Ø 三年(+十二年)後の私に転生? Ⅰ
ドイツはマイセンの磁器人形のような白い肌。
スポット着色したかのようなバラ色の頰と唇。
――中々可愛いんじゃない?
緑あふれる森の中の泉の淵に屈み、
これらの色は、この地を守護する女神の加護を身に宿している
もちろん、ピンク色の髪や菫色や翡翠色の瞳は、この世界には少なからず存在するらしいけど。
淡いピンクサファイアの髪と、
なぜ、女神の
会ったことあるからである。
「ごめんなさいね、どうしても必要だったの」
と言って胸元に手を組み悲しげに謝るのは、透ける淡いピンク色の、宝石か絹糸のような長い髪を揺らすアラサーっぽい美女。
ヨーロッパ諸国とも北欧系ともつかないけれど、髪の色や青紫の瞳や白い肌などの色ではなく、その美を余すことなく造形する容貌が明らかに東洋系ではない。
さっきまでバイト先近くの交差点で信号待ちしてて、コンビニから職場に戻る所だったはずだけど。
なんで、周りに様々な木立と草花しかないような大自然の中に立ってるのかな。
「ええ、そうね。でももう、そこには戻れないの。本当に、申し訳ないのだけれど」
そこには戻れない――とは、交差点? バイト先? それとも……
「その通りよ。立っていた交差点や職場だけではなく、あなたが暮らしていた世界そのものに、もう、戻して上げられないの。本当に申し訳ありません」
美人の泣きそうな顔は、破壊力あるなぁ。なんだか、詳細を聞かずとも許してしまいそう。
「その身体は、あなたが三年後に転生するはずの少女のものなの」
「三年後?」
三年後に、転生するはず、とは?
「残念だけれど、あなたはあのままでも三年後に亡くなるわ。あの瞬間から三年間、一度も目覚めることなく、ね」
「え、と。ウェブ小説やアニメによくある、事故で死んだら異世界に生まれ変わるってやつ?」
「そうとっていただいていいと思うわ。あの交差点で、操作ミスによる暴走車の大事故で、あなたは意識不明のまま三年間、生死を彷徨うことになるの。亡くなった後、あなたの魂は私の加護を得て、私の守護する国の人間として生まれ変わるのだけれど」
「それが、なんで、今に繰り上げ? それとも私が知らないだけで意識不明のまま三年後の心不全だか脳死だかなの?」
「いいえ。あなたにとってはあの事故の直後よ。こちらはあの瞬間から十五年ほど経ってるかしら。こちらの事情で、あなたが亡くなるまでの3年が待てなかったの」
十五年? 私が死ぬまでの3年が待てない?
私は、都心近くの郊外型の大型店舗スーパーで、都の最低賃金よりややリッチな時給を貰いながら働きつつ短大に通い、来年の春卒業後、祖父母の残した店を再開する予定だった。
「てことは、おじいちゃんのあのお店は、継ぐことが出来なかったのね」
「ええ。眠っていなくても意識は混濁していて、薄く開いた目が家族を映しても会話も出来ない状態のまま、動かせない身体は筋力を失って衰弱していき、三年と二ヶ月の後に呼吸も侭ならなくなって、延命措置も虚しく亡くなってしまうの」
申し訳なさそうに言うけれど、事故に遭ったのも、体力が尽きて死んでしまうのも、あなたのせいではない、の、よね? だったら、そんな顔しないで欲しいのだけど。
「ええ、ええ。事故は、持病を患うご老体が発作を起こしてスピードを上げる操作を止められず、乗り物を止める操作も出来ずに暴走した結果のこと。複数の人が重体・死亡されて、重体の人の中であなたが最後に亡くなるの。その事態は、私の引き起こした事でも、あなたの魂目当てに画策した事でもないわ」
「なら、そんな
「自分が死んだなんて話を聞くのはつらいだろうと思うと、笑顔で話せなくて。でも、そうね。私がつらいのではないのだから、やめるべきね」
そう言った途端、スッと表情を落とし、ビジネスライクな態度に切り替わった。
「では、3年が待てなかった事情と、現状の説明をさせてもさいただいてもいいかしら?」
拒否することに意味はなさそうだし、元に戻せないというのなら、仕方ないよね。
「いいわ。聞かせてもらいます」
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