第4話:女の子
ガッッッッッッッッッッッッッッッッ‼
「おい!やれたのか!どうなってる」
俺を囲んでいた兵士たちの髭面の偉そうなやつが大きな声で叫んでる。
(あれ?俺…死んでないのか?)
体も全く痛くないし、意識もしっかりとある。ゆっくりと目を開けると
まだ俺は兵士に囲まれていた。でも、さっきまで目の前にあった剣はもうない。
(なんだこれ…?俺の体の周りに何かある…?)
青色の何かが俺の体を包んでる。兵士が俺に向けた剣は床に転がっている。そして俺を殺そうとした兵士の目は恐怖に満ちている
「バ、化け物だ」「やっぱりこいつが…」「俺たちじゃ無理だ」「殺される・・」
さっきまで俺を殺そうとしていたのに、、、初めましてで剣を向けてくるお前らのほうがよっぽど化け物だけどな…
(さて…ここからどうしようか)
まだ俺は死んでないし、第二の人生謳歌チャンスがあるか
今は兵士たちも動かないし、
逃げるか
俺は兵士たちの足の間をすり抜けて、その場を離れることにした
猫なだけあって体が軽い。速い。誰にも捕まることなく路地に逃げ込むことができた
足元を通るときに兵士たちが叫んだり逃げたりしてたけど、大げさすぎだろ
(ふぅ…しばらくは大通りに出るのはやめるか…それにしても何で殺そうとしてきたんだ?この世界のことが全く分からない。普通異世界転生って、女神様ドーーン。チートスキルドーン。異世界無双。俺つええじゃないのか?)
「ステータスオープン」
(あれええ.…これって異世界のお決まり設定じゃないのかよ。これからどうしようかなぁ)
「ねぇ」
さっきまで静まり返っていた路地裏に声が反響する。
振り返ると、女の子が立っていた。
(え、だれだ?女の子がいつの間に後ろにいた?小学生くらいか?)
元々は綺麗な白色だったはずの汚れたワンピースに、ぼろぼろの靴。服装はぼろぼろだけど顔は整っていて…いや、、整ってるどころじゃないな。芸能人並みの顔立ち。
いつお風呂に入ったかわからないぼさぼさの髪の毛
「ねぇ、これたべる?おなかすいてる?」
女の子は俺の前にしゃがみ込むと、食べかけだろうか、一口くらいのパンを出してきた
(俺が怖くないのか?さっきの兵士はあんなに怖がっていたのに)
正直こんなに汚れた女の子が出してきた食べ物なんて食べたら腹を壊しそうで怖い
なんかカビみたいなの見えるし。
女の子とパンを何度か見つめる。
(ここで食べなかったら泣くかな?何か泣きそうな顔してるし)
女の子の手からパクっとパンを食べる。
(なんだこのパン。固いし味がしない。固いから噛むけどゴムみたいに弾力があって気持ち悪い)
これ以上嚙んでも駄目だと思い飲み込む
(ありがとな)と渾身のにゃーんでもしておくか
「どういたしまして!」「君も一人なの?」「どこから来たの?」
しししと笑っている女の子に質問攻めにされる。答えてやりたいが、にゃんしか返してあげることができない
女の子が俺に言う
「行くところないなら一緒に来る??」
俺を抱きかかえて、まっすぐに目を見ながら・・・
正直、行くなら金持ちの家がよかった。多分この子は家がないだろう。俺と同じで孤独だ。明日のご飯もないかもしれない。あんなに怖がられていた俺を怖がらないってことは、世間の常識も持っていないのかもしれない。
でも、この世界で俺を怖がらないのはこの女の子だけかもな。
不安そうに俺の顔を覗き込む女の子を安心させるように、
「にゃん」と俺は鳴いた
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