《現地取材記録:亀蛇神社》
本日の報告(2025/11/11 19:56)
祖父の地図にある「林郷」を確認するため、呉市の亀蛇神社を訪れた。
社務所で神主の話を聞き、古文書や口伝を整理する。
---
■呉の地形と神の戦い
呉の盆地は、山と海に囲まれた土地である。
伝承によれば、この地はかつて**山の神(ヤマサマ)と海の神(ウミサマ)**が争って開かれた場所だという。
戦いの記録は、実際の戦争史とも重なる。
軍都としての呉の栄華、戦時中の軍需拡大、裏社会の抗争――
これらは、伝承上の神々の争いの“現代化”として語られることがある。
祖父はこの地形と歴史、そして神話的争いを結び付けていた。
海=外からの侵入者、ウミサマ
山=土地を守る古の支配者、ヤマサマ
盆地=両者の争いが集中する“血の通り道”
祖父の手稿には、《呉の血は濃い。土地はそれを吸い続けてきた》と記されている。
---
■林姓と山の神の関係
古い地図に刻まれた「林郷」は、山の神に仕え山林を管理していた一族の拠点である。
祖父は、この林姓が山の神と契約を交わして土地を守り、代償として血脈をもって支払う存在だと推測していた。
《山を切り開く代償、血脈を以て支払う。契約の担い手=林》
《犯行は人によるもの、動機は神によるもの。互いを利用している》
これらの走り書きは、祖父が林姓連続殺人事件を単なる人間の犯罪ではなく、「神との関わり」という構造で理解していたことを示している。
---
■呉に伝わる怪異
神主からの話、ならびに地元の口伝では、ヤマサマの怒りや争いの痕跡として怪異現象が伝えられている。
夜になると、盆地の山裾や林道に黒い人影のようなものが現れることがある。
地元では「土地に背く者、契約を破った者の視界を奪い、山に閉じ込める」と語られる。
林姓連続殺人事件の被害者の目をくり抜かれたという話は、この伝承と重ね合わせられて語られることがある。
神主も、現実に人ならざるものが事件を起こしたとは考えていない。しかし、恐怖や信仰が人間の行動を動かす構造を、長年の経験から理解している。
---
■取材メモのまとめ
呉の盆地は山と海の神の争いで開かれた土地。
林姓は山の神に従い土地を守る代償として血脈を担っていた可能性。
事件に関わる土地や林姓には、古くからの“契約”や“恐怖”の構造が残る。
地元の怪異(黒い人影、夜の異変)も、土地神と人間の関わりを反映している。
林さん連続殺人事件は、祖父の見立てでは単なる人間の犯罪ではなく、土地・神・人間の三者関係による構造犯罪として理解できる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます