第3話 距離の温度
「そろそろ帰るね」
ゲームが一段落し、私は立ち上がった。
「えーまだあそぶのにー!」
ひなたとまひるが同時に床に突っ伏す。
遼が二人の頭を軽くぽんぽんと押す。
「今日はここまで。ほら、靴」
雑に指示しながら、ちゃんと玄関に持っていくあたり、妙に面倒見がいい。
私は遼に軽く会釈する。
「今日はありがとう」
「ども」
それだけで会話が終わる。
必要最低限だけ。余計な飾りはない。
ひなたとまひるは手をつないで廊下に飛び出した。
「またね、とーかちゃん!」
「またあそぼー!!」
「うん、またね」
廊下の端で、遼がひなたの後頭部を軽く支えて方向転換させた。
その仕草は丁寧というより、慣れている感じ。
「走るなよ。こけるから」
「はーい!」
ひなたが返事し、まひるも真似して手を挙げる。
ふざけながら去っていく二人の背中を見送ると、遼が短く言った。
「気をつけて帰れよ」
「いや、部屋隣だし」
それだけ。
(……ほんと、淡々としてる)
でも、さっきゲーム中に二人の絆を見たときの
遼の横顔が、ちらっと脳裏に浮かんだ。
私の知っている男子とは、少し違う。
「じゃ」
「うん」
ドアを閉めると、急に静かになった。
冷えた空気とうるささの余韻だけが残る。
(変な人だな……)
嫌いとか好きとか、そんなのじゃなくて。
ただ、なんとなく気になる、くらい。
その程度。
それ以上でも以下でもない……はず。
⸻
翌朝。教室。
「はい透花、おは〜」
澪が肘を机に乗せて、にやりとしていた。
「なに」
「昨日、朝倉と一緒に歩いてたよね?」
「ひなたとまひるがいて、そのついで」
「ふーん」
澪はわざとらしく頷く。
「ついでの割には、楽しそうだったじゃん」
「別に」
「なんか雰囲気よかったよ? なんかさ……落ち着いてた」
落ち着いてた、か。
私は首をかしげる。
「あの人、なんか変じゃない?」
「変?」
「うん。怒りもしないし、喜びもしないし」
「へぇ。じゃあ、気になる人?」
「違うって言ってるでしょ」
即答した。
でも、澪は笑ってこちらを見ている。
「ふーん」
その顔が気に入らなくて、私はペンを握り直した。
(気になんて、してない)
ただ、なんか。
少しだけ気が散るだけ。
ほんとに、それだけ。
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