7 婚約破棄、或いは無効でお願いします ⑥
「オルリナ嬢は素晴らしい女性ですね」
「ようやく、彼女の素晴らしさが解ったか? ふふん、結界を維持するしか能のないお前には王妃は荷が重かろう、聖務はお前、政務はオルリナと分担すればよかろう。ゆえに政務を執り行うオルリナが正妃でよいよな?」
ザワッ
今度は大きくざわめきが立つ。神官達もさすがに動揺したようだ。
「仰せの通り、王妃など無能
「そうであろう、そうであろう」
「ですから先程申し上げましたように、殿下との婚約はなかったことにしていただきとうございます」
そう答えて頭を下げ、聖堂を後にする。
ポカーンと開いた口が塞がらないまま立ち尽くすバレリオ第二王子。
オルリナ嬢も、要石の側に立ったまま、え?って感じで固まっている。
彼らが再起動したら、怒鳴るか慌てるか、いずれにしても面倒なのでそのまま放置して、護衛騎士達の待つ詰め所へ向かう。
別に怪我したとか何か支障がある訳じゃないので問題ないだろう。そもそも私には癒しの能力はないし、これだけ聖職者の集う場にいるのだから、誰かが気付けなり声かけなりするだろうし。
騎士達の詰め所に入ると、ちょうどリックとメルディが軽食を摂り終えたところだった。
もう一人の聖騎士ガルシアは、向こうの訓練所から汗を拭いながら帰ってくるところだった。
「あ、ロサフィロ様、もう終わったのですか?」
「ええ。お疲れのところ申し訳ないのですが、この後、サイガディオン侯爵領へ行きたいの」
「辺境伯に会いに行かれるのですね。了解致しました。何日滞在予定ですか?」
訓練から戻ったばかりなのに、ガルシアは防具や武具などの装備を確認しながら訊ねてくる。
「特には決めてないの。向こうの要石にも聖光を補填したいし、侯爵様にお話しもあるし」
「そうですか。道中のこともありますし、我々六人だけでは足りないでしょう、数人見繕ってきます」
「あ、別にいいわ。いつものあなた達だけで。国内に瘴気や魔物が出る訳はないし、盗賊に襲われるほど金目のものを持っている訳でもないわ」
「いいえ、我々が護衛しているだけで高貴な方が馬車の中にいらっしゃるとバレるでしょう。それに、高価な金品を所持していなくても、ロサフィロ様ご自身に価値があります。ロサフィロ様の身柄をおさえて、辺境伯や国に身代金を要求する輩もいるやもしれません。用心に超したことは⋯⋯」
ガルシアは、いつもこうだ。生真面目すぎるというか、なんというか。
聖女がいなくなれば、国が瘴気や魔物の脅威に晒される事になるのに。
聖騎士や神官戦士が多く駐在する王都や、騎士団を持つ高位貴族の領地はともかく、王都から離れた村や町は、魔物から身を守ることも、瘴気や
なのに、多少の小金のために、あえて聖女を狙うだろうか?
ガルシアが護衛を増やすべきだと上申している間に、メルディとリックは身支度を調え、神殿にて待機中だった他の三人に声をかけに行く。
ガルシアは納得していなかったけれど、結局はいつもの六人と私とで移動することになった。
各地で、要石の兄弟石に聖光を補填する公務の時は、豪奢な小型の馬車や輿に乗せられて、聖騎士と神官騎士がフル装備で護衛をするけれど、単に移動するだけの時は、私は平民の町娘風の格好を、護衛の六人は自由民のふりをして、護衛依頼の雇い主と駆け出しの自由民といった設定で気楽に移動する。
この、
自由民株を買うとき、よほど資産家の子女でない限り、所持金が足りることはない。らしい。よほど高いのかな。
で、借金をして株を買い、
完済して始めて一人前というわけだ。
依頼を達成し、
決まった収入のある企業戦士とは違う、一獲千金を期待する人達なのに引退後の保障がある訳じゃない。ので、価値の上がった自由民株を、引退時に
護衛騎士達は、この自由民を装うのである。
物々しい鎧と剣や槍、盾を構えて馬に乗る姿が仰々しいと訴えたところ、聖騎士に任命される前に腕試しと小遣い稼ぎの為に自由民をしていたリックの発案だ。
ちなみに、王宮の、貴族家出身の騎士以外の、衛士や兵士達の多くが、腕試しや小遣い稼ぎとして、自由民を経験したことがあるらしい。
自由民のランクが高かったり株価が高いと、戦闘能力やサバイバル能力が高いと認識されて、就職しやすいのだという。
ラノベや漫画、アニメなんかの異世界ファンタジーに慣れた元日本人としては、冒険者ギルドとかって、ちょっと憧れるなぁ。
魔法が使えないと厳しいかな。やってみたい。
十中八九、まわりに止められるだろうけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます