第11話 オル黄特集



――――さて、今日のお仕事は先輩のお仕事見学とサポートである。ヘルメットを被っているので今日はツインテールは見納め、いつもとは異なるイエローの作業着姿である。


「オーラーイ、オラーイ!」

ピーッとホイッスルを吹く。


「バッチリでーす」

腕でマルを描けば重機のドアが開き降りて来たのはキハダ先輩である。


「おうっ!サンキューな!」

さすがに重機に乗る時はマスクではないらしくヘルメットを被って揃いのイエローの作業着を纏っている。

「はい、キハダ先輩!でもこれ……除雪車?」

「そう!よく覚えてたな!俺愛用の除雪車!」

愛用って。そう言うのって自治体が持ってるものかと。いや、雪国の除雪業者も持ってるだろうか。小型の家庭用ならともかく、何で明らかに重機の方を愛用してんだこのひとは。


「道民だからな!当然だ!」

「当然ではないと思いますけど……」

「俺も持ってるぞ!俺の愛用きりたんぽ号!」

じゃーんと自分の除雪車を見せてきたのはマイルドイエローのアサキ先輩。確か東北出身……って除雪車に名前付けてるぅー。


「それぞれ各々の自慢の愛車持ってきたからなぁ」

愛車ってか重機ですけど。だからうちの事務所、どっかの土建みたいな駐車場持ってるほどですけど。作業着にも『オル黄組』とか書かれてますし。


「さぁて公開収録、楽しみだな!」

「え……ええ」

まさにこの重機たちを見せるための屋外収録。さらには重機たちを乗せてきた出動車は私たちの出動車の2倍ある。けど戦隊によってはメカも積むから重機くらいなら余裕なんだけど。


「懐かしいなぁ。俺も事務所入った頃はこう言うのやったからさ」

「ホムラさん!」

今回は私とホムラさんでオル黄のお手伝いに来たのだ。因みに赤がトレードマークのホムラさんもヘルメットにイエローのオル黄組作業着。


「サポだと危ないからって」

「はい。私の時もです」

今では事務所の重機講習とやらを学びプロの土建に講習に……って私、戦隊に入ったのに何で重機の研修受けてるんだろう。まぁ今に活かされてるわけだけど。


「ルミナスイエローちゃん、ヘルメット姿頼むよ」

「はーい!」

こうしてたまに取材を受けつつ準備は進む。


いざ、公開収録が始まれば観客も集まって重機に大盛り上がりだ。まあ危ないのでしっかり規制線は張られているが。


「はい!では今回は戦隊オールイエローことオル黄のみなさんに来ていただきました!」

「俺たちゃオル黄!」

『重機でドーンッ!!』

相変わらずうるっせぇが周囲は大盛り上がり。いつもは能力で披露する爆破演出はさすがに今日はステージモニターの映像である。


てか、このひとら何で登場時に毎回爆破演出するんだろう。昨今の戦隊の爆破演出はこのひとらが発祥と聞いたことがある。さらには何故か演出中は未知生命体たちも空気を読むと言う。


「オル黄のみなさんは全員出動車の運転が出来るそうですね」

「もちろんです!でっけー車両運転出来た方がかっけーじゃないですか!」

そう言う基準!?ルミナスもヨウさんが運転を担当しているが元々裏方業務の期間に免許取っただけって言ってたし。

こやつらは自ら進んで……?


「もしかして全員重機免許保持者と言うのも……」

「ええ。かっけーからです」

『オウイエエエェイッ』

全員重機大型車両大好きかよ。ほんと賑やかなんだから。


「最近では重機を操る戦隊も増えているらしいですね」

「ええ。地方だと出動と撤収両方兼ねる戦隊も増えているようです」

「私たちが調べた限りでも九州や四国、中部など各地にいるようですね」

モニターに映し出される重機とポージングをキメる戦隊たち。あ……オル黄だけじゃなかったんだ。


「中にはキハダさんやアサキさんのように除雪車免許持ちの隊もいるそうですね」

「ええ!俺の故郷では戦隊ビビットとか戦隊オールカラーとか」

モニターに映し出されるビビットカラー戦隊。


「へぇ……てっきりオールホワイト戦隊とかいると思ってました」

「ああそれな。オールホワイトにすると雪と同化して逆に危ないんだと」

「あ、そう言うことですか」


「そう言えばこの前の冬は信州に出張に行きましたよ。豪雪で人手が足りないとかで」

「ええ。ケーブル局から映像をお借りしましたよ!これが当時の取材映像です」

おお……っ!モニターの向こうには信州に出張する真っ黄色の出動車とオル黄軍団。

「もちろん爆破は雪崩などが心配なのでルミナスの発光機を借りました!」

ああ、うちの出動車に取り付けてるあれね。

うちは爆破はいいと言うスタンスなのだが先輩たちがスパイスが足りないと言うので最近は私の電撃やスミレちゃんのそよ風で花びらを舞わせたりしている。


そして映像ではキハダ先輩とアサキ先輩が現地の戦隊スキーヤーズと除雪車を操っている……!


他のメンバーは雪掻きを手伝っていたようだ。そして地元民との交流では……あれ、オル黄の人数増えてない?


『コラー!俺たちのイエロー吸収すんじゃねぇっ!』

いつの間にか他のイエロー吸収してた……!?


「他にも色んな映像を用意してますよ」

次は……他の隊の出撃後の後片付けに登場する映像。どうやらヒーローインタビューのようだが……その途中に真っ黄色の出動車が到着し、案の定いつものように。


『俺たちゃオル黄!』

『『『重機でドーンッ!!!』』』

ひいいぃっ!?ヒーローインタビューの途中なんだけど!?


『後片付けは俺たちオル黄組にまっかせなぁっ!』

『それはいいけど討伐した俺らよりも目立つんじゃねぇーっ!』

いや普通に怒られてるし!


「まあ誰かの同期だったとかで何とかはなったみたい」

「そ……それは何よりです」


そうして終始爆笑に包まれながらの公開収録。最後は急遽私たちもお呼ばれし珍しいヘルメット&作業着姿をお披露目したのだった。


「ルミナスレッドさんのオル黄の作業着姿は新鮮ですね」

とリポーターさんの言葉にホムラさんが苦笑する。


「昔はよくこれを来て手伝いに来てましたよ」

「そうそう!オル黄組としてなー!」

キハダ先輩がホムラさんの肩にがしっと肩をかけ、観客のみんなに手を振りながら終了する公開収録イベント。


最後の締めはもちろん……。


「俺たちゃオル黄!」

『重機でドーンッ!!!』

本当に賑やかで楽しく頼りがいのある先輩たちである。


最後は重機を積んで出動車で帰還となったのだが。


「すーはーっ」

ホムラさんはトキヤさんの上着をすーはーしていた。この間オメガバースと言うものを教えてあげたらベッドにトキヤさんグッズを集め始めたのだ。もう項噛まれて番になってくれないかと思う今日この頃だ。


「何だ、最近は落ち着いたみたいだなぁ」

操縦はダークイエローのヨイツキ先輩がこなしてくれているのでキハダ先輩が様子を見に来たようだ。


「お陰さまで」

トキヤさんグッズや本人をすーはーすることで精神の安定をはかっている。

そしてもうすぐ帰還と言うところで指令が入る。


「オル黄とルミナス両方同時にに出動要請だ!お前たちは現地で他のルミナス隊員と合流してくれ!」

「了解!」

ホムラさんの表情がルミナスレッドの表情に切り替わり私も即座に戦隊スーツに早着替え。今日はツインテールじゃないがそこは仕方がない。



現場に着けば早速……。


「俺たちゃオル黄!」

『重機でドーンッ!!!』

爆破演出もりもりな先輩たちの隣で私たちも……。


「今日も元気に発光すんぞ!戦隊ルミナス!」

『おーっ!』

今日は発光プラス私の電撃ビリビリ!


気合い十分、先輩たちの胸を借りつつも黒タイツ集団や怪物をぶっ飛ばす……!


「おっしゃぁっ!いっけぇオル黄!後輩たちぃっ!オル黄ブラストー!」

「ルミナスフレイム!!」


そうして戦闘が終われば即座にホムラさんを避難させ、私がオル黄の先輩たちの音頭に合わせながら勝利の舞を踊ることになった。


「イエス!ヴィクトリー!」

「俺も負けてられないな!イエス!ホワイトアウトーっ!」

あの……ちょ……やっぱりオル黄、超意味不~~っ!しかしそれが良いところでもあったりで。


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