ニートとロリ魔王のグルメ生活

ナマムギ

プロローグ 劇的な出会い

 机に置いてあるPCの画面を見続けていると、いつのまにか空が明るくなっていた。扉を開け、二階のベランダに入る。


「今日も徹夜したぁ……。してしまった」


 背伸びをし、大きな欠伸をする。すると、心地よい疲労と共に少しの後悔が俺を襲う。俺――松本まつもと浩司こうじは無職だ。


 ポジティブに言い換えれば、自宅警備員。ニート界隈で使われる言葉だ。ニート界隈(笑)って思った人。何事にも界隈はあるものだ。


「もうすぐ同級生は大学を卒業するのか……」


 情けない自分に対して溜息をつくと、口から白いそれが出た。時の流れは早く、季節は冬。


 まだ日が昇り切っていない今は、外に出るだけで手足がかじかむ。現に右足の親指は霜焼けになっており痒い。血流が悪いとそうなるのだ。


 俺の年齢は二十二歳。九月九日に誕生日だったので、一つ年齢を重ねたのだ。しかし、真面に働かず家で寝転がる日々。


 成人になると年金を払わないといけないのだが親に任せている。地元の成人式なんて行ってないし、学歴は中卒止まり。ここまで来ると一つの言葉が思い浮かぶ。


 ――社会不適合者。最近では略して社不と言う。


 つまり俺は社会のお荷物なのだ。仲良くしていた友達にも『成人しているのに実家に住むのは常識がない』と釘を刺された。今はもう、連絡先すら知らない。


 どん底の遥か先にある泥沼に足を踏み入れつつある――いや、既に踏み入っている。学歴もないし興味のあることもない。


 部屋でずっとアニメを見る日々。誰かが言っていたが、人生に劇的な何かを期待してはいけない。多くの人間がグダグダな人生を辿り、死を迎える。それに俺も含まれているのだろう。


 去年までは必死に足掻いていたが、今はもう焦りすらない。白と黒で構成されたモノトーンな人生で終わるのだろう。


 ベランダを出て扉を閉め、そのままとこく。そして目を瞑り、自分の愚かさを恨みながら眠る――筈だった。


「……?」


 何だろう。体が急に重くなった。金縛りのように身動き一つ取れない。一説によるとそれは霊的な現象ではなく、単に疲労から起こるらしい。


 しかし、俺は家でゴロゴロしているだけのニート。疲れる要素が一つもない。起こっている事象を確かめる為に、ゆっくりと瞼を上げる。すると、そこにいたのは――、


「……女の子」


「おい貴様。今の状況を説明してくれ」


「(それはこっちのセリフだ)」


 どこやら湧いたのやら。魔王のをした少女が俺の腹に鎮座していた。


 

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