第9話:遊び人男子の指南

タクヤは悩んでいた。ケイコに「告白は宿題」と言われてから、どう言葉を選べばいいのか分からない。そこで、大学でも有名な遊び人男子・リョウに相談することにした。


「なあリョウ、俺、ケイコに告白しようと思ってるんだけど、どう言えばいいんだ?」


リョウはニヤリと笑って肩を組む。ポケットから煙草を取り出し、火もつけずに指で弄びながら言った。


「お前、真面目すぎるんだよ。女子はな、言葉より雰囲気だ。俺なんか、この前も『一緒にいると楽しいから、これからも隣にいてほしい』って自然に言ったら、秒でOKもらったしな」


タクヤは目を丸くする。


「そんなこと、急に言えるかよ……」


リョウは余裕の笑みを浮かべ、椅子の背にもたれながら続ける。


「だから練習しろ!鏡の前で笑顔作って、声のトーンを下げて、落ち着いて言うんだ。女子は“自信”に弱い。お前は童貞力が強すぎて自信ゼロだから、そこを補えばいい」


タクヤはメモ帳を取り出し、必死に書き込む。


「声のトーン……笑顔……自信……」


リョウは肩をすくめて笑った。


「お前、まるで受験勉強みたいだな。でもまあ、それがお前らしいか」


もっともらしくは言ったが、人に聞く時点でたぶんダメだろうなとリョウは予感していた。


失敗してから何を学ぶかなんだけどな……。遊び人ではあったが、恋愛マスターのリョウは恋愛には厳しい態度で臨んでいた。しかし童貞のタクヤには、わかるはずもなかった。



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