アメリカが消えたので地球が修羅場です
@tanakalucky777
第1話 クズ総理
「――――――――であるからして!この台湾問題は重要な国際問題でありっ話すだけで恐喝してくる某国に対して!我々は相応の報いを受けてもらい――――――――」
俺の声は国会マイクがビリビリ震えるほどにデカい。議長は顔を真っ青にしてベルを鳴らす。国際政治に明るい、または極右以外の議員は今頃頭を抱えているだろう。「誰か総理を黙らせろ!!!!!」「議長ォォ止めろォォ!!」「総理の首だけじゃすまない問題になるぞ!!」とヤジが飛ぶが気にしない。
(どうせ、地獄に落ちるんなら全員で落ちようぜぇ!!)
多分だが俺は悟りを開いた悪党みたいな笑顔になっている。顔だけは、奇跡的にイケメンだから余計にタチが悪い。
こんなことをしている理由を理解した秘書官たちの呻き声がする。
俺は演台に拳を置き、わざとらしく肩をすくめた。
「俺の後ろ盾だった長老議員が死んでな!!俺を守る派閥が跡形もねぇんだよ!!アホみたいに敵を作りまくった俺は、このままじゃ政治界から追い出されるに決まってんだよ!!」
国会ざわめきMAX。でも俺は止まらない。むしろ止まったら死ぬみたいな顔で続ける。
「マスコミ! 国民! ざまぁ見やがれぇ!!!」「散々俺をコケにしやがって!!」「誰が雰囲気が空気の世襲総理だ!!」「誰が顔だけイケメンだ!!!」
「自分で言っちゃったよ!!!」「お願いだから黙れ!!!」「議事進行ッ……無理ィ!!」
俺は演台をバンッと叩き、目をギラつかせた。
「お前らは言うんだろ?政治経験ゼロのボンボンってよ!!なら今からその国民様に選ばれたボンボンが地獄の蓋を開ける瞬間、しっかり見とけやぁ!!!」
議場の空気はもう爆発数秒前の風船。ヤジ、怒号、議長のベル、誰かの悲鳴、全部が一色のノイズになって押し寄せてくる。
――その時だった。
空気の振動が、唐突に変わった。議場を満たしていた怒号が、一瞬だけ吸い込まれる。説明できない圧が天井から降りてきて、耳鳴りのような重低音に変わり──ゆっくりと、声になった。
『あのお、突然だがけどいいかの?』
議場が凍りついた。テロが起きたわけでもないのに、一気に議会が静まった。
与党議員が肩を押さえ、「……なんだ……寒気……?」と呟き、野党の一人は顔色を失って周囲を見回す。秘書官は書類を落としたまま硬直し――あっ、今、大の大人が普通に粗相したな。
うん、気持ちはわかる。
『これからわしから大事な話をするのじゃ! 静かに聞いておくんじゃぞ!』
ハァ?なんで今なんだよ。
よりによって最高にノッてきたところを、こんな狐と人間を混ぜたような妙な声質の存在にぶった切られるなんて、あんまりすぎる。
(おいおい……俺の人生の最後の見せ場に、なんでこんなふざけた奴が割り込んでくるんだよ!)
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