第13話 晴の冬のお菓子と記憶

冬の夜。シェアハウスの窓の外には冷たい風が吹き、街の灯りが揺れていた。塩見晴は仕事から帰ってきて、コートを脱ぎながらキッチンに向かった。いつもなら夕食の準備を手際よく進める彼だが、その日は少し違った。


「今日は俺が、お菓子を作る」

 そう宣言すると、米田ひかり、美咲、崇の3人が顔を上げた。


「えっ、晴さんがお菓子ですか?」ひかりが驚く。

「映えるやつかな?それとも素朴系?」美咲が笑う。

「お菓子は科学的にも面白い。温度管理と素材の組み合わせが重要だ」崇が真面目に言う。


晴は微笑んだ。彼にとってお菓子作りは特別な記憶を呼び起こすものだった。子供の頃、母が作ってくれたクッキーの香り。冬休みに妹と一緒に型抜きをした時間。あの温かさを、今の仲間にも伝えたいと思ったのだ。


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材料は小麦粉、バター、砂糖、卵。晴はきっちりと分量を量り、ボウルに入れて混ぜ始めた。


「クッキーですか?」ひかりが尋ねる。

「そうだ。シンプルだけど、心が温まる」晴が答える。


美咲は「俺は型抜き担当!」と宣言し、星やハートの型を並べた。

「映えも味も両立だ!」彼は笑う。


崇は真面目に「バターの乳化が重要だ。混ぜ方次第で食感が変わる」と解説を始め、ひかりが「もう理屈はいいです!」と笑った。


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生地を冷蔵庫で休ませ、オーブンを温める。晴は落ち着いた手つきで生地を伸ばし、型で抜いて並べた。


「焼き時間は10分。焦げないように注意だ」晴が言う。


オーブンの中でクッキーが少しずつ色づいていく。甘い香りが広がり、冬の夜にぴったりの温かさを添えた。


「いい匂い……」ひかりが思わず呟く。

「これ、絶対映える!」美咲がスマホを構える。

「栄養的には糖分が多いが、適度なら問題ない」崇が真面目に評価する。


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焼き上がったクッキーは、表面がこんがりと色づき、形も可愛らしい。晴は一枚を手に取り、少し懐かしそうに見つめた。


「昔、妹と一緒に作ったんだ。冬休みの夜に、母が笑いながら見守ってくれて……」

その言葉に、3人は静かに耳を傾けた。


「料理もいいけど、お菓子には思い出が詰まってる。だから、みんなで食べてほしい」晴は微笑んだ。


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テーブルに並べられたクッキーを前に、4人は湯気の立つ紅茶を添えた。


「いただきます!」声が重なる。


ひかりが一口食べると、サクッとした食感と優しい甘さが広がった。

「美味しい……!なんだか懐かしい味です」


美咲は星型のクッキーをかじり「映えも最高!」と笑う。

崇は真面目に「食感が均一で、乳化が成功している」と評価した。


晴は静かに紅茶を飲みながら、心の奥で思った。――料理はただの食事じゃない。家族や仲間と過ごす時間をつなぐものだ。お菓子は、その象徴なのだ。


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食卓は笑い声で満ちていた。外の風は冷たいが、シェアハウスの中は温かい。ひかりは「こういう冬の夜もいいですね」と呟き、美咲は「次はケーキに挑戦しよう!」と笑った。崇は「科学的にも挑戦は成長につながる」と真面目に言い、みんなが吹き出した。


晴はその光景を見ながら、静かに頷いた。――この家で過ごす冬は、きっと忘れられないものになる。


窓の外には冬の星空が広がっていた。冷たい空気の中で、クッキーの甘さと笑い声が、シェアハウスを温かく包んでいた。

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