第3話

「んん~…」

ある暑い日の夜でした。けい君は暑苦しさを感じて寝返りを打ちました。

エアコンが効いているのに、汗をかいていて、なんだか布団がむわっとしています。

弟は、けい君の隣で万歳のポーズをしてスースーと寝息を立てていました。

お父さんとお母さんは、隣の布団でぐっすり眠っているみたい。

「のどが渇いたな…」

水が飲みたくなったけい君は、弟にぶつからないように布団を抜け出し、お父さんとお母さんを起こさないように、そろりそろりとお部屋から出て台所に向かいました。


チッチッチッチ


夜中のシーンとした台所に、時計の音が大きく響きます。

「なんだか怖いな…」

ビクビクしながら、冷蔵庫のドアを開け、水を取り出そうとすると、中が真っ暗で何も見えません。

「あれ…電気がつかないぞ…うーん、水はどこかな…見えないや…」

冷蔵庫の中に顔を近づけ、目を凝らします。

卵や牛乳、夕ご飯の残りのハンバーグが入っているはずの場所の奥に、なんだかキラキラしたものが見えた気がして、なんだろう?とジーっと見てみると、灯りのともった家が立ち並ぶ街が広がっています。三角屋根のレンガのお家、三階建てのアパート、映画で見たドラキュラや魔女が住んでいそうなお城…

「え?」

けい君が驚くと、

チッチッチッチ…チ…チ………

大きく響いていた時計の音が消え、今までひんやりしていた冷蔵庫の中から暖かい風が吹いてきました。

その風がけい君の体を包んだかと思うと、けい君の体がふわっと浮き、あっという間に冷蔵庫の中に吸い込まれてしまいました。


「うわ~!助けて~!お母さ~ん!お父さ~ん!」

けい君は叫びました。

ビュンビュンと風に包まれて、まるで竜巻に飲み込まれて吸い込まれていくようです。

けい君の髪の毛はバサバサなびき、手をバタバタしても、うーんと伸ばしても何もつかめないし、周りは真っ暗で、目をぐっと見開いて右を見ても左を見ても何も見えません。


強い風で息もできないし、けい君の心臓は、今まで経験したことがないくらいバクバクと鼓動していて、見開いていた目が風で乾いて痛くなってきました。


すると、遠くからキィーンキィーンと飛行機のような音が聞こえ始め、だんだん耳が痛くなるほど大きくなり、いきなり虹のような光に包まれたかと思うと、ふっ…とけい君の意識は途切れてしまいました。

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