第11話 いつもの手口
「その後暴れん坊将軍から何かありましたか?」
「うーん、音沙汰なしです…三田さん」
暴れん坊将軍ことツヨシさんとはその後連絡が途絶えた。
あの日、メモがあって「申し訳ありませんが、急ぎの用件が発生しました。タイから帰ってきたらまた連絡します」
とあり、その後1ヶ月近く経っていた。
そう、ツヨシさんはタイに行くって言っていた。
うーん、これは世間で言う所のヤリ捨てってやつだろうか?避妊もしてなかったし。
しかしあの見た目なら周りにもっと綺麗な人も沢山いるだろうに、わざわざ私を選ばなくても…物好きだなあと思っていた。
しかもこんな私の餌付けに時間も金も結構かけていた。
やっぱり変わった人なんだなあと思った。
「江藤さんは、その徳田新之助の事はどう思ってるんですか?」
「うーん、よく分からないんですよねえ。嫌いでは無かったですが…今までまともに恋愛をしてなかったので、イマイチ自分の気持ちが分からないってのが正直な感想です。」
「成る程…なら、大まかな目安で…この人にまた会いたいとか、一緒に居たいって思ったら好きってなるんじゃないでしょうか?」
「それは友達にも同じ事言えません?私三田さんにもそう思いますよ?」
「それは嬉しいですね。だったら接吻したいって思ったら好きなんではないでしょうか?」
「うーん…」
あの時ツヨシさんは私にキスして来た。
しかし本当に好きな相手でなくてもやる人は沢山いそうだし…そう言う商売してる人とか…
ツヨシさんってホストとかなんかな?
なんかあの見た目ならあながちあり得る。
でも私みたいな貧乏人から金も得る物も無さそうだしなあ。
そもそも不思議くんだしなあ。
結果、よく分からないと結論に至った。
そんなやり取りを三田さんとした数日後、渦中の暴れん坊将軍ことツヨシさんから連絡が来た。
「鞠保さんのお店がオープンしました。一緒に食べに行きませんか?」
うーん、あのパニックキャンプからの最初の連絡がこの内容…
本当に分からん…
私がおかしいのか?
いや、これはやっぱりツヨシさんが色々謎だろう。
やはり謎の究明が気になり、多少気まずさもあったが好奇心に負けて了承した。
「いやー!あの時は本当に挨拶もなくすみません。急に出発を早められて泣く泣く夜中に帰りました。」
普通だ。
恐ろしく普通だ。
「そうですか…」
「とりあえず、何か頼みましょう!何でも好きな物注文して下さい!」
まあ、多少は腹も立っていたので片っ端から高そうな物を注文した。
とは言えちゃんと食べられるギリギリの量だ。残すのは私の信条に反する。
しかも鞠保さんが言っていた様にかなり良心的な値段だ…今日ばかりは悔しいが仕方ない。
最初はムスッとしながら食べていたがやはりめちゃくちゃ美味しいのでしまいにはご機嫌になっていた。
相変わらず単純だ私は。
その様子をツヨシさんはいつもの様にニコニコしながら見ていた。
「ランゼはいつも美味しそうに嬉しそうに、食べ方も綺麗で丁寧、その上沢山たべるよね。そう言う所が好き。」
?
大食い女子が好きなのかな?この人は
「見た目の綺麗な人は沢山いるけどね、相手に良く見られようとしながら気取って食べたり、大して好きでもない高いものを頼んで食べ飽きてますって感じにこれ見よがしに平気で残したりする人は嫌い。」
ほー。
「ランゼはちゃんと自分のやりたい事があって、それが自分の私利私欲の為じゃなくて、誰かの幸せの為な事な所が好き」
へー。
「自分の幸せの為に他人を貶めたり、自分の価値を上げる為に近付いてくる様な人は嫌い。」
ふーむ。
「あのキッチンカーでたまたまあの日に出会ったのはやっぱりランゼが言ってた運命ってやつだったんだね。」
?
「知らない事や知識を勉強して体験して身につけて行く事が好きって考えに共感して貰える人に出会えたから。」
そうなの?皆そうだと思ってたけど…
ツヨシさんの周りには居なかったのかな?
「お願いしたらブウって言ってくれる所も凄く可愛い!」
やっぱりコイツ相変わらず私の事ペットかなんかだと思ってやがるな…
「だから僕と恋人としてお付き合いして下さい。」
「…」
「今日の料理美味しかったよね!」
「…ハイ…」
「わあい!可愛い!ありがとう!嬉しい!」
コイツ…
いつもの手口でやられてしまった…
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