古代遺跡だけど近未来
「えー、3人のメンバーが揃ったということで次なる目的地として古代遺跡に行きます」
勇者の次なる目的地は古代遺跡。
最古の時代からあるという話だが未だ踏破されておらず、謎の多い場所だ。
「勇者様、その心は?」
そんな場所に向かうのだからマネも思わず質問してしまう。
「うーん……修行かなぁ?」
「修行!」
修行。その一言にリウが反応した。
勇者は今日も1歩後ろにいる仲間に手を差し伸べる。
「フィリ、行こう」
勇者は仲間となった奴隷の少女に、「フィリ」と名付けていた。魔法使いとしての才能があったようで、その手には買ったばかりの杖がしっかりと握られている。
そんな新しい仲間フィリを含めた4人のパーティで遺跡へと向かう。
「ついた!ロボロボ遺跡だ!」
ロボロボ遺跡。その見た目はよくある土で出来たものだ。
入口となる大きく口の開いた場所へ勇者が足を踏み入れた時―――なにやら大きな音が奥から近づいてきた。
「ウォォァォォォォオォ!誰か助けてくれぇぇぇぇ」
『シンニュウシャハイジョ』
影は次第に大きくなりその姿を明確にする。髭面の男が勇者の方目掛けて悲鳴をあげながら全力で走ってきたのだ。そして男の後ろには数十体の人型の魔物(?)がおり追いかけてきているよう。
「凄いですよお師匠!沢山の敵がいます」
魔物の登場にリウが前へ出る。
「よし、今こそ修行の成果を見せる時。いけリウ!」
勇者の言葉でリウは両手を構え、そして体内に眠る氣を魔物へ放射した。
▶リウの波動砲
魔物達は吹き飛んで行った
「……なんというか色々凄いわね」
リウの新技波動砲の威力を見てマネが息を漏らした。そうしていると髭面の男が興奮した様子でこちらへ話しかけてくる。
「おぉぉ、おい、お前ら凄いな!今のブワァーって奴なんだよ!」
「お師匠から教わった波動砲です。凄いでしょう」
リウは自慢げに語った。
「貴方は?さっきの一体何があったのかしら」
「あぁ、俺はトレジャーハンターのビルだ!さっきはトラップ起動させちまったみたいでよォ変なやつらが大量に現れてな……。そんで逃げてたら今に至るって訳だ。助けてくれてありがとな!」
「大量の魔物!?……まだまだ修行相手が沢山いそうですね」
「ところでビル、俺たちもこれから遺跡を捜索するんだけど良かったらついてきてくれないか?」
「ん、おお!お前らみたいな強い奴と同行できるってんなら喜んでだ!」
勇者は修行以外にもしっかりとした目的があってこの遺跡へと訪れていた。互いの利害も一致したことで、ビルと共に捜索が始まる。
▶ビルが一時的に仲間になった
「―――つ、ついに秘宝を見つけたぞ!」
「うんうん、ここにたどり着くまで長かった」
「長かったわね」
「長かったです!」
多くの魔物、多くのトラップを潜り抜けた先にはビルの……そして勇者の探し求めていた秘宝があった。
秘宝の正体は1つの瓶の中に入った紫色の液体だったようだ。
そしてビルが秘宝に手を伸ばした時―――
(シュッ!)
「ふっ、人間にこの秘宝は渡さないぞ」
あまりにも早い速度で何者かによって秘宝が取られてしまった。
「だ、誰だおめぇ!」
「よく聞いた、俺ちゃんこそが四天王の1人、瞬速のボブだ」
なんと遺跡に3人目の四天王となる瞬足のボブが現れたのだ。
▶瞬速のボブが現れた
長い足と短い耳。肌の色はオークのような緑色をしている。服はやはり着ていない。
「……勇者様の出番よ」
「お師匠!一緒に倒しましょう!」
「よーし倒すぞー」
「お、俺も戦うぜ!」
それぞれが戦闘の意気込みをしたところで最初にリウが仕掛けた。
▶リウの
しかしボブには当たらない
細かな波動砲が同時にいくつも放たれたがボブからすればその速度は見て避けれるほど。
ボブには余裕があるようだ。
▶ボブの反復横跳び
ボブの俊敏性が上がった
ただでさえ攻撃が当たらない状況なのに更にボブは加速する。
▶ボブの高速パンチ
ビルが殴られた
「い、いてぇ……」
大きく吹き飛ばされたビル。赤く腫れ上がった頬をさする。
「攻撃が当たりません……これじゃあ勝てない」
「この瞬速のボブに勝てると思っていたのかァ!?」
「……!」
▶フィリのブリザード
氷風がボブの周囲を覆う
フィリの攻撃がボブの一瞬の油断をついた。
喋らないフィリの存在に気を置いていなかった事もあり、範囲攻撃をボブが避ける事が出来なかった。
そこをすかさずマネが捕らえる。
▶マネの見えざる手
瞬足のボブは拘束された
「あ、動けな―――」
動けなくなったボブにもはや勝ち目は無い。
▶勇者のパンチ
ボブは消滅した
「やった!」
「あのバケモンを一撃で……また小さいのにおめぇほんとやるなぁ」
四天王を一撃で倒したのだ。そのことにビルもあんぐりと口を開けて驚いている。
「流石ね」
「お師匠ですからね」
しかし勇者の強さに慣れてしまった2人はそれが当然と言った感じである。
「……」
なにやらフィリが勇者を見つめているようだ。
何かを言いたげにしている。
「フィリ、魔法のサポート助かったよ。ありがとう」
「……」
勇者の言葉にフィリはどこか満足そうな顔になった。
「それで、この秘宝について……ビル」
勇者はビルに視線を向ける。
「ん、あぁ!もしかしてほしいのか?その秘宝は……欲しいならお前らにやるよ」
「いいの?」
勇者が提案をする前にその内容を察したらしいビル。勇者も珍しく目を丸くなりかけている。
「おう!その代わりにお前らについて行きてぇんだ!」
「ビル……悪いけどそれは無理だ」
勇者は否定した。
「それは、なんでだ?」
「俺は……女の子だけで旅がしたいんだ」
「……ぷっ、なんだそれ!んーまぁ、男だもんな!そう言うんなら仕方ねぇ」
勇者からの予想外の答えにビルは腹を抱えて笑いながら答えた。
「短い間だったけど楽しかった!もしまた遺跡で会ったらそん時はよろしくな」
▶ビルがパーティから外れた
切り替えの早い男ビル。旅を続けるのなら彼とはきっとまた会うことになるだろう。
秘宝を得た勇者、その旅は希望が続いている。
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