6 婚約破棄、或いは無効でお願いします⑤
オルリナ嬢が作り出したのは、
派手に見せられるもので、より聖光が多く含まれる魔法を選んだのだろう。
浄化魔法が聖光がより多く含まれるけれど、見た目は派手さはないし、彼女の得手不得手を知らないので確信はないけれど、もしかしたら得意ではないのかもしれない。
そこまで考えていたら、サビ柄頭の第二王子バレリオ殿下がブツブツ言っているのが聞こえてしまった。
「〘
おおう、非常識がここに居た。
聖職者の集う大聖堂で、女神さまの聖光で作られた要石に向かって攻撃魔法を叩き込むつもりとか、本当に大丈夫なの? この王子サマ。
人の頭くらいの大きさまで育てたミラーボール(喩えが失礼?)のような
オルリナ嬢自身の魔力や霊気も混ざってはいるものの、純粋な
すると、僅かに要石が光った。聖光が補填された事を示す反応だ。
たとえ私が満タンにしたとしても、常に僅かづつ減っていく。
国中のどこかで、瘴気や魔物などの
今も、要石の聖光は、私が満タンにしてすぐでありながらもすでに100%ではなかった。
「わははは、見たか? オルリナの聖なる光魔法が女神の要石の力を復元したのを‼」
使われて聖光が減った要石が、オルリナ嬢の光魔法に含まれる聖光を吸収して、充電電池のように補填された事が、聖職者達にも伝わったのだろう、小さいが確かに、神官たちにどよめきが起こる。
「どうだ? 無能聖女め。お前の唯一の存在意義である要石に聖光を注ぎ込む役目も、こうしてオルリナに出来ることが証明されたのだ。お前はまだ、わたしの慈悲に縋る気にはならぬのか?」
え、と? つまり? 何が言いたいのだろう。
オルリナ嬢が聖女の代わりになると証明して? で、どうしてそこで私が殿下の慈悲に縋ると言う結論に至るのだろうか。
「お前の唯一の存在意義が失われたら、どうなると思う?」
「⋯⋯お役御免?」
「そうだ。魔法も使えないお前が、市井に出ても生きてはいけまい?」
「⋯⋯そうかもしれませんね」
まあ、
竈に火を入れるのに、火魔法が使えなくても
魔力の活かし方をなんとか出来たらいいとは思うけど、元々魔法のない現代日本人なんだから、魔法に頼らなくても生きていけるだろう。
「わたしに謝って、先程の言葉を撤回した方が賢いのではないか?」
サビ柄頭のバレリオ殿下の執務室に入ったら、子リスもといオルリナ嬢が膝の上でイチャコラ瞬間にぶち当たって、一瞬思考が停止したものの、貴男とは結婚しません宣言をしたことを撤回させるために、
でも元々平民だったので、あえて、このサビ柄頭のバレリオ第二王子に縋って、我慢して結婚してまで衣食住に心配のない生活をしたいとは思わない。
ロサフィロが彼をどう思っていたかはわからないけど、女神の言い方だと決して喜んではいなかったみたいだし、初対面から私は不快だった。
王族だからと上から目線で話しているとイラッとするし、おだてに乗りやすいお気楽な性分が将来不安だし、見た目も声も好みじゃない。
ヒヨコ王子ヒョルス殿下の兄君だけあって整った容姿をしてはいるし、ちょっとした所作はさすが王侯貴族だと思わせる洗練されたものでもあるけれど、スクリーンの向こうの外国人俳優のようなもの。
彫りの深い白人男性は元々好みじゃないのだ。
え? ヒョルス殿下? はまだ
ふたりとも声変わりが始まったばかりで、可愛い声が少しかすれて話しにくそうなのがまた、今しかない可愛らしさよね。
絶世の傾国の美女と思える側妃フェリシア様に似た美少
バレリオ第二王子だけが、陛下似の男らしい精悍さと正妃マリエラ様の高貴さを混ぜ合わせた結果、ややくどく西洋人っぽい
まあ、本人の責任じゃないんだけども。
それでも、その後の経験や考え方などからの立ち居振る舞いや表情でいくらでも印象は変えられるはず。
それでも、正妃の生んだ最初の王子だからか、見た目はいいからか、アホっぽいのに貴族令嬢達には人気がある。もしかしたら、アホっぽいところが、堅苦しくない点が親近感があって気楽に付き合えて逆に人気なのかも。私はごめんだけど。
結局は、好みの問題なのかもしれないので、私はご辞退申し上げたところ、お気に召さなかったご様子。
いや、あなたのぶら下がり令嬢が聖女の代行を行うことが出来るんなら、私、この国で聖女やらなくてもいいよね?
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