Mefrain

成瀬雪兎

第0話 終わりと始まりは突然に

木枯らしの吹き始める肌寒いある日の夜。一人の青年が遠くを眺めながら街道を歩いていた。

 「~♪ いつも一緒に居たかった……」

 鼻息交じりに失恋ソングを歌いながら、わかりやすく感傷にふけっている青年の名は成瀬湊(なるせみなと)

 つい先ほど、最愛の彼女にフラれて魂が抜けたようにどこに行くあてもなくフラフラと歩いていた。

「今回の失恋で十人目か、どうしていつもこうなっちゃうんだろうな。もっとやりようあったよなー。」

 湊は俗に言うモテモテほどではないが、それなりに異性と恋仲になっては別れるということを繰り返してきた。

「毎回付き合うまではいくんだけど、そこからがどうしてもうまくいかないし、どうすればよかったんかなぁ……」

 今までの失恋を思い返しながら、後悔ややるせない気持ちが湧いてきては泡となって消えていく。考えれば考えるほど、底のない海に身を任せるように湊の感情は沈んでいく。

 人並み以上にはお付き合いの経験がありその分失恋の経験もあるが、毎回それを充分に発揮できず破局し、懲りずにまた交際し、を続けてきた。

「いっつも今度こそはちゃんとやろう!幸せにしよう!なろう!ってやってるのに、なにがダメだったんだ……」

 湊にとっては恒例となった一人反省会中に北風が彼を励ますように強く吹き、冷たくなった心身に余計に刺さる。

「今日はこんな寒さが愛おしいよ。アイラブウィンター」

 彼は基本的におかしいのである。こういうところなのかもしれない。

 

 ほんの五分くらいだろうか、ぼーっと物思いに耽っていたが急に人が変わったように湊は顔を上げた。

「まあ、これも経験だよな!次に活かそう!次こそは幸せな恋愛するぞ。幸せにできなかった元カノたちごめんな!いままでありがとう!」

 この流れも彼にとってはもう8回目である。

 よく言えばポジティブ、悪く言えば投げやり。この気持ちの切り替え方とどうしようもないポジティブ精神が彼の人を引き寄せる魅力でもあり、破滅する要因ともなっていた。

「今考えると後悔ばっかじゃん!戻れるもんなら戻りてぇ~」

 人通りの少ない街道であるからなのか湊は独り言を結構な声量で呟いていた。 

 

 ドゴーン

「ん?」

 遠くから何か大きいものが衝突するような音と人の叫び声らしき音が聞こえた気がした。

 聞きなれない非日常的な音ではあったが湊は他人事のように無視してイヤホンを着け、歩き始める。傷心中の彼にとっては聞きなれない音になんてかまってやる余裕なんて持ち得てないのだ。

 反省会を再開し二十秒ほど経った時、その音が湊に近づいて来ていることに気づき、振り返ってみると大型のトラックがこちらに向かってきていた。しかし、何やら様子がおかしい。どうやらブレーキが利かないのか獲物を前にした肉食獣の如く止まる様子がない。

 やべえ!避けな――――

 

 そう考える間もなく、湊の体は宙を舞っていた。


 ……なさい。……きなさい。

 どこからともなく声がする。

 「早く起きなさい。」

「んー。まだ起きません。あと五分。」

 「うむ、わかった。」

 どこか懐かしいやり取りを交わし、湊は再び眠りにつこうとする。

「って、起きんかー!ワシはアンタの母親じゃない!」

 「うわぁ!?」

 いきなりの怒号に流石の湊も慌てて飛び起きた。するとそこには腰まで伸びた白髪と長々とした髭を蓄えたいかにも神様っぽい老人が立っていた。

「ベタなノリツッコミありがとうございます。てか、ここって夢の中?にしては意識はっきりしてるし、じいちゃん神様っぽい見た目してるけど」

 先ほどまで閑静な街道を歩いていたが、突然360度一面真っ白な世界に変わっていて驚きが隠せない。しかし、神らしき人物を前にしても、もの応じせずに話してきた青年に老人はペースを乱されている。

「オホン……色々とツッコミたい所はあるが、いかにも、ワシは神である。」

 神は咳ばらいをし、蓄えた髭をなぞりながら体裁を保とうとし話し始めた。

「自己紹介ありがとうございます。俺は成瀬湊って言います。」

 やはりこの男変である。

「うむ、こちらこそ丁寧にどうもじゃ。ってちょっとツッコませてもらってもいいかの?」

「どうぞ。」

 「湊と言ったか。お主急にこんなわけのわからない場所に飛ばされてなんでそんなに冷静でいられるのだ!?普通のニンゲンなら慌てふためき神を崇めたりするじゃろ、二度寝するやつがおるか!なんじゃあと五分とは!ワシはお主のオカンでもジイチャンでもない!あとあと、なんじゃ神に向かってその態度は!神を崇め奉らんかいって言いたいんじゃが、最近天界でも何かと規制が厳しくなっておってな、昨今のコンプライアンスがそれを許してくれないのが実に悔やまれる!」

 神は若干息切れしながらツッコむと最初の威厳は消え失せ、その場で胡坐をかいた。

 二人が出逢って五分ほどしか経っていないが、神は初めて会う変な男に乱され、必死に取り繕っていた体裁も保つことを諦めてしまった。湊も湊で神のツッコミをニコニコとした表情で楽しんでいた。

(天界にもコンプライアンスって存在するんだ、人間とやってること変わらないじゃん。スゲー皮肉だ。)

 見慣れない場所や自称神と名乗る人物を前にしても湊は順応し、楽しむ余裕すらあった。

 

「もう、ツッコミすっきりした?てか、こういうところに来ちゃったってことは俺もしかして死んじゃった?」

 アニメやゲームを趣味としていた湊にとって、何もない場所に飛ばされ、神と対面するという情報だけで自分の今の状況に察しがついていた。

「おお、もうスッキリしたわい。何かと小言は言いたいがの。」

 もはや威厳なんて気にせずに自然体で話している神に湊はツッコミたくなったが、それ呑みこんで続く話を聞くことにした。

「死んだかっていう質問なんじゃが、実ははお主はまだ死んでおらん。」

 湊が最後にハッキリしている記憶はトラックにはねられる直前だった。トラックと衝突したのかしていないのか、その時のことはよく覚えていない。

「え、マジで?生きてんの俺?てっきりトラックに跳ねられて一発アウトだって思ってるんだけど」

「ふぉふぉふぉ、察しがいいのぉ。」

 神は少しだけ頬を緩ませたが、まるで悩みを吐き出すように再び口を開いた。 

「厳密に言うとな、お主の体は今植物状態にあるのじゃ。トラックに轢かれた際、頭を強打してしまっていてな、体は奇跡的に無事なんじゃが意識が戻る可能性は低いようじゃ。」

 湊は現実の深刻な状態を伝えられてもあまり動揺せずに話を聞いていた。

「なるほどね、そんで、これから俺は何すればいいの?なにかあってココに呼んだんでしょ?」

 先ほどから日常からかけ離れた話をしたり、自分が死にかけているということを伝えてもすぐに飲みこみ受け入れてる青年に神は違和感を抱かずにはいられなかった。

「ここに呼んだ理由は今から話すが、その前に1つだけ聞いてもよいか?なぜ、そんなにも聞き分けがよいのじゃ?普通はもっと落ち込んだり動揺したりするものであろう?」

 と、神が問いかけると湊は先ほどのおふざけモードから一変して、無機質な口調で話し始めた。

「実は将来に希望を持っていないんだよね。生きていても楽しいことなんて無いし、空元気で今までやってきたみたいなところあったけどそれも疲れちゃったし。あとさ事故に逢う前、最愛の人にもフラれちゃったしさ、ちょっと自暴自棄になっちゃってたかもしれないしね。」

 彼がこれまで生きてきた中で今まで誰にも言えなかった闇を吐露すると少しだけ明るさを取り戻して話を続けた。

「ここに来るまでも後悔ばっかでうまくいかないことの方が多かったし、さっきも事故に巻き込まれちゃったけど、むしろラッキーって感じ。これはマジ。」

 神は神妙な面持ちでそれを聞き、言葉を発した。

「では、ワシがこれまでの後悔をやり直させてくれようと言ったらどうじゃ?」

 

 ここで予想外かつ湊の現状にピンポイントで刺さるワードに今日一番困惑した。

「後悔をやり直せる?」

 確かに誰もが一度でも考えたことがあるだろう、後悔をやり直すこと。しかし、それは不可能なことであって、そんなことができるのであればそもそも後悔なんて言葉ないはずだ。

 起きてしまったことはしょうがないことでどれだけ後悔しても過去はどうにも変えられない。今までそうやって自分に言い聞かせてきて、そうやって諦めてきたのに神が発した一見馬鹿げた一言で自分の心身を蝕む呪いが、くだらないものだと錯覚するような衝撃を受けた。

「そんな……そんなことできるわけないだろ。アニメとか漫画を見すぎてるやつでもそんなこと言わねえよ!」

 湊は怒りの感情を露わにしつつも少し期待してしまっていた。

 事故に遭ったと思いきや、見知らぬ空間に飛ばされそこで自分を神だという存在に出逢う。そんな有り得ない状況に置かれ、ましてや後悔をやり直させると言われてしまったら、彼の中でとっくの昔に無理矢理呑みこんだ希望を持たざるを得なかった。


 「ふぉふぉふぉ、ようやくニンゲンらしい一面が見られたわい。」

 湊の感情の変化を静観していた神は話を続けた。

 「実はな、湊、お主はここにいるべき存在ではないのじゃ。」

 神は少し申し訳なさそうな表情で続けて言った。

 「説明が遅れたが、ここは天界の入り口。死者が次の世界へと羽ばたく場所なんじゃ。それが何かの手違いでまだ生きているはずの湊の魂をワシの部下が連れてきてしまった。」

 湊はすっかり落ち着いたと同時に物事を素早く察知していた。

 「天界でもそういうミスあるんだな。なんかおもろい。」

 いつものおちゃらけた湊に戻り、神もほっと息をついた。

 「そんで、さっき言ってたやり直すってことに繋がるのか?マジでそんなことできるの?」

 さっきまでのイライラはつゆ知らず、湊はワクワクした目で結論を急ぐように神に問いかけた。

 「そう急ぐでない。本来であれば、元の体に魂を返すことが普通なんじゃがな……」

 「え!?待って!ここに来て上げて落とすのかよ!」

 湊の期待は簡単に裏切られた。まるでおやつを永遠と「待て」されているような犬を眺めているようなもどかしさである。

 すると神はニヤニヤと悪戯心が顔に出ながら、こう提案してきた。

 「しかしの、こちらの不手際でこうなったからには、何かしてあげんと引き下がらぬじゃろう?お主。」

 わかってんじゃんと言わんばかりにニヤニヤが湊の表情にも出る。

 「だからお主がそういう人間になってしまった原因を無くす、つまりはしてきた後悔をやり直すチャンスを与えようと思ってな。」

 湊がさっきから感じていた期待、欲していた言葉、それが神の口から発せられた時、感情が溢れ出た。

 「神様ありがとうございます!マジで一生着いていきます!マジで生きてて良かった~って死にかけなんですけどねガハハハハ」

 ハイテンションになってしまって一人突っ走る湊に神は制止するように口を挟んだ。

 「ここで条件がある。」

 「条件?」

 「お主はさっき後悔をしてきたと言っていたな?その後悔とはなんじゃ?」

 てっきり生まれたころからやり直せるなんて思っていた湊は昂る感情に急ブレーキをかけられ、少し落ち着き、考え込んだ。


 「やっぱ、彼女かな……」

 「ほう、彼女とな?」

 人間が躓く原因となりやすい要素として、勉強や仕事、夢、人間関係などが挙げられるが、その人間関係の中の彼女という部分を選んだ湊に神は少し驚かされた。

 「そ、彼女。」

 そういうと昔話をするようにどこか遠くを見て湊は話し始めた。

 「今までしてきた後悔ってなんだろうってちょっと考えてみたんだけど、パっと浮かんできたのがコレかなって思って。勉強とか人付き合いとか夢とか俺も結構そっち方面かなーって思ってたんだけど、そういうの諦めたってわけじゃないけど、なんだかんだで気持ちの折り合いはつけてきたんだよね。生きてきた道に後悔はしてないんだ。でも、彼女は違う。」

 そこまで言うと、いきなりスイッチが入ったのか物凄く早口で語りだした。

 「俺さ、自分のことはぶっちゃけあんまり興味ないんだ、楽しかったらそれでオーケーみたいな感じなんだよね。でも、彼女は違うんだよ!今まで付き合ったのトータル十人!そして全員フラれたんだよね!みんな幸せにできなかったんだよ!自分じゃどうしようもなかったんだよ!それが俺の唯一の後悔かな、みんな幸せにすること。できることならこれを叶えたい。」

 「長いわ。」


 湊が語り終えると神はボソッと呟いた。

「自分語りが長いんじゃ!自分の都合が良くなったと思えば一人で勝手に気持ちよくなりおってからに!要はあれじゃろ?元カノと寄りを戻したいってことじゃろ?なんじゃしょーもない。もっと大きいの語らんかい!ちゅーか、ワシはお主に後悔はなんだと聞いただけじゃろ!誰がお前の願いなんて叶えるかよ!勝手に話を進めるなこのたわけ!」

 自分のターンが回ってきたと言わんばかり神はまくし立てあげた。神、よく耐えたね

 「ごめんなさい。てっきりタイムリープでもして後悔の元に戻れる的なことだと勘違いしてた。」

 湊は再び冷静になり、今度は神と対話しようと反省した。

 「まあ、湊よ。確かにお主は突っ走りすぎじゃが、勘違いでもないぞ。」

 神も少し落ち着きを取り戻し、話しを進めた。


 「ワシは後悔をやり直すチャンスを与えると言ったじゃろ?それで歴代の彼女が後悔の元ならそこまでタイムリープさせてやってもよいなとも思った。じゃがそれではワシが面白くない!」

「おもしろくない……」

 湊は唖然とし、復唱した。

「うむ、ただお主が元カノとキャッキャウフフするためにタイムリープしてワシが楽しめるとでも思っておるのか?」

「確かに、何がおもしろくて他人の恋愛見ないといけないんだ?」

 神も湊に染まっていっているのか、はたまた元からこういう性格なのか定かではないが、大概である。二人は言わずもがな相性がいい。

「そしてお主は重大なことを見落としておる。一人と恋愛を成就させたところで残りの九人はどうなる?」

「あ」

 湊は交際期間が被ることに対しての考えが無かった。

「それは全く考えてなかったな。別れないと次の恋って始められないよな。もしくは十股……」

「バカモン!そんなことしていいわけないじゃろ!」

 ちゃんと叱られた。神の方が人間味がある。

「では、1つの恋を成就させたと思われるタイミングで次の恋にまたタイムリープさせるってのはどうじゃ?」

「んーそっかー、そうしないと全員と幸せになることってできないもんな。」

 1つ目の恋が終わらないと次の恋はまず始まらない。理解こそすれども湊にとっては割り切らないといけない部分であった。

「でもさー最初の彼女幸せにしたあとに次の彼女にいくって罪悪感とかとんでもなくない?例えば二人目行くってなったら一人目と別れた後にタイムリープするってことでしょ?」

「それは安心してよいぞ、二人目、三人目とタイムリープするタイミングで記憶を消すからの。もちろん今の記憶も最初の彼女に会いに行くタイミングで消すから存分に苦しんでくるがよい。」

 湊にとってもこれはありがたい提案であった。過去の失恋を追憶していく中で自分だけ記憶を引き継げるのは不公平であるし、なにせ他の女との思い出なんて引き継いだときには罪悪感で押しつぶされてしまうような繊細なメンタルを自覚しているからだ。

「じゃあ初めて彼女ができたのは中学一年生だから、体も記憶も当時と全く同じ状態になるってこと?」

「そういうことじゃ、タイムリープしてもタイムリープした実感はなく、ただの中学一年生の成瀬湊として半ば生まれ変わったように日常を送っていくという解釈で間違いない。」

 神の想像力や現実味に湊は感服していた。


「あと、少し気になっておるんじゃが、普通に過ごして十人と付き合って全て破局するかの?」

「ギクッ」

 少しどころか大変痛いところを突かれた。

「まあ短い時間じゃが、湊の人となりは大体解った。お主に合う人間はそう少なくないはずじゃ。もしかしてお主だけじゃなく相手方にも問題があったのではないか?」

 流石神、湊にとって都合の悪いことをズバズバと言ってくる。

「い、いや俺がだらしないから全部フラれてきたんだよ。みんな素敵な人ダッタヨ。」

 湊が言えないことに気づいているのか、神は間髪入れずに質問を繰り返した。

「隠し事をしていると望みは叶えんぞ。正直に答えるのだ。」

「はい。」

「今までの恋愛は自分にも非があったが、彼女側にもあった?」

「…………はい。」

「詳しくは聞くまい。その非の割合はお主目線何体何じゃ?」

「10対0です。」

「ここにはワシとお主しか居らん。正直に言いなさい。」

 湊は嘘をつくことが苦手なので目が泳いでいるのがバレバレなのだ。

「……2対8です。」

「お主正直すぎるじゃろうて。」

 神は普通に笑っている。修学旅行の夜にするコイバナくらい楽しんでいる。

「そして、毎回別れる原因は?」

「俺が地雷踏みまくって嫌われることだと思います。」

 まだまだラッシュは止まらない。

「そんなこと毎回あるわけないじゃろう。主、好きなタイプは?」

「面白い人です。」

「取り繕わんでもよい、もっとシンプルに答えると?」

「めんどくさい人が好きです。」

「それじゃ!それじゃろ!お主が上手くいかなかった原因は!」

 ここで神は湊の恋愛が失敗し続ける原因を突き止めた。


「だって!めんどくさい子っていいじゃん!俺がなんとかしないとってなる子が魅力的なんじゃん!」

 湊は開き直り、自分の癖をさらけ出そうとしたところで神は再びハンドルを切った。

「それで彼女を爆発させたら意味ないじゃろうが!お遊び感覚でやるんじゃない!お主の甲斐性のなさと相性が悪すぎる!」

 神はだんだんと湊のダメンズさを感じてしまい、笑うよりも先に呆れてしまった。

「それでも、その子らを幸せにしたいのなら好きにしなさい。ただし、人の心をもてあそぶのは褒められぬ。こんな正確になってしまったのもお主の責任じゃ。タイムリープさせると同時に制約を課そうではないか。」

 湊も図星をつかれるかつ的を射た注意に何も言えず、神の言うことは受け止めようと決心した。

「制約ってどんなものなの?」

「そうじゃな……」 


 神は数秒考えた後、ハッと閃く素振りを見せ自信満々に提案した。

「こういうのはどうじゃ?お主はいわゆる地雷少女が好みとみた。して、その子の地雷を踏んだ瞬間爆死してもらう。」

「爆死ぃ~!?」

 予想の斜め上をいく提案に湊は思わず叫んでしまった。

「なに、本当に死んでもらうつもりはない。それだと本末転倒じゃからな。」

「地雷を踏んだ瞬間お主自信が爆弾になって飛び散るが、爆死したタイミングで地雷をふむ直前にタイムリープさせる。もちろんその時の記憶だけは引き継げるようにしよう。」

 湊は物凄く絶妙な提案に納得するしかなかった。

「なるほど……地雷踏む直前にオートセーブされていて、そこだけ記憶持ち越してロードできるってことか。」

 ただ願いを叶えてくれるだけじゃなくて、自分の楽しさのためにも遊び心をもった神に湊は敬服の感情を抱いていた。

 

「そういうことじゃ、少し長くなったが、早速行きなさい。ワシはこの後も客が詰まっているのでな。上から楽しく見とくわい。」

 神はどこからか出してきた時計を気にしつつ、湊にそう告げると視界からうっすらと消えていった。

「いきなり!?もう始まるの!?まあ、いいか!ありがとう神様!俺頑張るよ!絶対みんなと幸せになるからね!」

 暫くすると今まで居た真っ白な空間が崩れていき、湊もそれと同時に落下していく。

 徐々に意識が遠のき、抗えない睡魔に襲われ、瞼が閉じた瞬間、湊の記憶は無かったものへとなった。


 こうして、湊を蝕み続けた絶望と希望の追体験が始まる――――――

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