第6話 素数の城

「くそっ! なぜ私が、人間を背中に乗せねばならんのだ!」


 13はぶつぶつ文句を言いながらも、ぼくを背中に乗せて空を飛んでいる。向かう先は――素数貴族が住まう天空城プリモリウム。


「ほらほら文句言わない。急がないと世界が滅ぶぞ」


 ぼくは彼女の背中で軽口を叩く。そう、この事態を解決できるのは、この世界でただひとり――。いまからそいつに会いに行く。


「貴様のような得体のしれないものを城に招くなど前代未聞だ……。あぁ、羽に触るな、くすぐったい」


 13の翼は飛行中もピクリとも動かない。どうやら“飛ぶため”のものではないらしいが、触るとちゃんと感触がある。変なところでリアルだ。そんなことを考えていると―― 雲の上に巨大な城が現れた。


「これが……天空城プリモリウム」


 その壮大さに、ぼくは息をのむ。どういう理屈で浮いているのか分からないが、

 城の周りを素数の衛兵たちが飛び回っている。入口に着地すると、リーダー格らしき衛兵が13へ頭を下げた。


「13様、お帰りなさいませ。……ところで、その男は?」


「緊急事態だ。元老院に報告する。至急手配してくれ」


 13がきっぱり言う。


「なんだお前、12と話してた時と雰囲気が偉く違うな」


 ぼくがつい本音を漏らす。


「当然だ。ここでは、私も貴族の一員だ。きみも来賓としての品位を保ってくれよ」


 なるほど、どこの世界も貴族はプライドが高い。ここは従っておいた方がよさそうだ。


「へいへい。で、その元老院ってのは?」


「お前なら想像がつくだろう。素数の頂点――2、3、5 のお三方のことだ」


「なるほど。それで“1”に会うには、まずそいつらを通す必要があるってわけか」


「言い方には気を付けろ。<そいつら>ではない、<元老院様>だ」


「へいへい」


 そんな話をしているうちに、重厚な大扉の前へ到着。おもむろに13はドアをノックする。


「13です。報告したい件がございます」


「入れ」


 横柄な声とともに扉が開く。部屋の奥には、威圧感をまとった老人が三人――2、3、5 が鎮座していた。 開口一番、2が言う。


「13、その男は何者じゃ」


 13がぼくへ目配せする。ぼくは胸を張って一歩前へ出る。


「初めまして。ぼく――いや、私、人間のシィと申します。12の手引きで、この数次空間に参りました」


「人間……なるほどな」


 3が顎をさすりながら言う。


「最近平民の間で流行っているπの台頭――あれも貴様の手引きか?」


「はい。恐縮ながら」


 ぼくは老人たちの圧を跳ね返すように、余裕の笑みを浮かべた負けてたまるか

 本命の交渉はここからだ。

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