The First/デスゲーム 第3話
『デスモード』
ナイト。
その姿、格好は変わらない。
体型による外見の違いくらいしかない。
2人のナイト。
手首に白いバングル(腕輪)をしていた。
2人の見た目の一番の違い。
それは、手に持った武器。
大型ハンマーと、刃渡り40センチくらいの大型ナイフ。
ナイト·ハンマー。一気に間合いを詰める。おそろしく素早い動き、まるで、瞬間移動のようだ。両手で持った大型ハンマーを、ハンマー投げのように水平に回転させ、遠心力を利用して振り切る。
ナイト·ナイフはそれを体をかわして、よけた。大型ハンマーは、メタセコイアの巨木を難なく、へし折った。光槌は、太い幹をバターでも溶かすように破壊した。倒れた木は、並木道をふさぐように倒れ、道を挟んで相対する木の枝葉を落としながら、地面に横たわった。
ナイト·ハンマーの猛攻は続く。
遠心力を使った回転攻撃。右上から、左下への振り下ろし、そのまま回転して、次は右下から左上へのアッパー。大型ハンマーが、ナイト·ナイフの胸をかすった。
かすめた傷。傷口から、黒い粒子が湯気のように蒸発している。ナイト特有のダメージ。
ナイト·ハンマーは振り切った大型ハンマーの柄をクルリと回転させ、光槌がついた反対側の柄の部分で、ナイト·ナイフを殴り倒した。
ナイト·ナイフは地面を転がった。ヨロヨロと体を起こし、立ち上がった。
ナイト·ハンマーは深呼吸するように胸を反らせ、肩を落とした。
ナイト·ナイフは考えた。リーチの短いナイフでは、相手の懐に飛び込まねば、その刃は届かない。しかし、遠心力を利用したハンマーの振りは素早く、力強い。勝機を見出すには、アレを使うしかない。
ナイト·ナイフは、ナイフを握ったまま、右手を伸ばし、人差し指でナイト·ハンマーを指差して、言った。
「死ね」
そのワードをきっかけに、ナイト·ナイフの持つ大型ナイフは、柄の部分が自動的にスライドして、わずかに拡張した。拡張した部分には規則的に穴が空いており、穴から、5センチほどの棒が伸びた。下から斜め上に伸びた2本の棒、その先端が緑色に発光した。
『デスモード』
ナイフから合成音声が響いた。
それを見て、ナイト·ハンマーが言った。
「ナイトの強さ。
それは、その人間の意識の集中。
その強さが根源にある。
その度合いの強さこそ、ナイトの強さそのもの。
必殺技を繰り出せば、勝てると踏んだか。
いいだろう、受けて立とう」
ナイト·ハンマーも、ナイト·ナイフに向かって右手を伸ばした。
人差し指でナイト·ナイフを指差し、言った。
「死ね」
ナイト·ハンマーの持つ、大型ハンマーの柄。その中央部分が自動的にスライドしてわずかに拡張した。拡張した部分に空いた規則的な穴。穴から、10センチほどの棒が伸びた。上から斜め下に伸びた2本の棒、その先端が緑色に発光した。
『デスモード』
ハンマーから合成音声が響いた。
ナイト·ナイフの2本の大型ナイフ。緑色の光刃が荒々しく出力を上げた。刃の長さが1.5 倍ほどに伸びている。
ナイト·ハンマーの光槌。こちらも1.5倍ほど大きくなり、荒々しく揺らいでいる。ハンマーの先端が太い杭のように尖った。
デスモード。
必殺技を発動する短時間のみ、スピードとパワーが段違いにアップする。そして、繰り出される技は相手を必ず、死に至らしめる。
ナイト·ナイフが二本のナイフを弧を描くように振り回し始めた。
でたらめな軌道、でたらめな速さ。
描いた弧はやがてナイト·ナイフの周りに緑色の光の球体を作り出した。
『デススタンプ』
ナイト·ハンマーの大型ハンマーから合成音声が響いた。ナイト·ハンマーが跳んだ。そのスピードはまるでケタ違い。上段に振りかぶったハンマー、太い杭のように尖った先端部分の反対側から、推進力のように緑色の光が噴き出している。
『デスボール』
光の球体となったナイト·ナイフ。大型ナイフから合成音声が響いた。光の球体、すさまじいスピードで跳んだ。
次の瞬間、ナイト·ハンマーの大型ハンマーは地面に突き刺さり、クレーターのように周りの地面がえぐれていた。
ナイト·ナイフは、ナイト·ハンマーの背面にいた。2本のナイフを構え、微動だにしない。
ナイト·ハンマーの頭部。首を切断面にずり落ちた。両腕もひじの部分を切断面にして斬られていた。支えを失った体が前のめりに倒れ込む。倒れ込んだ体、あらゆる箇所が切断されている。体はバラバラになりながら、切断面から緑色の炎が上がり、燃え上がった。
激しく燃え上がる。跡形も残らず、全てが消え去った。
初めから、何も無かったかのように。
荒々しく出力が上がっていた、ナイト·ナイフの大型ナイフ、光刃が元の状態に戻っていく。拡張した柄の部分も収縮した。
「ナイトガチャ。
ヤッパ、ぼくの武器、ハズレだよね。
けど、その分、デスボールは最強だ」
ナイト·ナイフは、光刃を収め、柄をマウントに戻した。
チリン、チリン。チリン、チリン。
金属製の手振りベルの音。
軽やかで優しい音色
一定のリズムでベルは鳴る。
その音色が戦いの終わりを告げていた。
第4話へ続く
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