第12話 ピンクの母性



――――その日の朝は荒れていた。


「こら、ホムラ。これは洗濯します」

「いやだぁっ!トキヤぁっ」

朝からトキヤさんのカーディガンを抱き締めながら絶叫するホムラさん。

「もう随分ベッドに置いてるでしょう?洗濯します」

「でもトキヤ摂取がっ」

オメガバースを教えてから巣作りに目覚めたホムラさん。しかしながら恒例のお洗濯イベントも楽しめるとは。ホムラさんが若干かわいそうなのだが。


「そうだねぇ……。それじゃぁぼくが大事にしてる猫ちゃんぬいぐるみ、あげるから」

「うん。トキヤって名前付ける」

「その子はめんたいこです」

「めんたいこ……くんくん、ぎゅー……トキヤ」

取り敢えずばぶちゃんが上着を手放し猫ちゃんを抱っこして落ち着いたのでトキヤさんが洗濯に向かう。


「お、おはようございますー」

やけにかわいらしい朝を見てしまった。

「ああ、おはようキキ」

猫ちゃん……めんたいこを抱っこしながらホムラさんはいつもの調子だ。


「その……猫ちゃんもらったんですね」

「ああ。トキヤだと思っていつどこに行く時も一緒だ」

それはそのかわいいけど……外出する時や出動の時はちょっと……。


「外に連れ出しすぎるとお洗濯の頻度もあがるんじゃぁ……」

「ぬいぐるみも洗濯に出されるのか!?」

「ええ……まぁ」

「おうちでかわいがる」

良かった。でもちょっと残念。


「そう言えばホムラさんとトキヤさんの出会いってどんな感じだったんですか?」

ここまでの素晴らしきCPはいかにして?二次担当としては気になるところでもある。


「そうだな……トキヤとの出会いは公園だった」

公園……?


「オル黄の先輩たちのサポートをしながらひとりルミナスに徹する寂しさに爆発してしまって家から飛び出していつの間にか公園にいた」

ひとりルミナス……言い方っ!切なすぎる!


「半狂乱になりながら絶叫していたら」

通報される案件では!?


「俺のことを優しく慰めてくれるひとがいたんだ。そのひとは……ピンクの戦隊スーツを着ていた」

「まさか……っ」

「そう、それがトキヤだ」

まさに受けちゃんに拾われる、そこら辺によく落ちている攻めさま!私の解釈は……間違ってなかった!


「俺は迷わずトキヤにプロポーズした」

戦隊のメンバー勧誘の業界用語なんだろうか。そんなの習ったことないけど。しかしホムラさんからトキヤさんへのプロポーズ発言に私、発酵しそう。


「俺のピンクになってくれないか……ってな」

カ~~~~ッ!!!

熱い……超熱い!


「でも当時トキヤは別の戦隊に所属していた」

「そんな……っ」

それを無理矢理引き抜けば戦隊のタブーとなってしまう。


「だけどトキヤも俺をひとりにはできないと言ってくれてな」

うん、それはできない。私でもできない。


「当時トキヤが所属していた戦隊ハートピンクの元に出向いて頭を下げた」

戦隊ハートピンク!?それまさかとは思うけどオールピンク戦隊ですか!?


「そうしたら……みんな俺がトキヤを必要そうな顔をしてるって認めてくれて、トキヤは穏便に隊移籍をしたんだ」

「そうだったんですね」

「だから俺はハートピンク先輩たちには頭が上がらないよ」

穏便移籍を認めてくれたハートピンク先輩に感謝ね。ええと……戦隊ハートピンクで検索っと。おう……全員ままんピンク戦隊!そりゃぁばぶちゃんのために認めてくれるわ。


「懐かしい話をしているね」

「ああ。お前との出会いの話だ」

「ふふっ。今も昔もホムラはかわいいばぶちゃんだね」

「ばぶ」

ホムラさんはそう、笑顔で頷いた。

バブみ全開!レッド×ピンク第4巻はこれで行こう。うん。


――――そして和んでいた時。


「出動要請!」

「ああ、早速戦隊ルミナス出動だ!」

早速戦隊スーツに早着替え。


ヨウさんたちとも合流し、現場にGO!


「今日も元気に発光すんぞ!戦隊ルミナス!」

『おー!』

出動車からの発光装置に花びらが舞う。


さて今日の敵は……何かいつもと違う?

黒タイツたちが一列に整列し、その中心に立つマントの仮面。


「誰だお前は!」

「フハッハッハッハッ」

言葉が通じる!?


しかし怪人が何か端末のようなものをこちらに向けてくる。

『ワタシハ、チキュウシンリャク、キマシタ。ウチュウジン、クロマント、カンブデース』

ゴリゴリのAI翻訳機能!いや確かにそれ便利だけど!


するとソウキさんも端末に何かを語り掛けている。

「盛り上がらないのでもう少しAI翻訳の制度上げてもらえます?」

無茶振りぃっ!でもこれ、バックアップからのカンペ通りである。

そしてソウキさんの端末から放たれる謎の言語。


『チキュウノ、エーアイ、ペラペラスギテイワカンアリマセーン』

黒マントの端末からそう発せられる。


『ヤッパリ、チキュウノエーアイ、ホシイデース。シンリャクデース!』

ふっざけんな提携とかあんだろーがっ!


「そんなことは許さない!」

「そうだね、ホムラ!」

「みんな、行くぞ!」

『おーっ!』

避けられぬAIを巡る争い。私たち人間とAIは時に反発を生み、なのに色んなところで頼りまくり。しかし私たちは、戦隊は……AIも守る正義のヒーローなのよ!


「ルミナスフレイム!」

「ウォータートルネード!」

「ライトニングナックル!」

「バフ乗せんぞー!」

「体力回復はお任せを~~」

そして私たちは黒タイツたちを一掃し、最後にホムラさんの一撃が叩き込まれる。


「ダイナミックルミナスフレイム!」


「ギャーッ!!!」

黒マントがぶっ飛ばされ黒タイツたちが撤収していく。


「よし、今日も俺たちの勝利だ!」

『おおおおぉーっ!』

さて討伐が終了すれば自らお立ち台に向かう。今のうちにホムラさんの避難である。


「ルミナスイエローちゃん!頼むよ!」

「待ってました!」

マスコミたちが集まってくる。ルミサポとスミレちゃんも駆け付け準備万端だ。


「では今日のお歌は『こんにゃく』」

郷土名産品!シンプルなタイトルだけどそこがいい!


こうして今日もお立ち台を終えてシェアハウスに戻れば……猫ちゃんを抱っこしてすやすやとソファーで眠るホムラさんをトキヤさんがよしよししていた。どうしてか最近は安定してきているような気がするかも。


「何か温かいものでもいれますね」

「俺も手伝うよ」

「ありがとうございます、ソウキさん」

そしていつもの温かなシェアハウスの風景だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る