから出ている。

 

 もし自分がイケメンで、スポーツ万能であれば、違ったとは思う。

 だけど…それは自分ではなかった。

 自分の弟だった。

 

 しかも性格までいい…

 いい弟だ…可愛いのだ…仲も悪くない…

 ただ…

 

 比較対象が近すぎたのだろう。

 常に比べてしまった。

 そんな事をしているから…

 自身が無力に感じるのだろう。


 そうすると、毎日がただ過ぎゆくだけ…

 そんな気分になる。



 「あなた、料理好きでしょ?そっちの道に進んだら?応援するわよ?」

 

 夫婦共働きで大変そうだからやりだしただけだ。

 忙しいのは見ているし、知っている。

 ただ…


 「料理は別に好きじゃない。美味しって言われるのはうれしいしけど…、好きなことではないよ。

 今は特に…好きなものは…何かやりたいこと…見つかったら言うよ…。」


 進路の話だ。

 大学はお金係るし、働くつもりだ。

 推薦もない。


 噛み合っていない気がしてくる…

 

 どうしたらいいのだろうか?

 わからない。


 これが普通か?

 俺の見聞きする青春は、もっと明るいものだ。

 楽しいものだ。

 楽しそうと言ってもいい。

 近くで見ている、これは間違いない。


 友人達も、輝いている。

 なんか、キラキラしている…

 まあ、ギラギラしてもいる。


 ちなみにボッチではない、と自分では思う。

 だから、聞いているし知っている。

 

 ただ…、俺にとっては遠いだけ。

 ただただ遠くて、現実味がない。


 気にかけてはいるつもりだが…

 これだ!と言うものが見つからない。


 自分なりだが、努力はしているつもりだ。

 誇れる程ではないけど。

 時間は有限、その中でやりくりしてしている。

 更にとなるとちょっとマンガや小説、アニメ、趣味の時間も欲しい。

 大切だと思う。

 う〜ん…考えすぎてなんか気持ち悪い…。







 だからだろうか?

 それにきづいたのは?


 何気無い帰り道、

 見たことのある景色の中の違和感。


 見間違いか?と、目をこすり、他と見比べても変わらない。

 聞いたことも、見たこともない現象。


 有限である時間をただ無作為に見つめるだけに使ってしまう、明らかな不思議。




 ん?え?…

 おかしいよな…あそこだけ…

 いつもそうか?…ちがうよな…

 多分…

 

 

 鳥肌立つとか、ゾッとするとかはない。

 悪いもんではないか?

 

 影が濃いだけだ。

 街灯の影、1メートルくらい。

 そこだけ向こう側が見えない。

 周りまだ明るいが、そこだけ真っ暗だ。

 なんだあれ?


 他の街灯のは普通…アレだけだ…

 写メか?こいうときは!

 

 え?


 写ってないな…

 カメラには普通の影しか写ってない…

 目には見える。


 奥行きがあると言うか…、空間あると言うか…?

 トリックアート!

 ではないな…蠢いている…音はしてないけど…

 

 

 


 



 何も考えていなかった、ただただ…指を伸ばしただけ。

 不味いと思った時には終わっていた。



 






 その日、

 双間 虎「そうま たいが」(17才)

 消息不明となった。


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