3rd day『Eな日に祝福を/Aたちの長い一日』
3-1
分厚い防弾ガラスにも日の光は差し込む。
カーテンの隙間から差し込む朝の陽ざしに、銀磁はベッドの上でわずかに身じろぎをした。
寝起きは悪い方ではない。
だが、目覚ましが鳴るまでは多少ゆっくりしてもいいというのが、銀磁のルールだった。
だから銀磁はいつものように寝返りを打って、温かく柔らかな布団の感触をもう少し味わっていようと思ったのだが――身じろぎしようとして、腹の上に何かが乗っていることに気付いた。
「……んっ!? なんだ!?」
違和感に銀磁の目は一気に覚める。
そして、自分の布団の上に視線をやると、そこには。
「おはよう、ギンジ」
なぜか、下着に、寝間着代わりのぶかぶかのシャツだけを着たアニマが銀磁のお腹の上に乗っかっていた。
「……なにやってんだアニマ?」
目を丸くして――というよりは、なんかうさんくさいものを見るような目で銀磁はアニマの事を見た。
アニマが自分を起こす行動としてはなにかひっかかる。
しかしそんな銀磁の視線を気にもせず、アニマは真面目な表情で言う。
「起こしに来た」
「まぁ、それはわかる。なんで腹の上に乗ってるのか聞いたんだけど?」
「こうすると喜ぶって、アニムスが」
「あのポンコツめ……!」
一体何考えてるんだ! と叫びたい気分だったが、そそのかされたアニマに罪はない。
とりあえず降りるように言おうとした銀磁だったが、それより先にアニマが次の行動に移る。
「たしか……こうするって」
アニマはなぜか布団を引きはがすと、腰の上に乗りなおした。
それから、朝の生理現象で盛り上がっている下半身に、お尻を擦り付ける。
「んしょ……んしょ……っ」
「……あの、アニマさん? なにやってるの?」
「こうすると嬉しいってアニムスが……」
「アーニームース――――ッ!」
銀磁はついにキレた。一度目は抑えたが二度目はない。無垢な少女に卑猥な知識を植え付けた罪は重い。
そして銀磁の叫びに応じるように、部屋の扉を開けてアニムスがひょこりと顔を出す。わざとらしいジト目を銀磁に向けながら。
「おやおやご主人様、朝からお楽しみのようで何よりでありますです。けど未成年に手を出すと法律に引っかかると思いますですよ?」
「自分でけしかけておいてなに言ってんだこのポンコツが! あとカメラ回してるんじゃねぇよ!」
「あとで開発者様に送っておこうかと」
「ホントやめて!?」
所長にアニマと戯れている動画なんて見られようものなら何を言われるかわかったものではない。
本気で拒否しながらアニマを抱きかかえ、床に下ろしていると、アニムスはカメラを【開錠】で開いた空間に投げ入れながら部屋に入ってくる。
なにやら難しい顔をしながら。
「ふーむ、ご主人様はロリコンなのでは? という疑いを強く持っていたのでありますですが、違うのでありますですか?」
「違う。オレは断じてロリコンではない。ていうか見ろ! さっきまで元気だった下半身がアニマがおかしなことして来た罪悪感で萎えるどころの話じゃないからな!」
さっきまで朝の生理現象で元気だったはずの銀磁の下半身は、今やすっかり力を失って平常状態だった。
それを見て、アニムスは申し訳なさそうな顔をした。
「それはなんというか、申し訳ないでありますです、ご主人様。そうでありますですよね、ワタシのおっぱいをよくチラ見しているご主人様のこと、ロリでも巨乳じゃないとダメでありますですか」
「そういう偏見止めてくれるっ? 本当に。たとえアニマが巨乳だったとしても結果は同じだからな? まだアニムスの方が『クる』わ」
「ほほう?」
銀磁がぽろりと漏らした本音に、アニムスがきらりと目を輝かせる。
そして、銀磁が体を起こして座っているベッドの方に近づいてくると、勢いよく銀磁を突き飛ばして寝ころばせた。
「では一つ試してみるでありますですね?」
「な、なにする気だこのポンコツ……!」
「ふふ、これでもメイドでありますですから? たまにはちゃんとしたご奉仕でもしてあげないといけないと思うわけでありますですよ」
「邪悪な笑みで言うセリフじゃないな……!」
「まぁまぁ、悪いことではないでありますですよ……っと」
アニムスはそう言って服を脱ぐ。
下着も外すと、人間となんら変わりないおっぱいが現れて、銀磁の目の前で揺れた。
それを両手で持ち上げると、アニムスは銀磁に近寄り――そのおっぱいを、下半身にどん! と乗せてくる!
「な……なにぃ――っ!?」
銀磁は下半身に感じた重みに、思わず声を上げた。
重い。童貞の銀磁だが、それが明らかに通常サイズからはかけ離れたものであるのはわかった。
その圧倒的質量の前には驚きと感動しかない。
「どうでありますですか? ご主人様。これが好きなんでありますですよね?」
うりうり、とアニムスは悪戯っぽい表情で下腹部に大きなおっぱいを擦り付けてくる。
驚きと感動が徐々に通りすぎていくと、その柔らかさと重みに銀磁は他の感情を抱きはじめる。
主に下半身を元気にしてしまう系の。
しかし悲しいかな、男の性かここまで来ると止めろとは言えない。
だが――そんな銀磁の事を、アニマが不満そうな顔で見つめていることに気付いた。
「……ギンジ、気持ちよさそう」
「うっ……!? ち、ちが、アニマこれは……!」
「わたしも、する」
アニマは何を考えたのか、銀磁の上半身に体を乗せてきた。わりと無造作に。
子供に戯れられている気分――というか全くその通りの状況だったが、下半身にはアニムスの超重量が未だに感じられている。
萎えればいいのか奮えばいいのか。
混乱を極める中、銀磁の頭は徐々に奮う方に傾いていく。
「おやご主人様、なんだか元気になってきたようでありますですよ?」
「ギンジ、元気になるの?」
アニムスは小悪魔的な笑みで、アニマは無邪気に、それぞれ声をかけてくる。
普段なら邪念なんて感じようもないだろうアニマの声にも、状況のせいか銀磁は無用な興奮を抱いてしまう。
そしてついに下半身がすっかり元気になろうとした――その瞬間だった。
『トラップオン、403号室ニ侵入アリ。排除完了』
ポーン、という軽快なお知らせ音と共に、室内にアナウンスが入った。
それを聞いて、アニムスと銀磁は表情を引き締めると、ベッドから体を起こす。アニマのことはそっと避け、ついでにアニムスも服を着た。
「襲撃でありますですね、ご主人様」
「寝ている間に来なくてよかったな。睡眠不足は生死に関わる」
「上階から制圧しようとしたのだと思いますですが、下策でありましたですね。窓から侵入してきた方がまだ勝率があったでありますです」
「簡単に破れるような窓じゃないけどな。ダイヤとほぼ同じ硬度なんだろ? あの窓。壁にへばりつきながら破るにはちょっときついと思うぜ」
冷静に言いあう銀磁とアニムス。そんな二人を見て、アニマが心細い様子で銀磁にしがみついてくる。
「誰か、来たの?」
「ああ。けど、もう帰ったってさ」
「お家ではなくて天に帰ったって感じでありますですが。……さて、どうするでありますですか? ご主人様」
しがみついてきているアニマの頭を撫でながら、銀磁は思案する。
移動しなければならないのはもちろんのことだが、その前にやるべきこともある。
アニマも少し脅えているようだから、調子を戻してやらなければいけないだろうし。
となればやることはもちろん決まっている。
「――まずはメシだな。アニムス、準備頼む。アニマの元気が出るメニューで」
「もちろんでありますです、ご主人様」
さっきまでの悪戯っぽい表情はどこへやら。
メイドロボらしく優雅に一礼をするアニムスは、やはり頼りになる相棒でもあった。
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