第6話

 ──夕飯を食べ終え、自室に戻った飛鳥はベッドに寝転がり、スマートフォンに手を伸ばす。

 新菜になにかメッセージを入れてみようか、と思った瞬間。

 ピコン、とSNSの通知音が鳴る。

 視界には“にいな”という表示が現れた。

 まさか、新菜から先に連絡をいれてくれるとは。驚きから、思わず顔面にスマートフォンを落とした。

 開くと、アイコンはオカメインコだ。

(飼ってるのか?)

 黄色の顔に赤く染まった頬っぺた。つぶらな瞳がこちらを見ている。

 赤く染まった頬っぺたは、新入生代表挨拶の時の新菜を思い起こさせる。

 自然と高鳴る胸の鼓動を感じながらメッセージを見る。

『こんばんは』

 飛鳥はしばらく続きのメッセージを待つ。

 しかし、そわそわと落ち着かない時間を五分程送ってみても、続きのメッセージは入らない。

「え、これだけ?」

 これ以上待ってもメッセージは入らないだろうと判断した飛鳥は、自分のスマートフォンの文字を入力する。

『こんばんは。今日は色々、嫌な思いさせてごめん。これから、よろしく』

 そう送った直後、ピコン、という通知音と共にスタンプが表示された。

 可愛らしいオカメインコのキャラクターが羽を広げている。

 よろしくー、と文字が添えられている。

 きっと、こちらからアクションを起こさなければ、このままで終わると思った飛鳥は、急いでやり取りが続きそうな質問を考える。

「そうだ。“部活は入るの?”っと」

 一分も待たずに『写真部に入ろうと思ってるよ。飛鳥くんは?』と返事が返ってきた。

 ──写真部。聡明な新菜に似合っている気がする。

 飛鳥もスマートフォンで景色をよく撮る。

 とたんに写真部というものに惹かれた。


『俺も写真部に興味あるな。見学、行ってみようかな』

『ホント? じゃあ、一緒に部活見学に行かない?』

『行く!』


           ◇

 

 一週間後。

 二、三年生による部活動紹介のイベントも終わり、今日から新入生の部活動入部の受付が始まった。

 放課後になり、飛鳥は教室を出る。新菜は職員室に寄るとのことで写真部の部室に近い、三階の階段前で待ち合わせることにしたのだ。

 階段前に着くと。飛鳥の見知った顔が立っている。

「あれ? なんで飛鳥がいるの?」

「つかさこそ。まさか、つかさも写真部の見学か? 写真に興味があるようには思えないが」

「失礼だな! っていうか、アンタ、相変わらず思ったこと言うじゃないの」

「人間、そんな簡単に変われないだろ」

「全く……まあ、それがアンタの面白い所でもあるんだけど……」

 つかさは半ば、自分に言い聞かせるように呟いた。

「それはそうと!」

 つかさが勢いよく、自分の右腕を飛鳥の首を回し、顔を近づける。

 そして、こう耳打ちした。

「アンタこそ、部活やるくらいなら勉強時間に充てたほうがマシだ、って言って中学の時だって部活やってなかったじゃない。どうしたのよ? ……って言っても理由は察しがつくけど。新菜ちゃんでしょ?」

 ニヤニヤと笑みを浮かべる。

 どうやら、飛鳥が新菜に恋愛感情を持っていることは見抜かれているらしい。

「だったらなんだよ?」

「別にー?」

「お前こそ、なんで写真部に?」

「新菜ちゃんに見学だけでも一緒に行かない? って誘われて。それに、新菜ちゃんが今まで撮った写真、見せてもらったんだけど、とっても綺麗で素敵なんだよ! 自分も撮ってみたいなって思ったんだよね」

「へえ、そうなんだ」

 

 ──その時。

「あ、二人とも、もう来てたんだ」

 飛鳥達に声を掛けたのは新琉だ。

「新琉も写真部の見学か?」

「うん。写真好きな父の影響で、僕達も写真撮るのが好きなんだ。新菜ちゃんも僕も、写真部に入るつもりでこの学校を選んだんだ。ここの写真部は各コンクールで毎年、優秀な成績を残してるしね」

「へえ、知らなかった」

 ──その時、軽やかな足音が聞こえ、「ごめん、お待たせ!」と新菜が姿を現した。

「写真部ってこっちだよな?」

 四人は二階の突き当りに向かって歩きはじめる。

 


   

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