クロ、今日こそ戦…戦わせてもらえない!!
朝のギルド。
まだ日も昇りきらない時間だというのに、なぜか入口前だけは祭りのように賑わっていた。
「本日もクロくんの安全を祈りましょう会!開始でーす」
「クロくんが無事に帰って来れますように」
「今日こそ怪我ゼロ記録更新だ!!」
なんなんだこれは!?凄く騒がしい
いや、騒がしいどころじゃあない!
これは、何?なんで祈るの?
僕の名前を呼ぶ声がいくつも飛び交い、それが全部安全とか保護とか、とにかく過保護ワードで満たされている。
(なんなの?僕ってそんな今危険なの?)
そんな疑問を抱えていると、受付嬢がにこにこと僕の前に現れた。
「クロさん今日のために、ギルド特注の安全装備をご用意しました」
そう言って渡されたものは、膝あてに肘当て。
そして何より目立つ、子供向けみたいなヘルメットだ。
「なにこのヘルメット!?まず僕、ヘルメット必要ないよね!?」
「安全のためです!」
三銃士の後ろ姿が見えた瞬間、受付嬢が囁く。
「彼女たちからの特注です」
「やっぱり!?」
すると声をかけてきた。
「クロ装備つけたか?」
剣士のリサが腕を組んでいた。
彼女は僕を守ることにおいて異常なほどの執念を持っている女の子だ。
「ちょっと動きにくいんだけど...」
「その不便さと安全は天秤にすらかける価値がない。安全が優先だ」
リサの目がガンギマっている。怖い。
フィーネが駆け寄ってきて僕の顔をチェックする。まるで医者みたいに
「クロくん、体温は正常?睡眠不足じゃない?足元はふらついてない?」
「…なんでそんな徹底的に僕の健康状態チェックするの?」
「当たり前です。クロくんの健康をみるのが私の日課です!」
サラはサラで、日誌を取り出している。
「記録します。午前8時32分、クロ、健康状態良好」
「やめて!?僕の健康記録どこに共有してるの!?」
「ギルド奥の男性保護資料室」
「そんな部屋いつ出来たの!?僕知らないよ!?」
周囲の冒険者も当然のようにうなずく。
「そりゃそうだろ。クロくんは希少種だからな」
「君を守るための部署くらい必要だ!」
「男性保護は国の最優先課題だからな!」
「やめて!?」
こうして今日も、僕は過剰な保護の視線に晒されながら諦めて依頼掲示板を見にいく。
僕は戦士らしく、少し危険な討伐依頼に挑んでみたかったのだが、掲示板に貼られたのは、
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《クロくん専用!安全癒し依頼》
・草むしり
・花の採取
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「なんで!?もっと討伐依頼あったよね!?さっきみたよ!?」
後ろから三銃士が堂々と宣言した
「危険な依頼は全部はがした」
「クロくんが怪我したら困りますし」
「当然」
「勝手にそんなことしたの!?」
周囲の冒険者が、
「大丈夫だよ。私たちがやるから」
「クロくんは癒し担当でいいんだよ」
クロ「僕戦士!?職業、戦士なんだけど!!」
ギルドがざわざわしつつ、僕らは今日の依頼である初心者向けの安全な森の調査へ向かうことにした。
ここは、危険度が低い森だ。初心者が最初に来る場所で、出てくるのは弱い魔物ばかり。
「今日こそ戦う、僕は戦士なんだ!」
するとサラが
「索敵モードON。クロから半径30メートル内の敵は即排除」
「排除されたら僕戦えないよね!?」
「「「え?」」」
「え?じゃあないよね!?」
そして少し進むと、ホーンラビットが現れた。
小さな角を持つ、弱い魔物。初歩の戦士でも普通に倒せる。
「よし、僕がやる!」
クロは一歩前へ踏み出す。
「クロ危ないッ!!」
次の瞬間、ラビットが宙に浮いた。
リサがホーンラビットを持ち上げたのだ。
「ピッ!?」
「なんで持ち上げてるの!?討伐じゃないの!?」
「クロくんに跳ねてきたら危険ですからね」
「よし、森の外へ投げてくる」
「投げないで!」
しかしリサは華麗にラビットを遠投した。
「ピィィィィィーーーー!!」
「僕より魔物のほうが心配だよね!?」
そして何も出来なかった、帰り道。
ちょっと躓いてしまった。転んでもいない。
かすり傷もない。だか、
「「「クローーーーーーッッ!?」くん」」
「大丈夫!?痛い!?どこが痛い!?」
「治癒魔法を、いや、魔法を使う前に冷やした方が」
「記録:クロ、ケガの危険性あり!!」
「転んでないよ!?僕、踏ん張ったよね!?」
すると周囲の冒険者までもが駆け寄ってきた
「クロくんが怪我したと聞いて!!」
「担架!持ってきたぞ!!」
「ギルドに救護室を準備しろ!!」
「なんでこんなことにーーー!」
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クロ安全優先隊
今日の評価:安全SSS 攻略F
コメント:
「クロくんが無事で何より」
「「戦わせるべきだと思います(匿名)」」
「僕と同じ被害者の仲間増えてる!?」
フィーネ「いえ、戦わせないですよ?」
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評価良ければ更新するかもしれないですm(__)m
男性希少につき、過保護パーティでダンジョン攻略中 クスノキ @camphortree
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