第13話:作戦会議

「これから会議を始めます!」

丸々二日間寝ていたエナは完全復活した。

眼鏡をかけていないのに、眼鏡を上げる仕草をする。

会議のまとめ役になったつもりなのだろう。

「そこ!ヘラヘラしない!」

エナの元気な姿を見て微笑んでいたら注意された。

小学校の頃を思い出すな・・・


「今日は私たち2人の今後について話し合いをします!」

今後か・・・この場所は離れた方がいいな…

いつ奴らの追っ手が来るかわからない。


「その前に…何があったか教えて?」

俺の目をじっと見つめて真面目な顔つきでエナが言う。

俺は黒猫に喰われて世界に転生したこと、死にそうになってクロに力を借りる代わりに体を貸したこと。

今も体の中にクロがいることと、

クロの過去を話した。この世界の魔女と黒猫について…。


「グロざぁぁん、そんなのひどすぎるよ…」

話してる途中からエナが泣きまくって、なだめながらの説明になった。

クロじゃなくてグロになってるし…


「わだじもてづだう…」

涙を拭いながらエナが言う。

「手伝うって…危ないのわかってるか?そもそもクロが言うにはエナも魔女だって話だ」

「私が魔女?」

やっぱりか…本人は気づいてないんじゃないのかなって思っていたのが当たった。


「うん。クロはエナが魔女って言ってた」

「私の髪が白いのと関係があるのかな?」

エナの髪の毛は家に戻ってからも戻らなかった。

真っ黒だった髪の毛が今は真っ白だ。

「たぶん…何で髪の毛が白いのを隠してたんだ?」

「昔お母さんに言われたの。エナの髪の毛は珍しいから隠していなさいって…」

この前の湖で完全に魔法が解けたってことか・・・

エナのお母さんは魔女と何か関係があったのか?

エナは簡単な魔法しか使えないし・・・


「エナの魔女についての話はとりあえず置いておくか・・・」

「わかんないことだらけだもんね…」

俺たち二人であれこれ考えても意味ないしな。


「なぁクロ。エナにもクロの声って聞こえたり出来るか?」

『できなくはないが、お前が魔法で分身体を作ったほうが早いな』

「分身体?俺にも魔法って使えるのか?」

『魔法なんて誰でも使えるぞ。ただ魔力量が人によって違うだけだ』

まじか!俺もかっこいい魔法使えたりできるのか…

クぅー!これこそ異世界転生だよな!


「ファスト・・・なにブツブツ話してにやにやしてるの?」

おっと。今は俺にしかクロの声が聞こえないんだった・・・。


「エナにもクロが魔法を教えてくれるってさ」

エナの顔がパッと明るくなる

「ほんと!私も魔法たくさん使えるの!」

ぴょんぴょん跳ねるエナを見ると、まだ幼い少女だってことを嫌でも思い出す

この小さな少女を俺は危ない旅に連れて行くんだよな・・・

俺が強くならないと…全員守れるくらい


「よし。まずはクロの体を作らないとな!・・・で、どうやるんだ?」

『魔法を想像するだけだ』

「え、それだけ?詠唱とか・・・」

『そんなのいらん。詠唱なんてただの補助輪のようなものだ』

俺は察した。こいつ…教えるの下手だ。大丈夫なのかこれ


その日俺は当たり前のように分身体を作り出すことができなかった。

次の日も次の日も

エナと森の中を移動しながらも俺は必死に一日中分身体を作ることに集中した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

協会本部


「黒猫が出たってホントなのかな?」

「俺もそのうわさ聞いたぜ。スノードロップ王国で出たって皆噂してた」

二人の若い兵士が門の前でヒソヒソと話している。


「おしゃべりはほどほどにねぇ~」

兵士二人の間を男が通る。2人は気づかなかった。

おしゃべりに夢中になっていたからではない。その男が急に2人の間に現れたからだ。

≪スキャン様!申し訳ありません!≫

兵士二人が声を揃えて男に頭を下げる。


スキャンという男は紫色の布を腰に巻き付けている。

布にはウィッチハント協会を象徴する太陽の刺繍。髪の毛は赤く、手足は長い。ふらふらと歩いているようだが酔っぱらっているわけではない。首の後ろには白いお面。真ん中に黒い太陽。

兵士二人にひらひらと手を振り男は建物の中に消えていった。


「ご苦労様です」

兵士二人の前にまた男が立っていた。

兵士二人の体が固まる。怖いのだ。

この男の残虐非道な行為を噂で耳にしたことがある。

魔女の目を集めているという噂だ・・・。


≪アンエイドさま…ご苦労様です!≫

「うわさ…ですからね。あなたたちは気にしないでください」

ごくッと兵士が唾を飲み込み≪はい!≫と返事する。


気にしないでというのは黒猫の噂についてか?

それとも残虐な噂についてか?

二人の会話をいつから聞いていたのか?


「何で今日はこんなに大物が来るんだよ・・・」兵士の一人が涙目を浮かべて言う

「何か…あったのかもな」


二人の兵士の後ろにある城のような大きな建物から妙な雰囲気が漂っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る