第3話 予感
「今度ねー!ポップコーン売り場になるの!」
「へー!」
「一歩ずつ夢に近付いてるんだからね!」
「頑張ってるなあ」
「タムさんは?何か夢とか目標とか見つかってる?」
「うーん、俺は明日のベシャメルソースの仕込みの事考えてる」
「もー!現実的すぎてつまんない!」
あれから暫くして俺と佳奈ちゃんは付き合い出した。
まあ歳も近いしお互いフリーで話していて楽なので自然な流れだった。
佳奈ちゃんは明るくて素直で前向きで頑張り屋だった。
ちょっと甘えん坊な所も可愛いなあと思っていた。
俺は鞠保さんと言うスターを失ったが、新たに佳奈ちゃんと言う星に導かれる様に惹かれて行ったんだと思う。
生粋のファン体質なんだろう。
今日は佳奈ちゃんの部屋に泊まりに来ていた。
佳奈ちゃんが俺の部屋に来る事もあった。
「佳奈ちゃん、なんか分厚い難しそうな本読んでんだね?」
『想像力で創造する力を養うための10の法則』
タイトルみてもサッパリ内容が想像出来ない。
「うん!同じキャストの先輩に薦められてね!まあ自己啓発本ってやつ?」
「ふーん、言葉だけは聞いた事あるけどそう言うの」
「アメリカとかでもこう言うのスタンダードなんだって!ビジネスマンとか?」
「へー」
「私は夢があるからね!こう言うの読んで勉強するんだー!」
「内容わかるの?」
「うーん、実はイマイチピンと来てない…へへへ」
「あはは、まあそう言う所が可愛いよね佳奈ちゃんは。」
「馬鹿にしてるでしょ!?」
「してない、してない!大好きって言ってるって!」
「もー!調子いいんだから!」
その時は佳奈ちゃんの可愛さで違和感に気付かなかった。
「今度先輩にセミナー有るから来てみないってって言われてねー。どんな服着てけばいいんだろ?」
「セミナー?」
「うん、自己啓発本薦めてくれた先輩。実際話聞くとわかりやすいよって」
「本で分からなかったのに話聞いて分かるのかなあ?」
「うーん、どうだろ?でも無料らしいし、とりあえず試しに行ってみる」
「そうかあ。前向きだなあ。佳奈ちゃんのそう言う所好きだなあ」
「何だかんだでタムさんは女っタラシだよね。そーゆー事サラッと言えるし」
「酷いなー。思った事言っただけなのに」
「何か心配なっちゃう。タムさんカッコいいし。」
「えー!佳奈ちゃんの方が男っタラシじゃない?」
「思った事言っただけですー!」
この先の事が分かっていたらこの時止めとけば良かった。
「なんかねー!凄かった。先生カリスマって感じ!話聞いて凄くやる気出た!」
「へー!」
「先輩がね、このセミナー受けて宇宙マウンテンのキャストになった人もいるんだよって言ってた!」
「そりゃ話聞くだけでなれたら凄いな。本当かなあ?」
「なれそうな気持ちになる様な話だったのよ!凄く前向きになれるってのかな?」
「へー!もう佳奈ちゃん十分前向きだと思うけど」
「それだけじゃやっぱダメなんだよね!色々考え方学ばないと」
「へー!」
「タムさんも一緒に行かない?」
「俺はいいや。今度佳奈ちゃんから話聞く」
「もー!無料で聞く気でしょ!」
「有料なの?」
「セミナーは次からね。でもお金払う価値あると思った!」
「へー。まあ、程々にね。」
「お金足りなくなったらタムさんから受講料もらおー!」
「俺前向きになる必要ないから聞かないー!」
「もー!」
何だか嫌な予感がこの時していた。もう少し詳しく話を聞いていれば良かった。
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